王妃さま、殿下の再教育は任せてください。

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15.攻略は順調っ!?

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※ 時系列としてはエリアナとオースティンの一回目の裏庭での邂逅の後からです。


エリアナ視点


「裏庭のイベント、いまいちだったわよねぇ。」

 私は部屋で裏庭での会話を思い出していた。
 ゲームではもう少し長くオースティン様の母親の思い出話をしていたのに、この間はあまり話をせずにさっさと行ってしまった。イベントをクリアしたような達成感が無い。

「薔薇好きアピールが足りなかったからかしら?」

 これじゃあイベントクリア出来たのか分かんない。
 ゲームだと、効果音があったりするから成功か失敗かすぐに分かるんだけど……。

「もう一度だけ裏庭に行ってみよう。」

 もしかしてまだきちんとクリアの条件を満たしていないのかも。
 もう一度行けば、二人の仲が深まるようか会話が出来るのかもしれない。

 ゲームの世界に転生したからには、やっぱり王子様を攻略して王太子妃になりたい。綺麗なドレスと宝石を身に着け侍女に傅かれての贅沢三昧。
 憧れるわぁー。

 私は念のためもう一度だけ、礼拝堂の裏庭へと向かった。細い道を歩いていくと奥に人の気配がする。

「誰かいるわ。」

 この間オースティン様と話をした場所の辺りだ。更に近づくと話し声が聞こえてきた。

 あっ、あれは……。

 あの金髪!オースティン様だわ。
 やっぱりあのイベントには続きがあったのよ。

 オースティン様の後ろ姿を見つけて嬉しくて駆け寄った。

「だ、誰だっっ!!」

 足音を聞いた彼は、私が誰か分からないのか、焦ったように鋭い声で怒鳴った。

 え?
 思ってた反応と違って戸惑ってしまう。
 オースティン様ったら、侵入者と間違えたのかしら?

 警戒されないよう、私は甘ーい声で彼を呼んでみた。

「オースティンさまぁ」 

「今は取り込み中だ。此方に来ないでくれ。」

 あれぇ?
 イベントじゃ無いのかしら?

 近づいてみたら、オースティン様のお腹にタックルするようにヴァネッサがしがみついていた。

「へ?え、え……す、すいませーん。」

 ただ事ではないその場の緊張感に驚いて、直ぐに来た道を引き返した。

 きっとヴァネッサがオースティン様に縋りついていたのね。

 だとしたら……

 オースティン様の攻略は順調ってことよね!

 ヴァネッサって確か、高慢な性格と浪費癖が酷いことで、オースティン様から嫌われていた。
 今さら捨てられないよう必死になっているのかもしれない。

「それにしても……ゲームと違ってヴァネッサの嫌がらせはないわね。」

 ヒロインに王子様をとられそうになった悪役令嬢の嫌がらせはこれからかもしれない。

 「確か……悪い噂を流して、私を学園で孤立させるのよね。」

 きっとこれからの学園生活はボッチになるのだろう。
 別に堅苦しい貴族の友人なんていらないけど……。

 だいたい、学園にいる貴族令嬢ってとっても陰湿そうで嫌!
 私の悪口じゃないけど、人の噂話ばかり。扇で口元を隠してヒソヒソしてて、気分悪いもの。
 
 私は前世でも女同士の人間関係が苦手だった。だからいつも、女友達よりも男友達と一緒にいた。
 けれどそんな私の事を良く思わない女友達に色々言われた。

 私はあくまで友人として接しているだけで、告白してくるのは向こうなのに、いつも私が嫌みを言われた。 
 勝手に向こうが好きになったのに、私に文句を言うなんて変じゃない?

 だから、同じ社交界に身を置くにしてもより地位が高い王太子妃が良いに決まってる。

 私はそれからもオースティン様の攻略に心血を注ぎ、ほぼ全てのイベントをクリア出来た。

 ちゃんと授業中倒れて、お姫様抱っこで運んでもらう保健室イベントも、文化祭のお化け屋敷で驚いた拍子に抱きついちゃうお化け屋敷イベントもクリアした。
  
 かなり好感度は上昇していると思う。

 他の令嬢にいじめられる設定だから親しい友達はいなくて孤独な学園生活だったけど、全然寂しく無かった。

 だって、無理して友達なんて作らなくても、王太子妃になれば向こうから寄ってくるんだから。

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