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15ヒューゴ
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結局、再び元居た職場へ戻るためにアリスと買ったばかりの家を売り払った俺は、一人でかつてアリスと住んでいたアパートに戻った。
かつてアリスと住んでいたアパートに今度は一人で戻ることになるなんて、過去の俺は思いもしなかった。
アリスだけが相変わらずそこにはいなくて、虚しくて、悲しくて、恋しくて、頭の中がおかしくなりそうだった。
栄転で転勤した俺がこちらに戻された理由を周りは面白がって噂していたが、アリスの居ない寂しさを忘れるためにただひたすらに仕事に打ち込んでいると、皮肉なことに再び会社に評価されるようになっていた。
それから行われた離婚裁判で俺の不貞を挙げられた結果、アリスとの再会を果たすことも出来ないまま離縁が成立してしまった。
一人身になって三年後、俺は女性達に言い寄られることが増えて行ったが、アリスを失った傷が深すぎて、気が付けば女性を徹底的に避けるようになっていた。
この町はアリスの地元の隣町で、離婚した今でもアリスが地元に戻っていないかと思い、隣町までちょくちょく足を向ける日々を過ごしていた。そんなある日、俺の願いが届いたのか、昔のようなまぶしい笑顔を見せるアリスを通りの反対側に見つけた。
「…アリス...アリスアリスっ…!」
ざわざわと人ごみの多いこの通りでは、アリスに俺の声は届かなかったみたいで、道を渡ってアリスのところまでと思っている間に、アリスの姿はなくなっていた。
アリスはとても若々しくて、肌も髪も艶々で健康的になっていた。俺の見たことのないワンピースが美しいアリスにとてもよく似合っていた。すれ違いざまに何人かの男たちがアリスを振り返っていたが、そんな男たちからアリスを守るように、背が高くて強そうな男がアリスに寄り添って歩いていた。
アリスは安心しきった眩しい笑顔をその男と、そして男の腕の中に抱かれた男にそっくりな赤ん坊に向けていた。
「……っ!…」
「ちょっとこんなところで急にたちどまらないでよねっ!危ないじゃないの!」
「…すみません...」
「ちょっと…なんだい?あんた泣いてるのかい?…ほら、これ捨てていいから涙を拭きな。いい男が台無しだよっ。」
俺が急に立ち止まったばかりに、思わず俺にぶつかってしまった中年の女性がくれたハンカチで涙を拭いで、もと来た道を戻って行った。
さっき見たのは…俺が今頃は当たり前に手に入れていたはずの未来そのものだった。
自ら手放してしまったその当たり前の光景に、そこにあったはずの幸せに俺は打ちのめされた。
あとは、ただただ…アリスとの思い出に縋るようにその痛みを受け止め続けるしかなかった。
その痛みはあまりにも強烈で生涯忘れられそうにはなかった。
アリスはとても幸せそうだった。良かった…良かった…君が幸せでいてくれて本当に良かった…アリス...
ごめん…ごめん…ごめん…アリス...
もう謝罪することも話しかけることも出来ないけれど、君がこれからも幸せであることを祈っている。
【完】
ありがとうございました。 新連載「待つだけだった私にさようなら ー私だけを見てほしかったー」始めました。よろしければこちらもご覧くださいませm(__)m
かつてアリスと住んでいたアパートに今度は一人で戻ることになるなんて、過去の俺は思いもしなかった。
アリスだけが相変わらずそこにはいなくて、虚しくて、悲しくて、恋しくて、頭の中がおかしくなりそうだった。
栄転で転勤した俺がこちらに戻された理由を周りは面白がって噂していたが、アリスの居ない寂しさを忘れるためにただひたすらに仕事に打ち込んでいると、皮肉なことに再び会社に評価されるようになっていた。
それから行われた離婚裁判で俺の不貞を挙げられた結果、アリスとの再会を果たすことも出来ないまま離縁が成立してしまった。
一人身になって三年後、俺は女性達に言い寄られることが増えて行ったが、アリスを失った傷が深すぎて、気が付けば女性を徹底的に避けるようになっていた。
この町はアリスの地元の隣町で、離婚した今でもアリスが地元に戻っていないかと思い、隣町までちょくちょく足を向ける日々を過ごしていた。そんなある日、俺の願いが届いたのか、昔のようなまぶしい笑顔を見せるアリスを通りの反対側に見つけた。
「…アリス...アリスアリスっ…!」
ざわざわと人ごみの多いこの通りでは、アリスに俺の声は届かなかったみたいで、道を渡ってアリスのところまでと思っている間に、アリスの姿はなくなっていた。
アリスはとても若々しくて、肌も髪も艶々で健康的になっていた。俺の見たことのないワンピースが美しいアリスにとてもよく似合っていた。すれ違いざまに何人かの男たちがアリスを振り返っていたが、そんな男たちからアリスを守るように、背が高くて強そうな男がアリスに寄り添って歩いていた。
アリスは安心しきった眩しい笑顔をその男と、そして男の腕の中に抱かれた男にそっくりな赤ん坊に向けていた。
「……っ!…」
「ちょっとこんなところで急にたちどまらないでよねっ!危ないじゃないの!」
「…すみません...」
「ちょっと…なんだい?あんた泣いてるのかい?…ほら、これ捨てていいから涙を拭きな。いい男が台無しだよっ。」
俺が急に立ち止まったばかりに、思わず俺にぶつかってしまった中年の女性がくれたハンカチで涙を拭いで、もと来た道を戻って行った。
さっき見たのは…俺が今頃は当たり前に手に入れていたはずの未来そのものだった。
自ら手放してしまったその当たり前の光景に、そこにあったはずの幸せに俺は打ちのめされた。
あとは、ただただ…アリスとの思い出に縋るようにその痛みを受け止め続けるしかなかった。
その痛みはあまりにも強烈で生涯忘れられそうにはなかった。
アリスはとても幸せそうだった。良かった…良かった…君が幸せでいてくれて本当に良かった…アリス...
ごめん…ごめん…ごめん…アリス...
もう謝罪することも話しかけることも出来ないけれど、君がこれからも幸せであることを祈っている。
【完】
ありがとうございました。 新連載「待つだけだった私にさようなら ー私だけを見てほしかったー」始めました。よろしければこちらもご覧くださいませm(__)m
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