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新入生実力テスト

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「これから新入生の実力を試すために試合をします」
 部活が始まった。顧問は英語担当の村上先生。先生は奏歩のボール落書き事件には触れず淡々と指導を開始した。
「知っての通りバスケは私は素人です。が、市民マラソンで顔は広い。男子バスケの伊東先生の援助もうけています。バスケには走り抜く体力、ボールコントロール、シューティングのセンス、フォーメーションで頭を使うことが要求される高度なスポーツ。これからはあなたたちをびしばししごくから覚悟して」
 軽いウォーミングアップのあとストレッチをしてゼッケンを着ると5分のミニゲームが始まった。三年対一二年生。一華、ナノ、有佐、唯に混ざって村上先生と対戦する。こちらのチームは凛、奏歩、信子、雄一、麻帆だった。スタートのホイッスルが鳴る。最初にボールを奪ったのは一華で、すぐにナノにパスが回りナノは華麗なドリブルで雄一を抜いてレイアップシュートを決めた。まだ15秒。
 雄一はバスケが下手ではない。むしろ上手い。しかし身体は男だという遠慮がありディフェンスに身が入らない。女子との接触を恐れてやすやすと抜かれてしまった。
 ボールは奏歩に渡る。奏歩はわき目もふらず突進して凛たちチームメンバーのことなど一切無視だった。さすがに上手い。ボールをまるで身体の一部みたいに操っていたが三年はそんなに甘くなかった。ナノ、有佐、唯の三枚ディフェンスで当たられ、あえなくボールを奪われるとそのまま唯がゴール。
 バスケは独りプレーではどうにもならないのだ。凛はボールに触ることすらできずただ三年がゴールを決め続けるのを見ていた。信子も同じ。コートを端から端まで走らされ息も絶え絶えだ。汗だけが吹き出している。
 それでも奏歩はボールを一人占めし、スタイルを崩さない。見かねた雄一がパス!と叫んだ。三年にディフェンスされ苦し紛れに奏歩は雄一にバウンドパス。雄一は一華に当たられていたが隙を見て信子にパス。信子はゴール下のシュートを放った。イン!これが最初で最後の得点だった。
 凛は結局何もできなかった。5分のミニゲームで点数は35対2。ぼろぼろである。敗因は主に奏歩だ。凛はそう思った。バスケなんて楽しくない。それも奏歩と同じチームなんて最悪。やっぱり辞めよう。凛は決心した。
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