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57 アベラルド視点
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「はっ…ごほっごほっ!!!………ここは…試合はっ……」
目が醒めたら私は自室の中に寝かされていた。
起き上がろうとすると、わき腹から肩先にかけてぐっと全身を貫くような痛みが駆け抜けて、一気に冷や汗が噴き出てきた。
私が目を醒ましたのを目の当たりにしたらしい使用人が医者を呼んだようで、慌てて部屋に入ってきた医者によって診察を受けた。
「三日三晩意識を失っていた…?あの男に私が負けた…?マリアが…あの男の求婚を受けた…?私との婚約は…白紙………そんな...」
それから聞かされた話を到底受け入れることなど出来るわけもなく、痛みに苦しみながらもなんとかマリアに会えないかと幾度も部屋を抜け出そうと試みた。
何度もマリアに会いに行こうともがく俺はどんどん窶れていって、折れた鋤骨も足や腕の骨もすぐに治るわけもなく、いつしか鎮静剤を打たれるようになって気が付けばベッドの上の住人になっていた。そんな私のもとに、父上についていつも執務をこなしている兄上が会いに来た。
「調子はどうだアベラルド。」
「…兄上…マリアに会わせてください。」
「それは出来ない。」
「マリアに…マリアに会わなければならないんです。」
「お前はもうマリア嬢のところに行くことはできない。」
「信じられません。私はこれまでも何があっても必ずマリアの元に戻っていた。そのたびにマリアは私を喜んで迎え入れてくれた。だから今でもマリアは私のことを待っているはずなのです。兄上お願いです。マリアに会わせてください。」
「マリアはお前の婚約者ではない。すでにフェリックス殿と公式に婚約を結んだ。二人でキンブリー侯爵を継ぐことになった。マリア嬢の元に戻るのはフェリックス殿でお前ではない。」
何度も何度も同じようなやり取りを兄上と繰り返し、そのたびに私は胸がねじれるような痛みを覚えた。
マリアは私のものだ―――私はずっとそう信じていた。
他の令嬢等と体を重ね戯れても、いつも結局私の戻るところはマリアの元だった。マリアが待っていてくれる――それだけで私は幸せだった。
マリアと夫婦になるまでの遊びで、それはほかの貴族連中もやっていることで何の疑問も抱かなかった。
さすがにマリアの目の前でそんなことはしないし、気づかせないよう気を配るくらいの常識は持ち合わせていた。
だから私は関係を持つ相手に対していつも、マリアを傷つけるような言動はしないこと、マリアに気が付かせないこと、そしてこれはただの遊びで、それはまるですれ違うことと同義で深い意味などないに等しいと納得させ、契約書にサインをさせてから事に及んでいた。
――愛おしいマリアを婚約者にできてこの上なく幸せだったのに、遊びと言っては女たちと遊ぶのを止めることが出来なかった。
目が醒めたら私は自室の中に寝かされていた。
起き上がろうとすると、わき腹から肩先にかけてぐっと全身を貫くような痛みが駆け抜けて、一気に冷や汗が噴き出てきた。
私が目を醒ましたのを目の当たりにしたらしい使用人が医者を呼んだようで、慌てて部屋に入ってきた医者によって診察を受けた。
「三日三晩意識を失っていた…?あの男に私が負けた…?マリアが…あの男の求婚を受けた…?私との婚約は…白紙………そんな...」
それから聞かされた話を到底受け入れることなど出来るわけもなく、痛みに苦しみながらもなんとかマリアに会えないかと幾度も部屋を抜け出そうと試みた。
何度もマリアに会いに行こうともがく俺はどんどん窶れていって、折れた鋤骨も足や腕の骨もすぐに治るわけもなく、いつしか鎮静剤を打たれるようになって気が付けばベッドの上の住人になっていた。そんな私のもとに、父上についていつも執務をこなしている兄上が会いに来た。
「調子はどうだアベラルド。」
「…兄上…マリアに会わせてください。」
「それは出来ない。」
「マリアに…マリアに会わなければならないんです。」
「お前はもうマリア嬢のところに行くことはできない。」
「信じられません。私はこれまでも何があっても必ずマリアの元に戻っていた。そのたびにマリアは私を喜んで迎え入れてくれた。だから今でもマリアは私のことを待っているはずなのです。兄上お願いです。マリアに会わせてください。」
「マリアはお前の婚約者ではない。すでにフェリックス殿と公式に婚約を結んだ。二人でキンブリー侯爵を継ぐことになった。マリア嬢の元に戻るのはフェリックス殿でお前ではない。」
何度も何度も同じようなやり取りを兄上と繰り返し、そのたびに私は胸がねじれるような痛みを覚えた。
マリアは私のものだ―――私はずっとそう信じていた。
他の令嬢等と体を重ね戯れても、いつも結局私の戻るところはマリアの元だった。マリアが待っていてくれる――それだけで私は幸せだった。
マリアと夫婦になるまでの遊びで、それはほかの貴族連中もやっていることで何の疑問も抱かなかった。
さすがにマリアの目の前でそんなことはしないし、気づかせないよう気を配るくらいの常識は持ち合わせていた。
だから私は関係を持つ相手に対していつも、マリアを傷つけるような言動はしないこと、マリアに気が付かせないこと、そしてこれはただの遊びで、それはまるですれ違うことと同義で深い意味などないに等しいと納得させ、契約書にサインをさせてから事に及んでいた。
――愛おしいマリアを婚約者にできてこの上なく幸せだったのに、遊びと言っては女たちと遊ぶのを止めることが出来なかった。
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