約束の続き

夜空のかけら

文字の大きさ
42 / 48
第10章 大事な記憶と魔法のお話

101 侮蔑の言葉

しおりを挟む
神官たちは、予想外の事態に混乱していた。 

 「おかしいぞ。回復しない。それどころか、呼吸が少なくなってる。このままだと死ぬぞ。」
 「前回までは、全回復していたはずだ。記録を洗いなおせ。まだ、上限まで達していない。このまま死なせると、俺たちが護符にされてしまう。」

 薄く、薄くなっていた私が消えた。
しかし、何か巨大なものが近くにいる。それが、私が消えるのを阻止しているようだ。
 
 『おいおい、もう終わりかよ。つまらねぇな~。もう一度チャンスをあげよう。こんどこそ、楽しませてくれ、引っ掻き回してくれるように、いろいろサービスもするから、せいぜい踊って見せろ。』

 そんな声が聞こえた。
 それで、この世界に来た時に、最初に知覚した巨大な意識の言葉を思い出した。

 ”お前の記憶と力を封印した。
 これから、お前は俺の世界で生活する。
 せいぜい、笑わせてくれ。”

 あの言葉は、私に投げられた侮蔑の言葉だったのだと。

 次の段階で、私という存在が再構成され、あの世界に墜とされるのが分かった。以前とは違う場所なのは確実だった。
 しかし、墜とされる直前に気が付いた。

 ”記憶と力を封印”

 という部分。

 私は、何か大事なことを忘れているし、何か大事な思いを忘れているということ。
 世界のある場所に強制移動させられ、前と同じような微睡が私を包む。
 以前とは違う何かが付与されるのを感じる。
 おそらくこれがサービスなんだろうけど、まだどんなサービスなのかが分からない。

 そして、何かのパスがどこかと繋がった感じがした。
 でも、それは繋がっただけ。
 物凄く細く、無理をすれば切れてしまうくらいの儚さ。
 でも、繋がった先が尋常な状態ではないくらい、今の私でも分かる。

 あの侮辱の言葉を投げた存在は、これに気が付いていないのかもしれない。

 そうやって、新たな命を与えられ、この世界に降りた。
 
 生まれた場所は、神殿はもちろん教会もない辺境の村だった。
 村民は、たったの20人しかいない。
 子供は、私1人。
 しかも、10年ぶりだったらしい。

 その中で、村人全員で時に厳しく、時に優しく、育てられていく。
 
 私も頑張った。
 生まれて早々、私には護符として命と寿命を吸い取られた時の記憶があった。
 私、赤ちゃんとしても振る舞える反面、最後の年齢…とは言っても急速に成長する前の9年間の情報や経験から、護符と神力がどういうものか分かっているし、サービスの1つだろう。魔力というものがあることを知っていた。
 簡単に増加する方法も。
 
 赤ちゃんは、寝るのが仕事…ということを聞いたことがある。
 だから、少ない魔力を急増させるために、枯渇させるのを繰り返し繰り返し行い、魔力が0になっては、意識を失っていた。
 両親を始めとする村民は、

 「この子はよく眠る。きっと丈夫に育つに違いない。」

 と思っていたようだけど。

 そして、1歳を迎える時、私の魔力は3桁を突破した。

 普通、最初の魔力測定では、魔力の有無しか出ない。
 しかも、その量の高低は測定できない機器を使うため、魔力が一般の人に比べて格段に多くても分からない。普通は、5歳でも100を超えることは滅多にない。
 私は1歳で3桁…つまり1,000の大台を超えたのは、あの存在が言ったサービスの1つ。、

  魔力強制回収プログラム

 これは、私が気絶すると、魔力回復中に自然中にある魔力を一緒に取り込むことで、魔力を増強するものだった。
 いわば、魔法の使いすぎで、気絶すれば気絶するほど強くなる。
 こうして、驚くほどのスピードで魔力が高くなっていった。

***
 みんなで、わいわいがやがや、うるさく向かう先”引導”を渡すため、私にはよく分からないまま箱庭を誘導していく。
 ナビゲーターは、黒龍だ。

 その時、微弱なパスを捉えた。
 本体との間に、細い細い線のようなものが出来ていた。

 黒龍が

 「ほう、転生時に樹形図に取り込み阻害をし忘れたな。他の自分と共鳴した結果、大本である本体との間にパスリンクが生じたらしい。」

 「樹形図ですか。」

 「全ての魂の根幹。輪廻転生は、樹形図を使わないと難しいからな。最初の初期化は、そっちに行かない様に中心核を封じて周囲に特定要素を貼りつけたのだろう。」

 赤龍

 「毎回、お決まりのパターンですね。今回も例外なく…という事ですね」

 白龍

 「これこれこれ、これが私が好きなんだ~、うっしっし。」

 さらに盛り上がっているんです。
 目的、覚えている?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...