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提案

3-1 ニーナ・クシランダー

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「そろそろ真面目に名前を考えてはいかがでしょうか?」

 ある日の朝食時のこと。いつものように俺が食事の準備をして、みんな朝食となった時のこと。ソフィが唐突にそんな発言をした。
 ちなみに現在食事の場に居るのは、俺、ルーナ、ソフィ。そして――金髪碧眼の少女だ。
 そしてソフィの言っていることはというと、もちろん金髪碧眼の少女のことである。
 なんやかんやといろいろ理由があって――つけて。ともいうのかもしれないが。出会ってからなんやかんやと、ずっと金髪碧眼の少女――と、いう名前。呼び方でそりゃ呼んでいたわけではないが。名前を付けずに今日まで来てしまっていた。というか、付けていいのだろうか?というのが一番だったのだが。どうやらこの金髪碧眼の少女は記憶が飛んでいるみたいで――そのうち思い出すのでは?などなど思っていたこともあり。とにかくだ。名前なく。金髪碧眼の少女はここで過ごしていた。
 まあ町の人は俺のところの子とか勝手に言っていたが――それは今のところはおいておこう。

「――名前って?」

 俺が少し今までのことを思い出していると、ルーナがみんなを見つつつぶやいた――って、理解していないお方が居た。

「――」
「はぁ――ルーナ様は馬鹿でしたね」
「ちょっと!」

 さすがに俺はちょっと固まってしまった。
 なお、ソフィはすぐに突っ込んでいた――って、ルーナよ。マジか。と、俺が心の中で思っていると――。

「彼女の名前ですよ。セルジオ様の彼女の――ふふっ」

 謎な笑みを浮かべつつソフィがそんなことを言い出した。言い出したので――。

「ちょっと!?」
「なっ!?」
「――hai!?」

 その場にいた全員が反応した。
 まず俺が反応。
 次に俺の横でご飯を食べつつ『自分のことだろうな――』ということはわかっていそうな感じで、でも口を挟むことなく様子を見ていた金髪碧眼の少女も反応し。
 ルーナはすっとんきょん?な感じというのか。何やら変な発音?をしつつ叫んだ?ような状態となり。俺の方を見ていた――って、金髪碧眼の少女を見つつ。何とも言えない顔を――って、ルーナ。落ち着け。ソフィの思うつぼになっている。

「セルジオ様の彼女の名前をルーナ様が付ける――うんうん。面白いことになりそうですね」

 すると、ソフィは再度1人だけ楽しんでいる?表情でそんなことを言った。

「ソフィさん!?暴走やめてください」
「楽しいじゃないですか」
「……」

 さすがに俺も止めようとしたが――無理だった。そしてふと隣にいる金髪碧眼の少女を見ると――何やらこちらも困った表情をしており。少し照れたような様子をしていた。
 
「ちょっとちょっとぉぉぉ!どういうこと!?って、なんの話をしてるのよ!」

 すると今度はルーナが叫ぶ――って、待て待て、このままだと室内で魔術発動の可能性が出てくる。

「ルーナ。深呼吸。深呼吸。あとソフィに遊ばれてる」
「なっ!?」

 俺が声をかけると、ルーナはすぐにソフィの方を見て――恥ずかしそうな表情になった。
 もちろんそんなルーナの様子を見たソフィは――ニヤニヤしていたというのは言うまでもないだろう。
 って――何をしていたのだったか?と、俺が思った時。

「お遊びはこれくらいにして――」
「ソフィがいうことじゃないでしょうが!」

 ソフィがポンと手を叩きつつそんなことを言ったので、ルーナが恥ずかしそうにしつつも突っ込んでいた。
 なお、俺もルーナと同じタイミングで、心の中で突っ込んでいたりする。
 
 とまあとにかく、今日の朝食はにぎやかだった。とまとめておこうか。
 今まとめておかないとこの後名前のことに、多分なると思うが。そうなると何の時間だったかわからなくなると思うからな。
 名前なんてそう簡単に決まらないだろうし。

「はいはい。ルーナ様お静かに」
「ソフィがでしょうが!」
「脱がしますよ」
「やめなさい!」
「――あの。ここで揉めないで」

 俺の小さなつぶやきは――2人に聞こえたかは不明だ。
 ちなみの隣にいた金髪碧眼の少女には――聞こえたらしく。少し笑みをこぼしていた。どうやら――今のやり取り金髪碧眼の少女は面白かったらしい。

 と、それから数十秒後のこと。再度ソフィが仕切った。

 パン。
 
 再度となるが手を叩くと――それはそれは綺麗に室内に響き。騒いでいたルーナを静かにさせた。
 
「話が進みませんからね。あまりのんびりしているとこの後の予定が遅れますから」

 いやいや、それをソフィが言うのか――というのは再度俺は思ったが。今回も口には出さず――ルーナは、ぶつぶつ言っているようにも口元を見ると見えたが――何とか我慢した様子。

「ということで、実はすでに名前は決まっているですがね」
「「「へっ?」」」

 とか思っていると、衝撃の発言というのだろうか。いや、そこまで衝撃ではなかった――いやいや、今までが騒がしかったから――と、とにかく。ソフィがそんなことを言い出して、俺とルーナ。金髪碧眼の少女がソフィを同時に見た。

「皆さん。どこを見ているんですか?タイトルに書いてあるでしょ?と」
「「「……」」」

 そしてソフィがと、いう名前を発表――って、待て待てである。
 どこから湧いてきた?あと、タイトルってなんだ?などと俺がいろい頭の中が混乱していると。

「――ねえねえ。タイトルって何?」

 まず俺の隣にいた金髪碧眼の少女が小声で話しかけてきた。

「ちょ、ソフィ!タイトルとか意味わかんないこと言わないでよ。って――ニーナ?」

 そしてルーナはルーナでソフィを問い詰めている――ではないが。確認していた。って、ソフィの行動が今日もぶっ飛んでいて誰もこの場で付いていけている者がいなかった。

 でも――。
 
「皆様が知らないだけで、すでにニーナ様は名前あったんですよ?町の方々にももう広がっているでしょうね。って、私が広げましたし。そろそろ頃合いかな――と」
「「「はい!?」」」

 再度苦笑い?失笑?をしつつソフィがそんなことを言うので――それはそれは混乱を深めた朝食の時間だった。
 名前を決めるということになったはずの金髪碧眼の少女も、突然の発表いうのか。とにかく。かなり混乱している様子だった。
 俺とルーナに関しては――顔を見合わせて、両者首を振るだけだった。
 本当にソフィの唐突な発言というのか。本人すらも何も聞いておらず戸惑う状況だった。
 
 ニーナ・クシランダー。

 ここに命名?と。この場でなったので、それはそれは。理解にしばらく時間を要したのだった。
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