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番外編
番外編という名のエピローグ
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新人人外生物であるゼオ=マーキス。彼には最近悩みがある。
悩みはゼオを鬱々とさせ、吐き出される溜息は重い。
「あいつ、チンコ触るの、止めてくんねェかなぁ」
…傍から聞けば滑稽な悩みも、彼にとっては真剣な悩みであった。
※
悩みの詳細を語る前に、まずはゼオの今の所在について語らなければならない。
海の端も見えない内陸部。
傭兵たちの稼ぎ場。
戦と戦の待機時間。
渋いビールを片手に、屋外で。
愚痴を聞かせるのは同じ部隊の同僚たち。
海から幽霊船から船長から遥か離れた内陸部で、今日も戦仕事に従事していた。
因みに幽霊船には、もう7か月帰っていない。
※
何があったと言われれば色々あった。
まず贄役を押し付けられて乗ったつもりが50年後に目覚めさせられ、ガチギレの片恋相手に体を人外へ作り変えられた。
_正確には、常世と浮世の間の存在である幽霊船と存在を同期された。
今のゼオは幽霊船に大破あれば死ぬ(幽霊船の核である船長に何かあっても死ぬ)が、個人では死ねない。ゼオが戦場で致命傷を貰うと、幽霊船の船長室の寝台に転移し五体満足となる仕様である。
次に、本質的に自分のものを外に出したがらない船長がゼオを内陸に野放しにしている理由だが…
本当に、色々あった。
前提として、人外の体へゼオが上手く馴染めなかった。幽霊船の感覚が己の体に同期する_船の底板を踏みしめているのに、肌を波が洗う感覚がする。少年の頃ならまだしも、長年の傭兵生活で磨き上げられたゼオの五感の認知は、感じるものと実際に置かれている状況の齟齬が延々と続くことに耐えられなかった。
更に、ゼオ自身の気質の問題があった。
基本ゼオは制限を嫌う。行動力があり、努力もあまり苦にならない。
そして、ゼオの本願は陸地にある。
戦働きで身を立てることは、彼が幼いころに選択した生き方だ。
ノイローゼになりかけたゼオは大いに暴れた。
安寧と静謐を常とする幽霊船は(同期しているゼオの不調の件もあり)荒れに荒れた。
幾度にも渡る船長とゼオの怒号と暴力の飛び交う話し合いは、幾つかの条件付きでゼオに陸地での行動を認めることで決着した。
1つ.幽霊船とゼオの五感同期は可能な限り低く保つ事。
1つ.ゼオは1年の内4か月は幽霊船で過ごす事。
…1つ.性的交渉の相手は互いに限定する事。
最後の一つに、初めゼオは難色を示した。船長は性欲が強い方であるし、自分も戦場の熱を持て余すこともある、この取り決めは互いの不利益ではないかと訴えた。_船長に押し切られた。
話し合いの決着から数週間後、ゼオは船長の紹介状をもって、古馴染みの傭兵団の門戸を叩いた。
昔聞いた「あの傭兵団の団員は人間じゃない」という与太話は本当だったんだな、と思いながら。
※
そして現状、戦場で愚痴る彼の内情は、1か月以内に発生する一時帰宅への憂鬱である。
もともと、始まりの少年時代から再会後のセフレ時代まで、基本ゼオのチンコが船長に触れられたことはなかった。何せ基本は女の代用品の扱いである。男の象徴とも呼ばれるものをワザワザ触るはずもない。中を突かれながら自分で擦って射精、というのがお決まりのパターンだった。
それがちょっとしたピタゴラスイッチ的二転三転の後、彼の船長はゼオ=マーキスに対する態度や扱いを色々変えた。変えなかったこともあるが、変えたところもある。つまり、その変えてしまった事の中に、閨事のことも入っていたというわけである。
始まりは特に変わったことのない常の逢瀬だった。
寝台に引きずり込まれて口吸いし、そろそろ俯せにひっくりされる頃かとタイミングを計っていたら、ムギュッとチンコを触られた。
思わず足が出た。
寝台から蹴落とされた船長はすっかり不機嫌になり、その日はゼオを縛って弄った。
ビックリ、驚いた、何だったんだアレ。
という感想も、すぐに船長のプレイがいつものラフプレイに変わったことで大分頭から逃げて行って、妙な気まぐれはすっかり終わったつもりでいた。
終わったつもりでいたのに、次も船長はゼオのチンコを触ろうとしてきた。
最近では毎回、触ろうとする船長と嫌がるゼオの攻防戦がある。
止めてくんないかなぁ、とゼオは思っている。
愚痴吐きしても何の解決にもならないが、心に溜めていても重いばかりなのでついつい吐き出してしまう。
ところで、さっきから爆笑している団員はそろそろ呼吸困難を起こしそうだが大丈夫だろうか?
