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間章

ソフィの独り言2

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 私はルーナ様(魔王城では無能次期魔王と言われている少女)の執事(お世話係)になった。
 普通の者なら言われた瞬間。顔には出さずとも心の中で大きく落胆していたでしょう。しかし私は真逆でした。

 現在のルーナ様は、完全に魔王様からもその周りの者からも邪魔者。無能扱いされ。さらには今では噂が広がり。多くの国民からも距離を置かれていた(なお、ルーナ様の姿を知る者はあまりいない。何故なら長期にわたり表に出ていなかった。出してもらえなかったから。そのため、噂で『次期魔王のルーナ様は魔術が使えない』その言葉だけが広がったのです)。
 もちろん今までルーナ様に関わった人が何もしてこなかったわけではありません。
 資料によると――ルーナ様の幼少期の頃に執事となった人たちも、ルーナ様が魔術を使えるようにといろいろ試していた記録があります。
 しかし、何をしてもルーナ様が魔術を使えるようにはならず。遂には打つ手がなくなり。それを聞いた魔王様がいきなりは次期魔王からルーナ様を外すことはできないので、とりあえず魔王城の離れ(自分たちの目が届かないところ。自分の子が魔術が使えないなど認めたくなかったのでしょう)に左遷した。と言ってもいいでしょう。その後は会うこともなく放置となっているようです。ちなみに他の近親者もまるでルーナ様はいなかったようにしているみたいです。
 なので、ルーナ様は現段階ではまだ次期魔王様ですが。いつそれも崩れるか。そして次期魔王から外されるその瞬間。ルーナ様に待つのは――死のみでしょう。

 しかーし!
 私ソフィ・スペンサーは、ルーナ様は。きっかけがあれば化けると思っています。何故なら。

『この世界に魔術が使えない者はいない』

 これは昔私の師匠。幼少期にいろいろと私に指導してくれた方が言っていたことです。現に私は昔とある光景を見ています。
 
 魔術が全く使えない人が魔術を使えるようになる瞬間を――。

 その時は、全く魔術が使えない人の身体に、魔術が使える人が外から刺激を与えるという方法でした。
 はじめのうちは効果はありませんでした。
 しかし、何回もしていくうちに、魔術が使えなかった人に変化がありました。まず身体がなってきたと言い出だしました。そこからは早かったですね。
 再度刺激を与えると――魔術が使えなかったものが初球魔術が発動。一度発動するとすると、何か体内で詰まっていたものが取れたかのようにその人は魔術が使えるようになったのです。
 もちろん魔術は知識も必要なので、その時の人は魔術が使えないからと勉強を放置していたため。初級魔術がギリギリ発動するだけ(7割ほど不発)でしたが。確かに魔術が使えなかった人が魔術を扱えるようになった瞬間を見ているのです。

『魔術が使えない者はこの世界にはいない。使えないのはその者の魔力が強すぎるがゆえ。体内でうまく魔力を動かせなくなっているだけだ。だから外から刺激を与えればよい。これを上にも言っているのに全く聞く気すらない』

 最後の方は愚痴だった気がしますが。とにかく、師匠の言葉は正しかった。
 なので私も、ルーナ様のことを知った時も同じだとすぐに感じました。本当はその時すぐに師匠にも相談を――だったのですが。この時すでに師匠はこの世界にはおらず。なので私が師匠の発見したことを広めるのです(そうすればすべて私の功績!がっぽがっぽも夢じゃない)。おっと、今心の声が漏れました?気のせいです。忘れなさい。

 とにかく、私はルーナ様の執事のなると同時にルーナ様にも試す予定でした。しかし、事はそううまく進みませんでした。

 私が執事になった頃には、すでにルーナ様は魔王城の離れへと追い出され数年経過。そして魔王城の離れへと追い出されてからは、まともな教育も受けさせてもらえず。また、ルーナ様自身も年齢が上がるとともに、自分が無能扱いされているということに気が付いてしまったからか。私が魔王城の離れへと来た時には、完全にルーナ様は堕落した生活を送っていました。それはもうだらっだら。
 ちなみにだらっだらがあったので簡単に試すことはできたのですが(実際隙だらけでやりたい放題でした)。ルーナ様に何度刺激を試みてみても。何も起こらない状態でした。
 さすがにその際は、もしかすると師匠の考えは……ということも頭を過りました。しかし、相手は次期魔王様。そもそも魔王という強力な魔力の遺伝を受けているはずなので、相当な濃い魔力を持っている可能性があると私は考え。そして、別の刺激方法を考えました。有能な私なら師匠が思いつかなかった方法も発見できると。

 結果――何も浮かびませんでした。てへっ。

 いや、さすがに有能な私も思いつく限り試したんですがね。ダメでした。ルーナ様は――異常でした。何も反応しなかったんですよ。

 そして私もそろそろ試すことがなくなりだしたころ。たまたま。それはほんとたまたま。彼が応募してきて――私は思いついたのです。

「イチャイチャさせれば目覚めるのでは?そうすれば私も楽しめる一石二鳥!なんでもっと早くそれに気が付かなかった私ー!でもやっぱり私有能!よし!夜中だろうと迎えに行かなくちゃ!」

 とね。 

 いやー、これいいんじゃないですか?こんな感じで話しておくと今後私の有能さをアピール――おっと、私の妄想丸聞こえでした?えっ?今までのは嘘。妄想なのかって?
 いえいえいえいえいえ。この有能な私。ソフィ・スペンサーがなんとなく自分が今後目立つために有能アピールを捏造していたとか。そんなことあるわけじゃないですかー。

 ――あら?今おかしなこと言いました?気のせいでしょう。私が妄想で語るなどありえますん。

 ★ ★

 さて、私の話が怪しくなってきたところで、とある事実をお話ししましょう(逃げるが勝ち)。
 
 実はルーナ様に残された時間(次期魔王としての立場)は、あまり長くはありません。何故なら――ルーナ様は妹が居るからです。

 今でこそルーナ様という姉。すでに決まっている次期魔王様が居るため妹はほとんど表には出てきてはいませんが。
 実は魔王城に関わる者は、妹の強さをすでに知っています。魔王様たちが内々に見せているからです。ちなみに私も知っております。
 はっきり言って、ルーナ様の妹は、まだ16歳にして、現在の魔王様に引けを取らない力を持っています。

 そして私が魔王城の離れに来てしばらくした頃には、一部の町の人にも情報が流れだしていると。
 そのことからこの現状。左遷されている状態のルーナ様。それがいつひっくり返るか――私の予想ではそう時間はないでしょう。だから私は賭けることにした。

 これからやって来るであろう者に。
 そして――私の賭けは……。

 ★ ★

 ※女性が話した事はすべてが正しいとは限らない。あくまで独り言である。
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