魔人狂想曲

山波斬破

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物語が好きな少年

大衆食堂タンタラ

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 少年が言う食事場は大衆食堂であった。酒を飲んだり煙草を嗜む物が集まるテーブルと、食事と水などを嗜むテーブルに分かれている。

「こっちだよ」

 そのどれでもなく、少年は店のカウンターの裏へ少女を案内した。そこでは、禿頭の大男が料理に勤しんでいるのが見えた。見た目に似合わず細やかで素早い動きで料理を仕上げている。

「タンタラさん。新しいお客さん連れてきたよ」

 ギロリ、と睨みつけるように一瞥しただけでタンタラと呼ばれた禿頭は、料理に戻りボソリと呟くように「了解」と告げた。

「あら、ヒエンくん。いらっしゃい。その子は?」

 恰幅のいい中年の女性が、ほほえみながら少年――ヒエン――に声をかけた。どこかうずうずしているような様子だ。

「ナラおばさん。この子が、お腹空いてるみたいで。少し多目にお願いします」

「あらあら、可愛らしい子じゃないか。わかったよ。いつもの場所に連れていってあげなさい」

 ナラは、「ほらほら行った行った」とヒエンの背を押した。

「ありがとう。待ってるね。行こうか」

 ヒエンは、彼女の手を握り厨房から続く扉に手をかけて開ける。

「わあぁ」

 少女は目を輝かせて、その先を見て小さな歓声をもらした。

 そこには、色とりどりの花がたくさん広がっていた。
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