仰向けば、今日も空が青い。
集合の喇叭が鳴った。
お仕事の時間だった。
fin
悩みはゼオを鬱々とさせ、吐き出される溜息は重い。
「あいつ、チンコ触るの、止めてくんねェかなぁ」
…傍から聞けば滑稽な悩みも、彼にとっては真剣な悩みであった。
※
悩みの詳細を語る前に、まずはゼオの今の所在について語らなければならない。
海の端も見えない内陸部。
傭兵たちの稼ぎ場。
戦と戦の待機時間。
渋いビールを片手に、屋外で。
愚痴を聞かせるのは同じ部隊の同僚たち。
海から幽霊船から船長から遥か離れた内陸部で、今日も戦仕事に従事していた。
因みに幽霊船には、もう7か月帰っていない。
※
何があったと言われれば色々あった。
まず贄役を押し付けられて乗ったつもりが50年後に目覚めさせられ、ガチギレの片恋相手に体を人外へ作り変えられた。
_正確には、常世と浮世の間の存在である幽霊船と存在を同期された。
今のゼオは幽霊船に大破あれば死ぬ(幽霊船の核である船長に何かあっても死ぬ)が、個人では死ねない。ゼオが戦場で致命傷を貰うと、幽霊船の船長室の寝台に転移し五体満足となる仕様である。
次に、本質的に自分のものを外に出したがらない船長がゼオを内陸に野放しにしている理由だが…
本当に、色々あった。
前提として、人外の体へゼオが上手く馴染めなかった。幽霊船の感覚が己の体に同期する_船の底板を踏みしめているのに、肌を波が洗う感覚がする。少年の頃ならまだしも、長年の傭兵生活で磨き上げられたゼオの五感の認知は、感じるものと実際に置かれている状況の齟齬が延々と続くことに耐えられなかった。
更に、ゼオ自身の気質の問題があった。
基本ゼオは制限を嫌う。行動力があり、努力もあまり苦にならない。
そして、ゼオの本願は陸地にある。
戦働きで身を立てることは、彼が幼いころに選択した生き方だ。
ノイローゼになりかけたゼオは大いに暴れた。
安寧と静謐を常とする幽霊船は(同期しているゼオの不調の件もあり)荒れに荒れた。
幾度にも渡る船長とゼオの怒号と暴力の飛び交う話し合いは、幾つかの条件付きでゼオに陸地での行動を認めることで決着した。
1つ.幽霊船とゼオの五感同期は可能な限り低く保つ事。
1つ.ゼオは1年の内4か月は幽霊船で過ごす事。
…1つ.性的交渉の相手は互いに限定する事。
最後の一つに、初めゼオは難色を示した。船長は性欲が強い方であるし、自分も戦場の熱を持て余すこともある、この取り決めは互いの不利益ではないかと訴えた。_船長に押し切られた。
話し合いの決着から数週間後、ゼオは船長の紹介状をもって、古馴染みの傭兵団の門戸を叩いた。
昔聞いた「あの傭兵団の団員は人間じゃない」という与太話は本当だったんだな、と思いながら。
※
そして現状、戦場で愚痴る彼の内情は、1か月以内に発生する一時帰宅への憂鬱である。
もともと、始まりの少年時代から再会後のセフレ時代まで、基本ゼオのチンコが船長に触れられたことはなかった。何せ基本は女の代用品の扱いである。男の象徴とも呼ばれるものをワザワザ触るはずもない。中を突かれながら自分で擦って射精、というのがお決まりのパターンだった。
それがちょっとしたピタゴラスイッチ的二転三転の後、彼の船長はゼオ=マーキスに対する態度や扱いを色々変えた。変えなかったこともあるが、変えたところもある。つまり、その変えてしまった事の中に、閨事のことも入っていたというわけである。
始まりは特に変わったことのない常の逢瀬だった。
寝台に引きずり込まれて口吸いし、そろそろ俯せにひっくりされる頃かとタイミングを計っていたら、ムギュッとチンコを触られた。
思わず足が出た。
寝台から蹴落とされた船長はすっかり不機嫌になり、その日はゼオを縛って弄った。
ビックリ、驚いた、何だったんだアレ。
という感想も、すぐに船長のプレイがいつものラフプレイに変わったことで大分頭から逃げて行って、妙な気まぐれはすっかり終わったつもりでいた。
終わったつもりでいたのに、次も船長はゼオのチンコを触ろうとしてきた。
最近では毎回、触ろうとする船長と嫌がるゼオの攻防戦がある。
止めてくんないかなぁ、とゼオは思っている。
愚痴吐きしても何の解決にもならないが、心に溜めていても重いばかりなのでついつい吐き出してしまう。
ところで、さっきから爆笑している団員はそろそろ呼吸困難を起こしそうだが大丈夫だろうか?
仰向けば、今日も空が青い。
集合の喇叭が鳴った。
お仕事の時間だった。
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