痣という名の愛を君に

一ノ瀬 瞬

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痣という名の愛を君に

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【疵という名の愛を君に】

深夜…赤く光る月に照らされる
月が見えるのはこの病室から
紅い紅い月の歪さ…君には見える?

【僕視点】
『僕は幸せになってはいけないから』
刻み付ける様に僕は笑う…嗚呼疵が増えてく
僕は…上手く笑えてるだろうか?
痛みで僕は押さえつける。疵が君自身が
僕に安楽を…其の刻が来るまでは
僕は此の激情を抑えなくちゃいけないから

もう…怖いのも痛いのも苦しいのも嫌だから
せめて僕にも選ばせてよ…それ位いいでしょ
あの子から解放される道を選んでも…
いいでしょ?かみさま。
僕は本当はもう疵が増えるなんて嫌なんだ

白く無機質な病室…在るのは溢れるばかり
散乱した…おもちゃに絵本ぬいぐるみたちだ
カーテンが揺ら揺らと…ふわふわと
開いた窓から運ばれる風に揺れている
其の風が僕の頬に暖かで寒い
そんな感覚を与える
「-きっと-それも今日で終わるよね」

チクタクと秒針は時間を刻んでいく
静かな病室に響き渡る音色…嗚呼もうすぐ
もうすぐ『君』が僕の部屋に来てくれる
いつもの様に笑う僕と悲しんだ顔をしながら
僕に涙を浮かべ微笑む君
「嗚呼…えへへ…やっと来てくれた」
次に此の病室に来る刻…
それが僕達の約束の日になる
覚えていてくれたんだね…嬉しいな

君は震えながら僕に手を伸ばす
僕は君を安心させたくて…僕なりに精一杯
『大丈夫だよ?安心してね…。』
そう言いながら君の手首を掴み僕の首に
嗚呼ようやくだ…何度も何度も願って
待ち望んでいた幸せな刻…
君は本当に御願いを叶えてくれるんだね
君は本当に天使様みたいだなぁ…。
君に僕を終わらせてもらえる日
涙がポロポロ君の綺麗な瞳から零れ
僕の頬に滴り落ちる
僕は弱っていく力で手を伸ばし君の頬を拭う
徐々に僕の手助けなんていらない君は
力を込めてくれる…嗚呼…幸せだな…。

愛しい人と共に…最期まで一緒に
『あり…がとう…えへへ…あい…してる…』
薄れゆく意識の中君の『ごめんなさい』
其の言葉だけが…聴こえて
僕は眼を閉じた。
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