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新記録に挑戦

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「見ろ、結婚祝いが届いたぞ」

その言葉に恨めしい顔をしている2人。
幼なじみでも学園の生徒でもない。

初対面は、昨日の夜中…10時くらいの話で、同じ部屋に押し込まれて2分後。

「婚約&結婚おめでとうございます」

力尽くで、ドアを壊してまで出た際にメイドに言われた言葉だ。
しかも、

「夫婦での共同行為。ああ、あこがれちゃう」

という、夢見な言葉。

その足で、なぜか両方の親戚がいた応接間にいくと…

「いやーめでたいな」
「ええ、2分でしたな」
「世界最速でしょうね」
「いやいや、2分は長すぎるでしょう。やはり瞬間ではないと」
「既成事実を作り出すのですから、瞬間は難しいかと」

「ちょっと、こいつ誰よ」
「おまえの婿だ」
「知らないわよ!」
「そりゃそうだ。昨日、隣国から引っ越してきたからな」
「2人は知っている間のようだけど?」
「同級生だ」

婿は、放心状態で役にたたない。

「無効よ、だいたい書類なんて出していないでしょ!」
「それは、大丈夫だ。婚約届に時間指定をしておいた」
「そんなの聞いたことないわ」
「何事も前例というものがある。前例がなければ作ってしまえばいい」
「私たちの自筆が必要でしょ」
「ああ、別の人におまえの字体を似て書いてもらった」
「証人は…」
「引っ越し業者にお願いしたぞ。契約書のサインのついでに」

「…」

こうして、全く知らない人と結婚してしまい、事の次第を知っていた親戚が来訪していたのは、結婚祝いを持ってきたためだった。

「離婚はできないのかしら…」

「おお、そっちの最短記録を忘れていた。離婚した後に、即座に結婚。また離婚するとか、どうか?」

「遊ばないでください!」

その後、なんだかなんだ言っても、夫婦としての最長記録を目指したのは、親への反発だったのかも知れない。
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