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婚約破棄は、王位継承への近道

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「俺は、真の愛に目覚めた。マリエが入ればそれ以外はいらない。ローズマリー貴様との婚約は破棄する」

この国の王子、アーサー王子は公爵令嬢のローズマリーと幼い時から婚約関係にあったが、卒業式を乗っ取った際についでのように婚約破棄を宣言した。

「アーサー王子。私との婚約を破棄するということは、王子から廃嫡されてもいいと言うことですよ。よろしいのですか」
「脅しているようだが、そんなことにはならない。私以外に王子はいない。つまり将来は国王になることが約束されているのだ」

さっき、マリエ以外はいらないと言っておきながら、国王になろうとする。
矛盾していると思うが、彼は気がつかない模様だ。

「しかし、マリエはどこに行ったのだろうか。さっきまで隣にいたのに。婚約破棄をしたその場で、マリエとの婚約を発表しようと思ったのに」

「本当に婚約を破棄するのですね」
「くどい、婚約は破棄。決定だ」
「残念です」

そうは言ったが全然残念そうに見えない。
口元は、手に持った扇子が隠している。
その口元は笑っているように見えなくもない。

その後、マリエは姿を消してしまった。
卒業式にも戻ってこなかっただけではなく、寄宿舎寮にも戻ってこなかった。
忽然とその姿が見えなくなってしまった。

王子は、自分が動かせる取巻きを捜索に当たらせたが一向に見つからなかった。

その後、現国王は、卒業式の騒動を聞き、婚約破棄を了承する代わりに王子を廃嫡した。
後継者には、ローズマリー公爵令嬢が指名された。
将来は女王だ。

「これで思い通り」

ローズマリーはほくそ笑む。

「苦労しました、あのバカを乗せるのは」
「その甲斐はあったわよ」

始めから、王子を浮気させて婚約破棄。
婚約破棄からの廃嫡で、王位継承権第2位の私が将来の王になることを思っていたのだ。

「マリエをいつまでも探しているがいい。絶対見つからない場所にいるのだから」
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