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第1章 はじまり

1 幼稚園生 ~この世界って…

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+++広大な おかしな世界+++ 

 この世界は、とある時に、どうしようもない理由で おかしな世界 になってしまった。
 この世界は、今、産声を上げたとも言える。

 ただし、かなり おかしい世界 であることは確かなようだ。


***とある幼稚園

  園児の会話

 「あくやくれいじょー、あなたのあくじは、みんなわかっているのよー」
 「あら、なんのことかわからないわー、なにかのかんちがいじゃなくってー」
 「きみがそんなひとだとはおもわなかった。こんやくをはきする。はきだぞ。いいなー」
 「こんやくはきだなんて、ひどいひとねー、それじゃあ、みーちゃんとこんやくするー」
 「ちょっとまて、みーちゃんとはぼくがこんやくするんだー」
 「えー、わたしもみーちゃんがいいー」


 うーん・・
 みーちゃん人気が高いな。
 自慢の娘なだけはある。
 まぁ、将来の奥さんなんだけど。
 しかし、なぜ、みーちゃんなんだろう。名前は、栞(しおり)なんだけど。

 ひとしきり騒いだ後は、お昼寝だ。
 いかに、様々なことを知っていても、身体がそれについていかないらしい。(急成長は禁止)

 お昼寝から起きると…

 また始まった。
 何が始まったって?
 それはね。
 婚約破棄という名のお芝居。

 最近の子供は、どこでそんなことを覚えてくるのやら。
 母親だけではなく、子育てに父親(俺)も参加するようになって気が付いた。意外と、子供は周りを見ている。その見たものをそのままお芝居という名のおままごとに持ち込んでいることにびっくりしたものだ。
 最初のうちは。

 おままごとと言えば、新婚生活や生活の一部を再現したものが多いと思い込んでいた。
 しかし、時代は変わったらしい。
 ドロドロの愛憎劇や勧善懲悪の時代劇、怪獣などを倒すヒーローもの、そして婚約破棄だ。おままごとだけではない。お友達との会話の中にも、時々不審な言葉が。

セレブ
愛人こいびと
越後屋おいしいひと
実はお奉行様じさくじえん
宇宙怪獣げてものずき
遠い星から来た強い人
異世界のヒロイン
悪役令嬢おとめゲーム

 よくもまぁ、どこから仕入れてきたのか分からない内容。
 まさか、両親の話を聞いているわけでもないし、そんな小説まだ読めないだろうし。
 テレビ関係が多いから、大方母親や兄妹が見ていたテレビからの知識だろうけど。

 兄妹からの情報は確かに多いけど、相手はまだ小学校にも行っていない、幼稚園生なはずなのに。
 もしかして、前世の記憶が?
 いやいや、やっぱり魔法でしょう…
 現実逃避をしても始まらない。

 実際のところ、この世界はごちゃまぜなんだろう。
 原因は分かっているが、それを直す手段がない。

 前世の記憶を持っている人は珍しくない。
 それどころか、これまでの前世を覚えていたりして、出生直後に前世にどこで生まれ、兄弟姉妹・両親親戚を話し始める赤ちゃんがいたり、駅前広場で突然、前世の記憶がある・ここは私の世界だぁ~、主人公に従うのは当然だ…と世迷い事を言い始めて、武装隊(警察官と自衛官の中間的役割。もちろん、消魔法ちんせいか所持者)が、速やかに連行していたり。

 魔法も再現しはじめた時は驚いた。
 まぁ、これは俺もだから納得なんだけど。
 当初は、俺だけかと思った。
 前世でいろいろやらかしていた俺は、他の人よりも記憶も魔力も一番多い。(2番目は、俺の奥さん)
 現役でもそうなんだから、どれだけとんでもないのか、分かるというもの。ただ、原因に対抗する方法はあるけど、それじゃあ面白くないという理由で、方法はないと国際機関くじょうしょりかかりのお偉方には言って、そのまま放置しているだけだけど。
 輪廻転生とかなんて生易しい。神様はもちろん悪魔だっていそうだ。(というか、いる。)
 勇者もいるだろし、気違い科学者マッドサイエンティストもいるだろう、殺人鬼や快楽犯とかも。
ニュース専用チャンネルは、伝えるべき情報が多すぎることもあり、100以上もある。他人事なのか、面白いバラエティーものもあるけど。

 そういえば、この前やっていたのが、火魔法の達人自称:しろうとという人が、火山を止めて見せると言って、火山からの水蒸気で倒れたという話。実際は高温(100℃)の水蒸気だった。火魔法なので、水蒸気には、魔法防御マギシールドが効かなかったと、ニュースでは言っていた。
 普通の人は、そんなこと・・・火山をどうこうするということはしないのだけど。

 まぁ、俺みたいな育児をしている父親にとっては、ニュースの1コマに過ぎない。
 重要なのは、おままごとをしているわが娘のことだ。息子もいるけど、あれは…このまえの私じゃないか?
 親父が私だと知っていれば、あんな表情とかはしない。
 自分の子供が自分の前世。年功序列は?過去とか未来とかは?

