痣という名の愛を君に

一ノ瀬 瞬

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痣という愛を君に

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【疵という名の愛を君に】

深夜…赤く光る月に照らされる
月が見えるのはあの子の病室から
紅い紅い月の歪さ…私にも視えているから…

【私視点】
あの子はいつも哀しげで儚い…触れたら壊れそうで。
最初は、そんな印象だった。
出逢いなんてありきたりで
あの子が私の担当患者になった…そんなお話
あの子は何時も口癖の様に呪いを吐く
『僕は幸せになってはいけないから』
最初のうちは『唯の患者』だ深入りもしない
そう決めていた…だけど
毎日毎日を共に過ごすうち…あの子だけは
私の特別になってしまった。勿論禁忌だ
許される事などないだろう…だが私には
許されるそんな事…些末な事だった

君に触れるうち
君が微笑みかけてくれるうち
君が喋るうちに…
私はどんどん君に惹かれていった…。
其の内に『君が望むんで止まない』
そんな事を君から聞かされ知った
歪に歪んだ君の心からの願い
『愛している人と最期を共にしたいと』
君の手は余りにも冷たくて
君の瞳は其れが本気なのだと言っていた

疵を体に背負い
誰も側に居ない孤独を一人で
抱え込むには君のその小さな体では辛すぎる
私は君を抱きしめながら…一つの約束をした
『次に此の病室に来る刻…』
君は残酷なまでに…そんなに嬉しそうに
「あぁ…本当だよ。次に此の病室に来る刻
必ず君を抱きしめながら…最期まで一緒に」

チクタクと秒針は時間を刻んでいく
静かな病室に響き渡る音色…嗚呼もうすぐ
もうすぐ『君』の部屋に着いてしまう
いつもの様に笑う君と悲しんだ顔を隠せない
君に涙を浮かべ微笑む私
覚えているさ…当たり前だろう…?
震える手を君の綺麗で…か細い首に伸ばす
震える手を支える様に君は私に話しかける
君なりの精一杯
『大丈夫だよ?安心してね…。』一言が胸を締め上げる。

涙で君の頬を濡らしてしまう
君しか…私は…なんて愚かなんだろうか
きっとこれしか方法がないんだから
『かみさま』なんてのも…存外残酷だな…。
愛しい君に力を込め…一緒だからね…?
私の最期も君に捧げよう…大丈夫大丈夫

愛しい君を腕に抱きながら
温もりが失われていく前に
君の頬に口付けて…手に持っていたメスを
自らの首筋に…冷たい感触より恐怖より
君に逢いに行く唯それだけを願って
「私も愛しているよ…愛してる」
すぐ逢いに行くから…少しだけ待っていてね
そうして私はメスを引いた。
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