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第10話 その後のサーカス5
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おかしい。何かがおかしい。
今はワシたちにとって大事なショーの最中。
誰も彼もが難易度の高い技を披露しているというのに、観客は冷め、チラホラと席を立つ姿が目立ち始めている。
カフア以降も特に反応がよくない。
普段以上の演技ができているというのにダメなのか。せめて最後まで見ようという気持ちにすらできないのか。
これが、目が肥えた観客か。
「さあ、とうとう最後になりました!」
いいや、まだのはずだ。ワシが間違っているのではない。観客が間違っているのだ。
ワシのやってきたことは間違っていないのだ。
まだ終わっていないのだから。
「ニーゼサーカス団の最後を務めますは、我がサーカスのエース! 水系魔法なら誰にも負けない! ゴルド!」
「おお!」
「ゴルド様ー!」
ほれみろ。息子のゴルドは世の女性から見た目で評価されているのだ。
今残っている者の中にも、ゴルド目当てという者が多くいることだろう。
そして、ゴルドの実力は本物だ。ここまで残らなかった者たちを後悔させてくれる。
「そして、パートナー、超一流魔物使い、ユラー!」
「あれっ」
「水と魔物?」
こればかりは仕方ない。アイドルのアリサとのタッグを望んでいた者たちからすれば肩透かしだろう。
だが、ユラーもアリサに並ぶ人気を持つのだ。
魔物使いとしての腕も一流。たとえアリサではなかったとしても問題にはならん。
「『ウォーター』!」
「行くのよ。バブルフィッシュ」
ゴルドの出した水で空中を泳ぐように、バブルフィッシュたちが移動する。
「へぇーこんなこともできるのか」
「意外と小ネタもあるのね」
違う。これは練習が必要な高等テクニックなのだ。
「ああっ」
ほれ見ろ、水棲モンスターの動きと魔法の動きを連動させることは練度が必要なのだ。
そんなことも知らぬとは、やはり目が肥えているわけではないようだな。
「きゃー!」
「う、『ウォーター』!!」
危うく観客に当たりかけた魚をゴルドが機転を効かせて回収していく。
そもそも、いくら一流の魔物使いとは言え、扱いやすいモンスターや扱いにくいモンスターもいるのだ。
ユラーが得意なのは陸上に生息するモンスター。水棲のモンスターではない。
こればかりは仕方ないだろう。
だからこそ、本番はここからだ。
「いくよ。ユラー」
「ええ。もちろん。任せてくださいゴルドさん」
「『ウォータースパイラル』!」
「行くのよ。パンサー! スライム!」
そう、とっておきは水棲モンスターでなく陸上のモンスターが水に乗り、高速移動し技を放つ姿。
「行くのよ! 行って! ねえ、お願い。行ってちょうだい」
「グルゥゥ……」
「プルプル……」
だが、いつもよりも勢いの強い水を恐れているのか、モンスターたちは動こうとしない。
その場で怯えたように身を小さくしていた。
「どうしたんだぁ?」
「水はすごいけど、それだけ?」
「仕方ない。ここは俺の力でなんとかしよう」
「ごめんなさい」
「いいさ」
何やら覚悟を決めたように、ゴルドが前に出た。
ここからどうするつもりなのだろうか。
いや、我が息子だ。考えがあって当たり前だ。
「『ウォーターテンプル』! 『ウォーターゴッデス』!」
ゴルドは水で神殿を作り出し、水で女神を作り出した。
あくまで見かけだけの技だが、その姿は神々しい。まるで輝いているように見える。
だが維持は難しいらしく、すぐに出した水全てが弾け、会場全体に温かな優しい雨が降り注いだ。
そして、ゴルドの演技は終わった。
なんとかなっただろう。やはり、息子を最後にしておいてよかった。終わりよければ全ていいのだ。
ワシはライトを浴びながらステージのセンターへと移動した。
「いかがだったでしょうか。我がニーゼサーカス団のショーは。本日のショーはこれにて終了。またのお越しをお待ちしております」
ワシは観客に頭を下げた。
やり切った。
成功とも失敗ともつかないだろうが、今日のところはそれでいいだろう。
失敗していなければ、また日を改めて挑戦することも可能だ。
「え、これで終わり?」
しかし、気になる声が聞こえてくる。
「アリサちゃんいないの?」
いない。あいつはもう出て行ったのだ。
「あれだけの氷系魔法はここでしか見られないから期待していたのに」
残念だったな。あいつはやめた。
「俺はドーラを見に来たんだが?」
なぜドーラなんかを見に来た。
いるわけないだろうあんなやつ。火吹き芸しかできないのだぞ。
いくら他の者にダメージがないとは言え、できることは少ない。練習すれば問題のない存在だ。
サンのことも気のせいだ。
「俺もドーラを見に来たんだけどなぁ」
「今話題のドーラが所属するサーカスってのはここじゃないのか?」
あいつが話題に? やめて一日で何をしたんだ。
問題を起こして我がサーカスの名を汚そうということか?
なるほど、今日の客はドーラの仕込みか。どこでそんなことをする算段をつけたのか知らないが、小賢しいことを。それも中途半端な結果だったがな。
アリサがやめた方がよっぽど大きかったわ。
「森の主を倒すほどの実力者がサーカスもやってるなんて、話題性バッチリなのにもったいないことするなぁ」
「ま、終わったんだしもう帰ろうぜ」
「そうだな。炎と氷の合わせ技み見たかったんだけどな」
「ドーラのブレスは炎だけじゃないらしいし他の組み合わせも見れたかもな」
「そうだなー。他にどんな組み合わせがあるんだろう。あーあ。なんだか拍子抜けだな」
なんだそれ。どういうことだ。森の主を倒した?
