待つだけだった私にさようなら ー私だけを見てほしかったー

梅雨の人

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「あ…」 

「…グレース嬢?」 

「アレクサンダー様…おはようございます。」 

「おはよう、すごく早くに目が醒めたんだな。眠れなかったのかい?」 

「…いつもあまりよく眠れなくて…だから心配しないでください。」 

「…悔しいな、あの時、あと一歩のところで君を攫うようにあいつに連れていかれた。悔しくて悔しくて、今もまだ心の整理がついていないってうのに。あいつはあんな女に構って君にこんな想いをさせている…。私なら君を絶対に幸せにする。絶対にだ。何があっても何を置いても必ず君のところに一番に駆け付けるし、君を一番に大事にする。 
君が悪人になろうが、君が大失敗しようが、絶対に俺だけは君の味方になる。 目の前で誰かが困ってても君を一番に気に掛けるだろう。」 

「熱烈だわ…目の前で誰かが困ってたら私のことはいいからその人を助けてほしいのだけど…」 

「......愛してる。」 

「…こんな時に卑怯だわ」 

「卑怯でも何でも構わない。君を今度こそ私の手で幸せにしたい。その権利が欲しい。」 

「私が離婚するのを待たなくていいの?」 

「君が待ちたくないというのなら今すぐに君を攫ってしまおう。後のつまらないことはすべて私が片をつけてやる。」 

「頼もしいのね…そんなに私のことを想ってくれる人がいるなんて…」 

「泣き虫」 

「私って案外チョロい女だったのね」 

「チョロい女だって?君がそんなこと言うなんて面白いな。」 

「毎日暇なときに使用人の会話が窓の向こうから聞こえるのを盗み聞いてたの。はしたないわよね?」 

「もうそんな暇も俺と一緒になったらなくなるぞ?」 

「…大変そうね…ふふっ」 

「そう構えなくていいさ。私がすべて君の憂いを払って見せる。」 

「でも………」 



-------

その日、屋敷についたころには辺りは真っ暗になっておりました。 


「グレース!はぁっはぁっ…お帰り...君が戻ってきたと知らせを受けて…グレース...そちらの方はアレクサンダー・アンボワーズ侯爵令息?もしかして、君が会っていた友人とは彼のことなのか?」 

「ただいま戻りました。」 

「私の質問に答えてくれないのかい、グレース?」 

「私のことですよ。グレース夫人の友人で一番の理解者だ。」 

「…っ…何をっ!」 

「戻って来なくてもいいだろうと伝えたんですが、グレース夫人はどうしてもきちんとしておきたいと。」 

「貴様...何をしているのか分かっているのか?彼女は私の妻だぞ?」 

「そういえば貴殿の御友人はいないのですね?最近は噂になっておりましたよ。実は腹の子の父親が貴殿ではないのかと。頻繁に貴殿がご友人をそれはそれは大切にし、寄り添っておられるのがあちらこちらで目撃されていたらしいですからね。」 

「…彼女はただの友人だ。元友人とでもいうのか…」 

「へぇ…で?私がフォンテーヌ卿の妻の友人で今こうして送り届けたことに何をそんなに怒る必要が?」 

「それとこれとは違うだろう…っ」 

「ご存じでしょうか、フォンテーヌ卿の友人のゾーイ嬢、平民と浮気の末に身ごもったようですよ。それで嫁ぎ先を追い出されてこちらに戻ってこられたようだ。彼女が何といったか知らないが、私は彼女の元夫の知り合いでね、生まれてくる子が平民の例の相手の赤毛だったら、もういい訳も出来ないだろうと言っておりましたよ。ああ、元夫は家格の釣り合う令嬢を見つけて早々に結婚しましたよ。つまらない女に時間を割いてしまったと怒っていましたがね。」 

「なっ…彼女は元夫の心変わりで婚家を追い出された挙句に妊娠が発覚して困っているからと私に…」 

「甘いですよ、それくらいのつまらない女の嘘で妻を悲しませるなんて。私ならそんな失態は絶対にしない。嘘かどうか位調べたらすぐにわかることだ。それにそれが真実だとしても、妻を後回しにするなど私にはあり得ない…グレース夫人もそう思うだろう?」

「私は……」 

「……グレースすまなかった」 

縋るように見つめてくる旦那様から視線をそらします。

アレクサンダー様のおっしゃる通りです。 

そう、どんな理由であれ、私は旦那様に一番に大事にしてほしかったのです。どうしてアレクサンダー様に言われなければ分かってくださらなかったのでしょう。

流れてくる涙がどうしても止まってはくれません。

「待ってくれグレース!」 

気が付けばただひたすら走り続けておりました。

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