さよならをする前に一回ヤらせて

浅上秀

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本編

9話

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引越しする前日、母は毎年恒例の町内婦人会の温泉旅行で不在だった。
ショウも引っ越す当日に母がいようといなかろうとあまり気にしていなかったが、母が旅行に行くことを少し渋っていた。

「でも毎年行ってるし、一年に一度の楽しみなんだから行って来いよ」

「うん、わかった…」

母はショウに説得されて温泉旅行へと旅立った。

「ショウ、ちょっといいかな?」

母を見送り部屋に戻ろうとしたショウの背中にイツキが声をかける。

「なんだよ」

ショウは振り向きもせずに答えた。

「明日、引っ越しちゃうんだよね」

「あぁ」

「その…大学の合格祝い、まだできてなかったから、せっかくだから今夜どうかな?」

イツキは珍しくショウを誘ったのだ。

「…いいぜ」

ショウもこの日でイツキと二人きりになるのは最後だろうと思った。

「よかった。じゃあ料理とか用意しておくから」

「うん」



その日の夕方、イツキは嬉しそうに部屋にいたショウをリビングに呼び出した。
机の上にはイツキの手料理が所狭しと並んでいた。
毎日、母の手料理しか食べたことがなかったので、ショウにはイツキの料理は新鮮だった。

「ショウ、大学合格と引越しおめでとう」

「どうも」

二人のグラスが軽くぶつかる。
イツキはビールを飲んでいた。
ショウはまだ未成年なのでコーラだ。

「今日、断られるかと思ったよ」

イツキは嬉しそうに、そして結構なピッチでビールを飲んでいく。
ショウは何気に初めてイツキ酒を飲んでいるところを見る。
 
「これ、美味しいから食べてみてよ」

「ん」



お酒が入り、イツキの気がだいぶ緩んできたことをショウは感じた。

「なぁ…俺のことどう思ってんだよ」

突然、ショウがイツキに尋ねる。

「え?」

イツキはグラスから口を離した。

「…うーん、大切な息子かな」

ふんわりとイツキが微笑む。
ショウは何故かその微笑みと言葉に苛立ちを覚えた。

「俺は…俺はお前のこと父親だと思えない」

ショウは箸を置いて立ち上がり、リビングから出ようとした。
イツキは慌てて立ち上がるとショウを追いかけた。

「ま、待ってよ。じゃあ、じゃあどうしたら俺はショウの父親になれる?」

イツキがショウの腕をつかんだ。
ショウはパッと振り向いた。
二人の視線が交わる。

「…こうしたらかな」










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