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練習大事

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「公爵令嬢クアリタ、貴様は私の愛するエリーを虐めた。よって、婚約破棄とする。新しい婚約者はエリーだ」
「…」
「どうだ?」
「どうだと言われても困ります。それにどういう風に虐めたかの部分がなくて、説得力に欠けます」
「さすが、クアリタ。的確な指摘だ」
「それに殿下一人というのも押しに欠けます。側近がいるのですから協力をしてもらったら如何ですか?」
「あいつらはダメだ。エリーは王妃には相応しくない。クアリタが適任だからと言って協力どころか説得をしてくる始末だ」
「国王陛下にはお話をしたのでしたよね」
「父もダメだ。婚約破棄したいと言ったら、激怒された。おまけに仕事も押しつけられた。側妃3人いるのになぜ私はダメなのか」
「エリーさんを側妃にするのはダメなのですか?たぶん、国王陛下は側妃にするならいいと言うことかもしれませんよ」
「ダメだ。王妃はエリーだ、側妃など受け付けん」
「本番まで時間がないのですが、本当に決行するつもりですか。国王陛下に否定されたら、先がありませんよ」
「…仕方が無い、次回のチャンスを待とう。確実に婚約破棄をしなければならないからな」
「次…ですか」
「それまで頼むぞクアリタ」

結局のところ、何回かチャンスはあった。
予行練習もやった。
しかし、周囲の賛同を得られるはずもなく、次のチャンス、次のチャンスとやっているうちに面倒くさくなったのだろう。
もういいやとなってしまい、王子はクアリタと結婚し、エリーとは自然消滅していた。

「なぜあんなに練習をしていたのだろうな」
「若かったからじゃないですか?」
「今でも若いが…、まぁ良い。これが最善だったということだな」
「皆さんの思ったとおりになりました」
「そうだな…。クアリタは良かったのか」
「私は王子のこと、好きですよ」
「そ、そうか」

なぜか照れている王子もかわいい。
私の気持ちは前から同じ、気がついていなかったようだけれど王子が望むのなら、それを叶えてあげようと思っていた。
結果は、私の考えた通りになったけれど。
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