待つだけだった私にさようなら ー私だけを見てほしかったー

梅雨の人

文字の大きさ
16 / 18

16ゾーイ

(ゾーイ視点) 

「ああ…姉さん。元気そうだね。」 

「ええ、おかげさまで。ソフィアさんたちも元気にしているのかしら?」 

「ああ、妻も子供たちも元気にしてるよ。母上たちも孫たちの世話で忙しそうだ。」 

「そう、じゃあ、もうすぐもっと忙しくさせちゃうわね。」 

「姉さん、…悪いんだけどもうここには置いとけないよ。」 

「どうしてなの…?」 

「フォンテーヌ伯爵から正式に抗議の文が送られてきたよ。…姉さん、離縁の原因を偽ってフォンテーヌ伯爵に伝えてたんだって?同情を買ってまでしてずっと世話になっていたんだろう?新婚のフォンテーヌ伯爵があんなに姉さんに構って…おかしいと思っていたんだ。まさかそんな嘘で伯爵の同情を買って、幼馴染だからとあんなに構ってもらって居た挙句...睡眠薬まで伯爵に盛ったそうじゃないか。」 

「そんなことしてないわよ、そんなことするはずないでしょう?」 

「証拠は出ているんだよ、姉さん。どうしてなんだ?そのお腹の子供の父親も生まれてくるまで、浮気相手の子か元旦那の子か、どちらの子かわからないんだろう?どうして、こんな問題ばかりを起こすんだ…私だけではもう姉さんを庇い切れない。」 

「そんな…じゃあ、私はどうしたらいいの…」 

「悪いけどここを出来るだけ早く出て行ってもらう。平民だけど、隣国の商会長が姉さんを娶ってもいいと言ってくれている。」

「平民ですって…?」 

「ああ、やっと姉さんを娶ってもいいというひとを見つけたんだ。金は充分あるし、後継もすでにいるらしい。」 

「嫌よ…」 

じゃあ、どうするっていうんだ?そう言って弟はこぶしを握りしめていた。 


それからはよく覚えていない。 
気が付けば、もう近寄ってはいけないと言われていたイライジャの屋敷に乗り込んでいた。 

あの昔から優し過ぎる以外には、何にでも秀でていて見目もよいあのイライジャを押し切って…あとはグレース様を追い詰めて追い出して…もう少しでイライジャの妻になれたかもしれないのに… 

出戻りなんて言えないくらいにイライジャに大切にされて、私を出戻り女と陰で嘲笑ってた女たちの羨望と憧れの的となっていたはずなのに… 

どうしてこんなことになってしまったの?あの平民の見目の良い男と少し遊んでみただけなのに…元夫なんて私から隠そうとしていたみたいだったけど、いつもそこら辺の女たちと遊んでいたわ…それなのに… 

イライジャの屋敷にたどり着くも、門番が私を入れてはくれなかった。 

「ああ、私がやってきたことをイライジャに知らせてあげなければいけなかったのね…」

門の前で大声でイライジャを呼んだ。 喉が枯れそうになったころイライジャがグレース様を伴って現れた。

「…ゾーイ...いや、ベルニー伯爵令嬢。もうここには来ないように伝えたはずだが?」 

私を拒絶するイライジャの声が冷え冷えとしていて、これは本当にあの優しかったイライジャと同一人物なのかと錯覚を起こしそうになった。 

「…いつも、いつでも私を歓迎してくれていたじゃない…イライジャ?お願い…私を屋敷の中に入れて頂戴?もう私にはいくところがないの…っ」 


「....ここでは何ですから…お茶を用意させましょう。庭で宜しければ...このままではお腹のお子様にもよくございませんでしょう?」 

「しかし……そうだなグレース。そうしようか。ベルニー伯爵令嬢を案内してくれ。グレース行こうc。」 

私を放っておいて、イライジャがグレース様へとエスコートするために腕を差し出している。 

二人の視線は絡まって、イライジャの手が自然とグレース様の頬を労わるように優しく撫でた。 

思わずという風にイライジャの片腕がグレース様の腰に回り自然と二人が寄り添っていた。

あなたにおすすめの小説

【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。

山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。 姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。 そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件

よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます 「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」 旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。 彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。 しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。 フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。 だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。 私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。 さて……誰に相談したら良いだろうか。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

いくつもの、最期の願い

しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。 夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。 そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。 メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。 死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~

夏笆(なつは)
恋愛
 ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。  ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。 『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』  可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。  更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。 『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』 『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』  夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。  それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。  そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。  期間は一年。  厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。  つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。  この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。  あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。    小説家になろうでも、掲載しています。 Hotランキング1位、ありがとうございます。