 まぁ、いい。
 娘と言ったが、正確には幼女だ…違う。養女だ。
 元々は、俺ら夫婦の親友夫婦に生まれた女の子だったが、局地的な時空震じくうしんに巻き込まれ、当時1歳の娘を私のところへ転送するのがやっとだったらしい。
 気が付いたときには、娘は私のところへ。親友は消えていた。

 輪廻転生うまれかわりは、どれくらいの年間隔や頻度、どこに生まれ変わるか、”原則的には”分からない。前世の記憶がよみがえる年齢もみんなばらばらなので、この辺の話は、両親が時期を見計らって、子供に伝えるとなっている。

 これは、親になることが確定した段階で、行政機関にて行う育児教育の講義内容の1つである。
 親になるための心構えから支援で利用できる行政機関やそのほかの施設。個人的な支援を受けたい人の場合の支援者や支援団体。しつけやその後の学習方針、教育機関などなど、多岐に渡っている。その中に、輪廻転生や魔法、不思議現象。実態のない存在などなどのいわゆるオカルト?な情報もある。
出生後の出生届は、即座に行政機関に届く。別にこちらが何かを届け出する必要はない。
 まぁ、名前くらいは届けておかないと、呼ばれ方がすごいことになる。
 生年月日&生まれた場所&ランダムコード。
 名前じゃない。絶対違う。しかも、これで呼ばれたら、トラウマ間違いなし。一応、2週間くらいで、出生届を受理した行政機関から照会が来るらしいけど。

 親が行政機関からの報告待ちになっているのは、これ以外は、前世と不可思議能力の届け出だ。
 前世については、どの程度分かっているか、分からない部分が多いので、行政機関から認証されている過去読みができる者(通称名は、ローダー)が、見て判定する(厳密には、少し違うけど)。
 ローダーは、人数が少なく、かつ、1人で1人の情報しか引き出せないので、俺の存在はかなり重宝されているらしい。奥さんも。一応、奥さんも俺も、これでも教師なんだ。(将来は、息子と娘もなるだろう)
 今は、育児休業中だけど。

 そうそう、娘の話だ。
 自慢の娘だが…息子の嫁だ。
 まぁ、そのことに気が付いたのは、娘が幼稚園に入った時に笑った顔を見て思い出した。息子もそれを見て、好きになった。
 いや、前世の自分のことなんだけど…2世代続けてかよ。
 今の奥さんにそんなことを言ったら、なぜか、あの親友たちの子供なんだから、当然…と笑っていた。

 俺の奥さん。
 ずっと一緒だ。
 何がだって?
 前世も、その前も、そのずっと前も同じ。
 そう、自慢の娘とは言ったけど、目の前にいる奥さんの過去が、その自慢の娘なんだ。
 娘の将来が、今の奥さん。どうりで、似ていると思ったよ。いや、顔や恰好が似ているのではなくて、雰囲気が。いつもどこかで出会って結婚するのだけど、出会う経緯が波乱万丈なのは、2人の資質なんだろうか。敵同士が多いかな。

 勇者(奥さん)VS魔王(俺)
 刑事(奥さん)VS世界的な盗人(俺)
 地域のおばちゃん・正義感丸出しVS周囲を伺い留守宅を覗く・不審者そのもの

 だんだん、俺の方が情けなくなってくるのはなぜだろう。

 今回は探さないぞ。外にも出ないぞ。こうすれば、あいつ(奥さん)には、会わない…と思っていた時もありました。出会っちゃうですよ。これが。
 事故で運ばれた先にいた女医とかだったり、救急救命士だったり、見た目は男なのに、隠していたということだったり。
 諦めるというか、最近は探したりするのが楽しくなっていたのに、何この奥さん。

 恐ろしいほど聞き分けがいい、家族と見られることが多い。似ているとも言われる。
 近所の人はおろか、他の親族にも言っていない。このすごい状況は。(俺と奥さん)✕2という、びっくり家族のことは。

 少し前のテレビでは、貧しいながらも家族の人数が多い…具体的には子供が多い…のは、よくテレビで見ていた。
 しかし、今、家族という範囲自体が怪しくなっている。原因は、重婚にある。
 出生率の怪しさから、婚姻関係を整理した結果、重婚禁止が廃止され、極論を言えば妻100人に夫1人でもよいという形になった。
 しかも、双方ともに重婚可能なため、家族という意味が変わってしまった。
 夫の妻の夫は、家族なのか?
 複雑なこと、この上ないうえの、世界異常。手が付けられない事態のはずなんだが、案外なんとかなってしまっている。

 今、この状況。
 俺と奥さん、息子(前世の俺)、娘(前世の奥さん)
 過去からの記憶で、息子が何をするのかがある程度分かるけれど、こんな風になってしまったこの世界でも、毎日が楽しいです。
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