もう少し早く気が付けば君を失わずに済んだのだろうか、なんて後悔をあなたはきっとしない。

梅雨の人

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「サンドラー前辺境伯様、ごきげんよう。長く滞在させて頂き感謝しております。」  

「ああ、そんな挨拶よしてくれよマリア嬢、それとイリス殿。むっさ苦しい男どもばかりだからなあ、マリア嬢とイリス殿は大歓迎じゃ。」  

サンドラー前辺境伯様がサンドラー伯爵家の遠縁にあたるロックフェラー子爵令息様と一緒に訪ねてきてくださいました。 

「マリア嬢、来週末にはまた王都に戻るんだろう?」
「これこれフェリッスクよ。レディーに対してその口調何とかならんのか。昨日初めて会ったばかりだというのに…」
「…すまない、いや、失礼した。…しかしどうしてもこのような口調になってしまうんだよなあ…」
「どうしようもないな…おぬしのそれはもう治りようがないだろうなあ。 何とかに塗る薬はないんじゃったかのー…」
サンドラー前辺境伯様が大きなため息をつきます。

「よろしいのですよ、ロックフェラー子爵令息様。むしろその方が私も落ち着きますわ。わたくし共は残念ながら来週末にはまた王都に戻ることになっております。お父様から戻ってくるようにお手紙が届きましたのでもう、これ以上はこちらでお世話になるわけにはいかなくなってしまいましたの…。」

「残念だのう。もっと長く滞在出来たらよかったのにのう。しかしじゃ、マリア嬢。この男を甘やかしてはならんよ。すぐにつけあがるからな。
それにしても…王太子殿下にも困ったもだ。幼馴染で仲が良いとはいえ…頼みこまれたからと言ってあのヒギンス公爵家のぼんくら次男にマリア嬢を嫁がそうとするとはなあ…」  

「王命…ではないのですが、王太子殿下たっての願いと父が申しておりました。」  

「王命じゃないけどって、なんにせよ断りづらいやつだよな。国王陛下もそろそろ退位がささやかれている。あの王太子が国王になる日が近いと思えばなおさら断りづらいよなあ...よっぽどマリア嬢を手に入れたかったんだろうな。そのアホ...げほんっ…婚約者。」  
「おいフェリックスよ、今アホといったじゃろ?本当のこととはいえ失礼な奴め…」

「…私を手に入れたかっただなんて…そんなことは絶対にありえません。…こんな地味なわたくしよりもきれいな方々はたくさんいらっしゃるのですし…現にアベラルド様はほかの女性方にしか興味がおありでないようですので...」 

そんなことはないと三人とも口を揃えて私をフォローしてくださるのが心苦しくてなりません。 

わたくしが今回、王都から逃げるようにしてここにやってきた理由など言わずもがな、聡いお二人のことですのですでにご存じなのでしょう。  

王都に戻って…私は一体どうしたらよいのでしょうか…
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