異世界転移―ソルジャーズオンライン

山波斬破

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傭兵たちのいない森の中

王都へ向けて―初戦闘

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 私はダグラスさんに御者をしてもらいながら、辺りを警戒していました。草叢の獣道や足跡の図や、実際に動物のフンなどをカゲロウに見せてもらいながら勉強しました。ゲームとはいえ臭いなども現実のようなたまらないものでしたよ。なんてものを女の子に教えるんだ! なんてイオリが叱責していましたが、あれは楽しんでいる表情かおでした。ギルティですね。

 どうやら、モンスターもいるようです。近くに拠点があるのでしょう。人のような足跡ですが、違います。勘というヤツです。たぶんゴブリンでしょう。ゴブリンとは違い、亜人のニコブリという人種もいますが、これはゴブリンです。発情期ですね、よだれのようなネバネバが辺りに散らばっています。人間の女の人を捕まえに探し回った跡があります。ゴブリンは雌が妊娠しにくいので、人間を苗床にする習性がありますからね。駆除しないと大変です。

「あの、ゴブリンがたくさん近くにいるみたいです。女の人は馬車の中から顔を出さないでください」

 私がそう言うと、護衛の旅人―冒険者―がギョッとしています。あれ? 私の間違いですかね? 実践は初めてなので、自信はありませんし。

「どうしてわかるんだい?」

 あ、ポーションをあげた女性ですね。護衛についていてくれたんですね。えーと、さっき思った事を指を指しながら説明してみました。

「へぇー、あんたすごいんだね。万能じゃないかい」

 他の護衛の旅人の方もしきりに首肯くばかりで反論はありませんでした。先生が良かったから、このくらいはわかりますよ。カゲロウは一流の盗賊ですからね。

「しかし、何匹いるかだ。厄介だね」

「たぶん、雄だけなら20匹くらいですよ。足跡の大きさや形の違いでわかります。勘ですけど」

「20匹もいるのかい! 厄介だね。警戒を続けて頼むよ」

「はい。任せてください」

 そうたたないうちに、ゴブリンの耳障りな哭き声が届いてきました。どうやら、こちらに気づいた様子です。ギギッと哭いています。女の人たちは、ダグラスさんの馬車の中で震え上がっています。お互いに抱き合いながら、大丈夫、大丈夫と繰り返しています。

 私は使える武器をダグラスさんの許可をもらい、使うことにしました。先ずは弓術で数を減らさなくては。私は姿勢を正して弓を引き絞ります。フッと息を吐く瞬間に放ちました。1匹が頭を撃たれて死んだようです。息を止めたら震えてしまうし、息を吸い込む瞬間だと胸の動きでブレるらしいです。カオルはそう言っていましたけど、実際どうなのでしょうか?

「よしっ!」

 私は調子づいて、5匹までを矢で射ぬきました。

 直ぐ様、私は軽い片手剣を手にゴブリンの群がる場所に一直線です。ゆたんっと腕の力を使わずに足の踏ん張りと上半身にかけての連動に任せて斬る瞬間に曳くように斬りました。

「疾っ!」

そのまま、近くにいたゴブリンも斬るためにステップで右に移動しながら下からの切り上げで三角を描くような斬影をひきます。トライスラッシュです。イオリが教えてくれた最初の技です。上手く2匹を巻き込めました!

 どうやら、ゴブリンはすべて倒したようです。なかなかにスリリングな体験でした。血しぶきとか、かえり血とかで汚れてしまいました。着替えがありません。どうしましょう?

「すごいな、お嬢ちゃん。まるで本物の傭兵みたいだったよ」

 えへへ、イオリを褒めてくれているようで照れます。すごいですよねイオリ流なんて流派が掲示板に上がっていましたから。あの時も誇らしかったです。

「さ、着替えはあるからね。報酬も後から国の金で出るだろうさ。ハンター協会なんてのが出来る噂もあるからな。ハンターとして登録してもいいかもしれないな」

 私は戦闘の高揚を抑えながら、フゥと息を吐きました。ダグラスさんの話も頭に入ってきませんが返事はしなくては、チカゲが言っていました。人の心を掴むにはまず言葉を使いなさいと。

「はい。そうですね」

「そろそろ王都につくからな。ほら、見えてきたぞ」

 城壁が、見えてきました。きっと……みんないますよね。待っててください。今帰りますから。
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