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17,後日談(完)
「そろそろ旦那様がお帰りになりますよ。」
「はぁい。これをもう少し煮込んでおいて欲しいの。」
「かしこまりました。」
パタパタパタ…
ガチャリ
「おかえりなさいませ。」
「だだいま、シンシア。」
ミゲルは私を抱き寄せると軽くキスをしてくれる。
「今日の夕飯は何ですか?」
「イリージュでお肉を煮込んだの。」
「それは楽しみだ。」
私は領地の特産のフルーツを使った煮込み料理に凝っている。
フルーツで煮込むことで筋肉質で固い肉も柔らかくなるのだ。
身体が辛い時や子供の世話で忙しい日は料理人が作ってくれる。
結婚してから18年。
子育てで悩むことはあっても、私は幸せに過ごしてきた。
子供は全て男の子で上から16歳、13歳、8歳だ。
ライゼンド公爵家は男系の家系で、従兄弟達も全て男の子。
今は騎士を目指してお父さんと訓練に参加している。
ライゼンド公爵家の血なのか、それぞれに剣の才能があり、ミゲルも訓練するのが楽しそうだ。
バタバタバタバタ……ガヤガヤ……
「「「あっお父さんおかえりなさい。」」」
子供達が庭での訓練を終えて家に入ってきた。
長男に剣の稽古をつけてもらっていたらしい。
「「「お母さん、夕飯なあに?」」」
「イリージュでお肉を煮込んだのよ。たくさん作ったから食べてね。」
「「「うん!!!」」」
子供達もミゲルと一緒で、家に帰るとまず一番に夕食のメニューを確認してくる。
それは夕食を楽しみにしているからだと思うと嬉しい。
そんな些細な事が幸せの証なのだと思う。
「今晩、良いですか?」
ミゲルが子供たちに気付かれないように耳元で囁く。
「はい。」私も気付かれないように少しだけ肯首する。
ミゲルは初めての夜に宣言した通り、子供を産んでも、体型が変わっても私を求めてくれている。
「可愛い。」「愛してます。」「綺麗だ。」「好きだよ。」
閨で贈られるたくさんの言葉のプレゼントは、私に幸福感と自信を与えてくれる。
幾夜もミゲルと共に過ごし、夫婦の愛を確かめあい、確かに愛は積み重ねれば増えるものだと知った。
王城でミゲルの訓練を見ていた片想いの頃より、何倍もミゲルの事が好きだ。
愛する旦那様と子供たちに手料理を振る舞う日々は王女として育った私には勿体ない程の夢の日々。
今は領民が少しでも豊かに暮らせるように、フルーツを使ったレシピの考案を行っている。
フルーツを調理することで、日持ちするようになり広く販売することが出来る。
腐らせてしまうフルーツをもて余していた領民たちは皆協力してくれた。
試作品を毎日食べる環境で、私はもう痩せることはない。
まだ、ちょいぽちゃの範囲だと思う。
「美味しい!」
「お母さん、お肉柔らかいよー!」
「シンシア、美味しいです。ありがとう。」
「おかわりある?」
旦那様の教育のお蔭で、子供たちは料理が美味しいと必ず言葉にして伝えてくれる。
旦那様と子供たちの称賛の声を聞きながら、私は明日の献立を考えていた。
(おわり)
※本編完結です。
番外編は出来次第投稿します。
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