遊ぶつもりでログインしたら、融合異世界という現実だった。

夜空のかけら

文字の大きさ
56 / 175

第55話 幼い時の思い出

しおりを挟む
小学生の時の話。

 昔は、関東地方の山だらけの場所で暮らしていた。
 近所は全部親戚という、今考えれば特異な環境だったと思う。

 ただ、同い年の子は、私ともう1人の女の子しかいなかった。
 その子は、小学校6年生の時に家族とともに急に引っ越していった…と思っていた。

 違うと気がついたのは、中学の卒業式の時だ。
 たまたま親戚一同でお祝いをしていた時に、ぽろっと出てしまったのを聞いてしまった。
 
    “神隠しに遭った”

女の子とその家族は、引っ越したと言っていたが実際は違っていたのだった。

幼なじみで一緒に成長していくと思っていた相手がいなくなった。
最初はかなり落ち込んだ。
しかし、今は昔ほど落ち込まず、それでいて達観している訳でもなく、心に少しの違和感を感じながら高校3年間を地元で過ごし、就職にあたって都会に出た。

就職先は、技術を生かすことができる特殊な会社だった。
そこで20年も勤務することになるとは思わなかった。

そして、今。
40歳になり、少しは趣味を持とうとして初めてのゲームがこれだった。

政府系娯楽施設に設置しているVR機器。
身体と脳などの中枢器官を保護するための装置。

ゲームのつもりで入った場所が現実なんて考えられない。

そうゲームだ。
遊びだ。
昔、似たような遊びをした感じがする。

地元に住んでいる知り合いの真似をして、他の知り合いを騙すという遊び。
ほとんどの場合、見破られるけれど、たまには間違えられるのが楽しかった。

いいや、本当はあの子と遊ぶこと自体が楽しかった。

楽しかった時間は、遙か彼方に行ってしまい、今は何もない。
自宅は寝るだけ、昼間は仕事。
たまの休日は、寝だめな感じで趣味も特技もない。

なぜ、今そんなことを思い出したかと言えば、望むものを見ることができる窓があったから。

幼なじみで神隠しにあった女の子のことが知りたくなってしまった。
今、どこで何をしているのか。

見るだけでもできればいいなと考えていた。
再会は無理でも、それだけなら、望むものとは少し違うかもしれないけれど。

そんな想いが窓に出たと想っていたら、なぜかトーコが映し出された。


後ろに立っていたトーコを見る。

「くすっ」

トーコが小さく笑う。
何か秘めているものがあるのか?

「お兄ちゃん。思い出した?」

トーコがそんな言葉を掛けてくる。

そう、昔はそう呼ばれていた。
同い年なのに、女の子に「お兄ちゃん」と。

「トーコ?」

その名前は、ゲーム開始直後に会った女性の名前のはずだった。
いきなり結婚。
そして神族。

なんの縁もゆかりもないはずだった。

「私の昔の名前はね。清水 塔子。お兄ちゃんの幼なじみで神隠しにあったと言われていた女の子」

びっくりはしなかった。
なんとなく、そんな感じはしていた。
昔の雰囲気に似ていたからかもしれない。

「私の家族はね、神格持ちだったの。まぁ、地元では神主もしていたし。でも、私はね、11歳の時に神格が高格してしまって、神族になってしまった。奉る立場から奉られる立場に変わってしまった。だから、周囲に迷惑を掛けないために、家族全員で神隠しという名の神格域への引っ越しをしたの」
「そうだったのか」

だから窓には、トーコが写ったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護
ファンタジー
主人公は持水薫、女30歳、独身。趣味はあらゆる物質の立体構造を調べ眺めること、構造解析研究者であったが、地震で後輩を庇い命を落とす。魂となった彼女は女神と出会い、話をした結果、後輩を助けたこともあってスキル2つを持ってすぐに転生することになった。転生先は、地球からはるか遠く離れた惑星ガーランド、エルディア王国のある貴族の娘であった。前世の記憶を持ったまま、持水薫改めシャーロット・エルバランは誕生した。転生の際に選んだスキルは『構造解析』と『構造編集』。2つのスキルと持ち前の知能の高さを生かし、順調な異世界生活を送っていたが、とある女の子と出会った事で、人生が激変することになる。 果たして、シャーロットは新たな人生を生き抜くことが出来るのだろうか? ………………… 7歳序盤まではほのぼのとした話が続きますが、7歳中盤から未開の地へ転移されます。転移以降、物語はスローペースで進んでいきます。読者によっては、早くこの先を知りたいのに、話が進まないよと思う方もおられるかもしれません。のんびりした気持ちで読んで頂けると嬉しいです。 ………………… 主人公シャーロットは、チートスキルを持っていますが、最弱スタートです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

処理中です...