11 / 25
王太子レオナルド
しおりを挟む「狩猟会でヴィアが薬を盛られたと情報がありました。タイミングよく結界が壊れた事も気になります。僕にも捜査に参加させてもらえませんか?」
王太子の執務室。僕はそこで殿下に直談判していた。レオナルド王太子殿下と僕は旧知の仲。不本意だが考え方が似ているようで、僕と殿下はお互いに信頼出来る間柄だ。
「お前が直接捜査をするのは不味いな。取り調べの記録は見せてやる」
ヴィアが危険に晒されたのに……。
そんな僕はの仏頂面に殿下は気付いたようでーー
「まあ、そんな不満そうな顔をするな。王太子主催の狩猟会を台無しにしたんだ。それ相応の罰は与えるさ」
穏やかに話しているがその目は笑っていない。殿下をよく知る僕には、彼が相当怒っていることが伝わった。
殿下は表面上フレンドリーに振る舞ってはいるが、その中身は王者然としている。
最近、貴族の間でも自由や恋愛結婚を認める風潮だが、殿下はそんな貴族についても思うところがあるらしい。自身の婚約者についても王太子妃としての重責を担う覚悟の出来る者という条件だけしか出さない。
未だに婚約者が決まらないのは、殿下のいう『王太子妃としての覚悟』の出来るような令嬢が居ないからだ。
そして狩猟会に俺の恋人を連れて来いと命じたのは、ゆくゆくは殿下の側近となる僕の選んだ女性を見極めるため。
まあ僕は、ヴィアならこの小難しい殿下にも気に入られると確信はしていたけど……。
「ご存知かとは思いますが、ウィリデ侯爵令嬢がーー」
「ああ、彼女はいつか何かをするとは思っていたが。侯爵も娘に甘すぎたな」
殿下が僕の話を遮る。
ああ、もう大方調査は終わっているって事か……。
「それにしてもシリル、カリテス伯爵令嬢は落ち着いていて、聡明で……いいな」
「殿下には譲りませんよ?」
「ははは、そう目くじらを立てるなよ。褒めただけだ。最近の令嬢にしては落ち着いていて思慮深い。良い女性だ」
僕はまだヴィアを紹介なんかしていない。なのに……
「いつ見たんですか?」
「さあな。俺が招待したんだ。何でも知ってるさ。お前が帰国して恋人になる前に知り合っておきたかった。彼女はいい」
「僕が留学してこの国に居ない間に知り会うチャンスはあったでしょうに……」
「ベイク子爵令息の婚約者だったろ?あいつの婚約者なんて興味は無かったさ」
ヴィアはアンドレアの婚約者だったから、面食いの軽薄な女性だと思ってたってことか……。
ヴィアが婚約解消したあと、殿下の目に留まる前に恋人役を申し込んでおいて良かった。
あの時ああしなかったら、殿下に見つかっていたかもしれない。ヴィアのあの雰囲気じゃ、殿下に婚約を申し込まれたとしても断らなかったと思う。彼女は自分を過小評価しているから、縁談がくれば何でも受け入れそうだ。
「殿下が主導して捜査してくださるなら安心ですね。僕は余計な口出しはしないでおきますよ」
「ああ、そうしてくれ。頭を使うのが苦手な令嬢の軽はずみな行動で死人が出たかもしれないんだ。悪戯ではすまされん。ウィリデ侯爵令嬢は幼い頃から知っている。何を企んでいたかは想像出来るさ。……それにしても」
「何ですか?」
「恋愛っていうのもいいな」
また、話が戻ってる。余程ヴィアが気に入ったってことか……。
「お前のデレデレした顔も新鮮だった。恋愛結婚なんて馬鹿にしていたが、それもいいなと思わせてくれたよ」
「……殿下もよい人見つけてくださいね、ヴィアは駄目ですよ」
「ああ、分かってるさ」
ああ、あの日の僕を褒めてやりたい。ヴィアに恋人役を頼んで本当に良かった。
早くヴィアを口説き落とさないと……。
99
あなたにおすすめの小説
王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】
mako
恋愛
以前の投稿をブラッシュアップしました。
ランズ王国フリードリヒ王太子に嫁ぐはリントン王国王女クラリス。
クラリスはかつてランズ王国に留学中に品行不良の王太子を毛嫌いしていた節は
否めないが己の定めを受け、王女として変貌を遂げたクラリスにグリードリヒは
困惑しながらも再会を果たしその後王国として栄光を辿る物語です。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
完結 愛される自信を失ったのは私の罪
音爽(ネソウ)
恋愛
顔も知らないまま婚約した二人。貴族では当たり前の出会いだった。
それでも互いを尊重して歩み寄るのである。幸いにも両人とも一目で気に入ってしまう。
ところが「従妹」称する少女が現れて「私が婚約するはずだった返せ」と宣戦布告してきた。
年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました
チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。
そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。
そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。
彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。
ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。
それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。
【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする
冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。
彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。
優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。
王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。
忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか?
彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか?
お話は、のんびりゆったりペースで進みます。
やさしい・悪役令嬢
きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」
と、親切に忠告してあげただけだった。
それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。
友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。
あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。
美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる