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第8話 お婆ちゃん

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世界樹から神の間に帰ってきたら、神の間の前に怖い人物が立っていた。
私の元上司、この町ではお婆ちゃんと呼ばれる人物だ。
世界樹から神の間へ行く通路が開いている時は外から見える。
白い不透明の筒状のものが空に向って伸びているのが分かるからだ。
きっとそれを見て、神の間まで来たのね。

美春君は今どこにいるのかしら。
げっ、神の間の外に出ちゃっているわ。
そういえば、神の間にはトイレなんてものは無かったわね。
作っておけば良かった。

「ともえ。何をしている」

ひー

「ご無沙汰しています。美春君と今後の事について話をしていました」

こういう時は隠すのではなくて、少しの真実多くのウソを言うといいと経験が言っている。
今の所ウソは言っていない。

「今後のことじゃと?」
「はい、美春君は朝日家だけではなく、今後神官の研修も行わなければなりません。そのため世界とはどういう風になっているかを実地で教えようと思いまして」
「ふむ。少し早いような気もするが、世界改変なんてことをしていない限りにおいては有用か」

鋭い。

「世界改変なんてとんでもない。やるならまだ動いていない世界をいじりますよ」
「…ほう、ならしばらくは様子を見させてもらおうか」
「まだ始めたばかりですので、ほとんど何もできていません」
「分かった。時期を見て内容を確認させてもらう」
「分かりました。その時が来たらお呼びします」
「うむ」

ひー、怖いよー
今までやってしまった世界を操作前にリセットして、真っ白な世界を用意して植え付けておこう。
いやいや、リセット前にコピーをしておいて、どういう風に変化したかを見るのもいいなぁ。

そんなことを考えていたら、いつの間にかお婆ちゃんは神の間から遠く離れた場所に移動していた。
そして

「ともえさん?」

美春君が戻ってきていた。

「はい!あ、」

ちょっとびっくりしちゃったけれど、ないないで大丈夫だった。

「また、続きから始めましょうか」
「うん」

ああ、素直な美春君に救われる。

いや、悪巧みをしている私が問題なんだろうけど。

「次は何をしようかしらね」
「レベルがいい」
「レベル?」

経験が増すとレベルは上がる。
他に何か考えることがあったかしら?
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