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第4章 変化

4-5 希望の光

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「ルーナ?どうした?大丈夫か?」
「せ、セルジオ。なんか、なんか身体が動いてる」
「は、はい?身体が動いている?」

 ソフィさんと言い合っていたと思ったら突然座り込んでしまったルーナ。俺が慌てて駆け寄り支えると、ルーナはそんなことをつぶやいたのだった。  
 ちなみに身体が動いていると聞かされたらドキッとするよ。まず気持ち悪いというか。身体の中に何か入ったのではないかと心配になったが。その様子は見る限りない。だが、近寄って気が付いたが。ルーナの身体すごく熱い。そして顔も赤かった。これは――熱?あれ?顔が赤いのは先ほどからか?俺もちょっと混乱していると。

「な、何よ――これ」

 ルーナは目の前に居たソフィに声をかけていた。ちなみにソフィだけは落ち着いている。

「まさかの即効性ですね。もしかしてお2人本当に相性がよろしい?あっ。人間と魔族だから……?これは詳しく調査しないとですね」

 そうだ。すっかり忘れていたが。俺は人間。ルーナは魔族だ。ここ最近当たり前のように一緒に居たから大切なことが抜け落ちていた。今更かもしれないが。俺以外はみんな角がある。だから魔族だ。
 そもそも人間と魔族が混ざるなどあってはならないこととされていたのだ。
間接とはいえ、大変なことをしてしまったのでは?あれ?これ大丈夫なのか?俺がそんなことを思っていると顔に出ていたのか。すぐにソフィが微笑みつつ話しかけてきた。
 
「セルジオ様。大丈夫ですよ、勝手に混ざるのは禁止と言っているのは人間だけです」
「心の中を読まれたんだが……」

 まさかの何も聞いていない。言っていないのに、的確にソフィが答えてくれた。いやいやそれの方が怖いんですけど。なんでわかった?俺の表情そんなにわかりやすい?って、今はそれはおいておき。

「ルーナ?大丈夫か?」

 まだ座り込んでいるルーナに目を向ける。

「ルーナ様?そろそろ無能を卒業なさってはいかがですか?」
「なっ――どういう――」

 するとソフィが今度は面白そうに?ルーナに話しかける。ちょっと馬鹿にしたような雰囲気で……。

「セルジオ様とお勉強したんですよね?無能ながら――」
「――むっ」

 あっ、ヤバい。ルーナの顔に怒りの雰囲気……なのにソフィは続ける。

「無能ながら毎日――」

 するとルーナの目つきが変わった。爆発しますね。ソフィ。言いすぎと、俺が思ったと同時くらいに――。

「す、好き放題言って、好きで無能じゃないわよ!――ふえっ!?」

 怒鳴りながらソフィに文句を言うルーナだったが。その最後ルーナは驚きの声をあげた。何故なら。

「ふふっ」

 ちなみにその様子を見いていたソフィは満足そうに頷きながら。自身の周りに風をまとい――。

 バッシャン。
 
 攻撃から身を守っていた。って、冷たい。

 今俺の目の前で起こったことは、唐突にルーナの手元から水の塊が発生し。それはまっすぐソフィのもとに向かい――ソフィの周りにあった風が四方八方にはじけ飛ばした。そして今はあたりの地面を濡らしている。

「……使えた?魔術が――えっ?えぇぇぇぇぇぇ!?!?」

 水の塊をソフィにぶつけたルーナはというと、驚き叫び固まっていた。

「――魔術が発動した?」

 それは見ていた俺も驚きいつつ。あと水を軽く拭きつつ状況確認をした。いや、確認する必要はないか。間違いなく今ルーナが魔術を使った。

「ま、魔術だよね?今の」
「間違いなく。初級の水かと。それも威力からして――ほぼ完ぺき」

 ルーナが驚きながら今度は俺の方を見て聞いてきたので俺はすぐに答えた。

 今俺の前で起こったことを簡単に言えば。
 ルーナから魔術が発動。水の塊がソフィを襲った。そしてソフィは風の魔術で防いだ。である。俺は濡れたが――。

 とにかく。ルーナが初級魔術が発動した。

「嘘。本当に間接キスだけで?って、ならセルジオも間接キスしたら――使えるってこと?」
「その可能性は高そうですね」

 そしてルーナは興奮気味にソフィに再度確認をしていた。そしてすぐにルーナはまたコップに水を。そして自分で少し飲んでから――少し恥ずかしそうにコップを俺に渡してくれた。

「えっ?ルーナ?」
「ほら、セルジオも」
「えっ?」
「ほら」
「あ、はい」

 少しためらいがあってから、俺は口をつけた。ちなみに水の量も少なかったので、今度は俺が一気に飲んだのだった。

 が――それからしばらく俺は普通に立っていた。身体に何か起こることもなかった。ルーナが言っていたように体がおかしい。なんか動いているなどの感覚は全くなし。身体も熱くなることはなかった。

 俺の様子を見たルーナは『そんなことないでしょ』と半ば無理矢理もう一度自分が飲んだコップで俺に水を飲ませてきたが――それからしばらく経っても、俺の身体には何も起こらず。もちろん試しに俺が初級の魔術を使ってみても、何も発動などすることはなかった。
 ちなみにルーナは再度魔術を構築すればちゃんと使えた。今裏庭の一部を燃やしている。いや、消して。水。などと思っているとソフィが消していた。って。ソフィなんでもできるのでは?
 って、それはちょっとおいておき。ルーナは間接キスで魔術が使えるようになった。けれど――同じことをしても俺は使えなかったのだった。

「セルジオ様に関しては要調査ですね」

 そして少ししてソフィがそうつぶやき。今日の所はこれで終了となった。なおその後は――。

「なんで私が片付けなのー」

 ボロボロになった裏庭をルーナが練習がてら魔術で直すことになったので、俺は見守りとして傍に居たのだった。ソフィは既に屋敷に内に戻っている。何やらまとめる。ルーナに魔術が――というのは重要なことなので。などと言っていた。ちなみに今のところは誰にもルーナの事は口外しないようにとなっている。
 
 ★ ★

『――ルーナ・ヴンサンか』
 
 ガサッ。

 ★ ★

「――うん?」

 するとその時俺は何かを感じて離れの敷地外を見たが――特に何もない。

「どうしたの?セルジオ」

 俺が別の方を見ていることに気が付いたルーナが魔術を一度止めて俺に話しかけてきた。

「いや、なんか見られていたような……気のせいかな?」
「こんなところに誰か来ることないわよ?」

 あたりは静かだ。動物すらいない。

「ですよね。見たことないですし」
「うん。私の事なんてみんなから忘れられてるから」
「でも、魔術が使えるようになったので」
「うん。これからはどんどん。いや、上級魔法覚えてから魔王城乗り込んでやる」
「いやいや親子で揉めないように――」

 それからルーナが再度魔術を使い裏庭を片付け――だったが。途中で気を抜いたのか。火の魔術で一度爆破を起こしたのは――あまり触れなくてもいいかな?さすがにソフィが飛んできたからその後は問題なく片付けれたが――ルーナの魔術はまだ安定はしていない。これからが大変そうだ。

★ ★

『――魔術――だな』

 ルーナが爆発を起こした際。かなり離れたところに黒い影があったが――もちろんそんなことに気が付けるものはおらず。その後黒い影はユーゲントキーファーの方へと風のように消えて行ったのだった。
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