あなたの願いが叶いました

emi

文字の大きさ
15 / 16

15

しおりを挟む
帰り道。
私は、マザーリーフへと乗り込んだ瞬間に、盛大に泣いた。
気持ちを抑えることなんて、出来なかった。

本当は、彼に涙を見せるつもりなんてなかった。
笑顔で、その限られた時間を過ごしたかったのだ。
それなのに、彼の姿を見た途端に、大泣きして、
おまけに鼻水まで垂らして、彼に笑われたではないか。

でも、彼は、笑いながら鼻水を拭ってくれた。
彼は、彼のままだった。

「最愛の人と離れるのは辛かったであろう。」

ふと、横を見れば、おじいさんが泣いていた。
そうして、徐に、大きなハンカチを取り出すと、
チーンと盛大に鼻をかんだ。
なんだかその音が可笑しくて、思わず笑ってしまった。

ずっと思っていたけれど、このおじいさんは、
神様に近い存在であるにも関わらず、なんだかとても、人間に近いような気がする。
こうやって、痛みを理解しようとしてくれるのは、
優しい心の持ち主だからなのだろう。

神様とか、その類のものは、もっと冷酷なイメージがあった。
人間のような感情なんて、持ち合わせてはいないのだと思っていた。
でも、それは違うのかも知れない。

いつか、このおじいさんが神様になれる日が来たのなら、
きっと、とても優しい神様になるんだろうな。

大きなハンカチをしまうと、おじいさんは、話し始めた。

 「お前は、神を恨んだことがあったな?
何故、彼を生かしてくれなかったのか、彼を返せと、酷く、神を恨んだな?
でも、人間の生死は、神にはどうも出来んのじゃよ。
それは、神が決めることではない。
・・・
試練という言葉があるじゃろ?
人間は、誰しも、試練を乗り越えねばならないのだ。
でもそれは、人間を苦しめるためにあるのとは違うのじゃよ。
大きな夢を叶えるためには、
大きな辛いことを糧にしなければならないこともあるのじゃ。
お前はまだ、試練を乗り越えている最中じゃ。
いつかそれを乗り越えた時に、わしの言っている意味が分かるじゃろう。
自分の思った通りに、真っ直ぐ、歩んでいくのじゃぞ?」

 私を真っ直ぐに捕らえた、ブルーグリーンの瞳は、
深く、とても優しい色をしていた。

おじいさんの話を黙って聞きながら、私は、ただ頷くことしか出来なかった。
ずっと先になるかも知れないけれど、
いつか、私にも理解出来る日が、きっと来るのだろう。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

真実の愛ならこれくらいできますわよね?

かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの でもそれは裏切られてしまったわ・・・ 夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。 ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...