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9.家令視点
ソレイクス前伯爵は領主としての務めをしっかりと果たしていて、貴族らしい方だった。けれど、息子は違うようだ。
ソレイクス前伯爵の急逝後、跡を継ぐことになったギデオン様は領地の事に興味が無かった。私の報告や説明を聞くのを面倒くさがり、差し出された書類にサインだけするような方だった。
それでも、ルピナス奥様が存命中はまだ仕事をしていたと思う。
奥様は原因不明の病で徐々に床に臥せることが多くなりやがて亡くなった。
私は密かに毒殺を疑っていた。それほど奥様の体調の悪化は不自然で……。
奥様が亡くなって、喪も明けないうちにセリーナ様が屋敷に住むようになった。
古くからいた使用人は皆が反発しクビになった。
そして、シャルロッテお嬢様を使用人のように扱い、虐待が始まった。シャルロッテお嬢様も初めは健気に耐えていたが、自分を庇う使用人が鞭打ちされるのを見せられているうちに徐々に心を閉ざしてしまった。
シャルロッテお嬢様が心を壊すきっかけになったのは、侍女のミアが、お嬢様を庇ったことで熱い湯を掛けられ頬に大きな火傷を負った事。ミアはその事が原因で恋人と別れた。そしてミアは屋敷を辞めてしまった。
よく気のきく、愛嬌のある女性だったのに。
☆
「奥様、伯爵家にはそれほどの余剰金はございません。ドレスの購入も暫く控えていただけますか?」
「まあ!わたくし、伯爵夫人ですのよ?安物のドレスなんて着られないわ!」
「はあ、……それでは家具や食器類の新調は減らせませんか?奥様の部屋の改修もありますし……。」
「減らすなんてとんでもないっ!!前の奥様の使用した部屋に住むなんてこれ以上耐えられませんわ。家具も食器も、彼女の気配が残るものは全て取り替えてちょうだい!!」
旦那様は毒花たちをソレイクス伯爵家に迎え入れてしまった。もうこの家は終わりだ。
☆
自分の思うように動かない私は新しい奥様にクビを言い渡された。
シャルロッテお嬢様のことが気がかりだったが、もう伯爵邸に入ることさえ出来ない。
そんな私の元に、サンチェスカ侯爵家からの使者が訪ねてきた。
シャルロッテ様の身を、サンチェスカ侯爵家のアルヴィン様が保護したという話だった。
彼はソレイクス伯爵家で何が起こったか調べているらしい。
「私も協力させて貰えませんか?そして探して欲しい女性がいるのです。」
「そうですか、ご協力いただけるとありがたいです。逃げられないように確固たる証拠を集めておきたかったんです。で、その探して欲しい女性とは誰ですか?」
「長くシャルロッテお嬢様にお仕えしていたミアという女性です。顔に火傷を負って姿を消してしまって……。私も探したのですが見つからず……。」
「……分かりました。必ず探しだしましょう。」
アルヴィン様は、幼少時代はぽっちゃりとしていて愉快な少年だったが、今は精悍で逞しい青年に成長していた。
坊っちゃん的な雰囲気のまま大きくなったシャノン様とはまるで違う。留学先で様々な経験をなされたのだろう。
この方がシャルロッテお嬢様を守ってくださるのなら大丈夫だと思った。
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