ワシたちにダメージを与えないという火吹き芸で?
しかも、ブレスだった? 火吹き芸じゃなく?
一体あいつは何者なんだ。
今はワシたちにとって大事なショーの最中。
誰も彼もが難易度の高い技を披露しているというのに、観客は冷め、チラホラと席を立つ姿が目立ち始めている。
カフア以降も特に反応がよくない。
普段以上の演技ができているというのにダメなのか。せめて最後まで見ようという気持ちにすらできないのか。
これが、目が肥えた観客か。
「さあ、とうとう最後になりました!」
いいや、まだのはずだ。ワシが間違っているのではない。観客が間違っているのだ。
ワシのやってきたことは間違っていないのだ。
まだ終わっていないのだから。
「ニーゼサーカス団の最後を務めますは、我がサーカスのエース! 水系魔法なら誰にも負けない! ゴルド!」
「おお!」
「ゴルド様ー!」
ほれみろ。息子のゴルドは世の女性から見た目で評価されているのだ。
今残っている者の中にも、ゴルド目当てという者が多くいることだろう。
そして、ゴルドの実力は本物だ。ここまで残らなかった者たちを後悔させてくれる。
「そして、パートナー、超一流魔物使い、ユラー!」
「あれっ」
「水と魔物?」
こればかりは仕方ない。アイドルのアリサとのタッグを望んでいた者たちからすれば肩透かしだろう。
だが、ユラーもアリサに並ぶ人気を持つのだ。
魔物使いとしての腕も一流。たとえアリサではなかったとしても問題にはならん。
「『ウォーター』!」
「行くのよ。バブルフィッシュ」
ゴルドの出した水で空中を泳ぐように、バブルフィッシュたちが移動する。
「へぇーこんなこともできるのか」
「意外と小ネタもあるのね」
違う。これは練習が必要な高等テクニックなのだ。
「ああっ」
ほれ見ろ、水棲モンスターの動きと魔法の動きを連動させることは練度が必要なのだ。
そんなことも知らぬとは、やはり目が肥えているわけではないようだな。
「きゃー!」
「う、『ウォーター』!!」
危うく観客に当たりかけた魚をゴルドが機転を効かせて回収していく。
そもそも、いくら一流の魔物使いとは言え、扱いやすいモンスターや扱いにくいモンスターもいるのだ。
ユラーが得意なのは陸上に生息するモンスター。水棲のモンスターではない。
こればかりは仕方ないだろう。
だからこそ、本番はここからだ。
「いくよ。ユラー」
「ええ。もちろん。任せてくださいゴルドさん」
「『ウォータースパイラル』!」
「行くのよ。パンサー! スライム!」
そう、とっておきは水棲モンスターでなく陸上のモンスターが水に乗り、高速移動し技を放つ姿。
「行くのよ! 行って! ねえ、お願い。行ってちょうだい」
「グルゥゥ……」
「プルプル……」
だが、いつもよりも勢いの強い水を恐れているのか、モンスターたちは動こうとしない。
その場で怯えたように身を小さくしていた。
「どうしたんだぁ?」
「水はすごいけど、それだけ?」
「仕方ない。ここは俺の力でなんとかしよう」
「ごめんなさい」
「いいさ」
何やら覚悟を決めたように、ゴルドが前に出た。
ここからどうするつもりなのだろうか。
いや、我が息子だ。考えがあって当たり前だ。
「『ウォーターテンプル』! 『ウォーターゴッデス』!」
ゴルドは水で神殿を作り出し、水で女神を作り出した。
あくまで見かけだけの技だが、その姿は神々しい。まるで輝いているように見える。
だが維持は難しいらしく、すぐに出した水全てが弾け、会場全体に温かな優しい雨が降り注いだ。
そして、ゴルドの演技は終わった。
なんとかなっただろう。やはり、息子を最後にしておいてよかった。終わりよければ全ていいのだ。
ワシはライトを浴びながらステージのセンターへと移動した。
「いかがだったでしょうか。我がニーゼサーカス団のショーは。本日のショーはこれにて終了。またのお越しをお待ちしております」
ワシは観客に頭を下げた。
やり切った。
成功とも失敗ともつかないだろうが、今日のところはそれでいいだろう。
失敗していなければ、また日を改めて挑戦することも可能だ。
「え、これで終わり?」
しかし、気になる声が聞こえてくる。
「アリサちゃんいないの?」
いない。あいつはもう出て行ったのだ。
「あれだけの氷系魔法はここでしか見られないから期待していたのに」
残念だったな。あいつはやめた。
「俺はドーラを見に来たんだが?」
なぜドーラなんかを見に来た。
いるわけないだろうあんなやつ。火吹き芸しかできないのだぞ。
いくら他の者にダメージがないとは言え、できることは少ない。練習すれば問題のない存在だ。
サンのことも気のせいだ。
「俺もドーラを見に来たんだけどなぁ」
「今話題のドーラが所属するサーカスってのはここじゃないのか?」
あいつが話題に? やめて一日で何をしたんだ。
問題を起こして我がサーカスの名を汚そうということか?
なるほど、今日の客はドーラの仕込みか。どこでそんなことをする算段をつけたのか知らないが、小賢しいことを。それも中途半端な結果だったがな。
アリサがやめた方がよっぽど大きかったわ。
「森の主を倒すほどの実力者がサーカスもやってるなんて、話題性バッチリなのにもったいないことするなぁ」
「ま、終わったんだしもう帰ろうぜ」
「そうだな。炎と氷の合わせ技み見たかったんだけどな」
「ドーラのブレスは炎だけじゃないらしいし他の組み合わせも見れたかもな」
「そうだなー。他にどんな組み合わせがあるんだろう。あーあ。なんだか拍子抜けだな」
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