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しおりを挟む頷いたハルはスーツジャケットからスマホを取り出し、電話を掛け始めた。
ハルのスマホの横では、ユイカが手作りしたというストラップがキラキラと揺れている。その様を眺めながらじっと応答を待ったが――やがて留守番電話サービスに切り替わったようだ。ハルが伝言を入れ、通話を終了する。
「シュンスケさんから折り返しがありましたら、リツコさんにも連絡しますね」
「手間を掛けて悪いね」
「構いませんよ。住人の皆さまの困り事に対応するのは僕の仕事ですから」
「いや……。あの人がいなくて困ってるわけじゃないけどね」
ただ、唐突にいなくなってしまったようで引っ掛かるものがあった。何の問題も起きていなければいいのだが……。
そんなあたしの思考を遮るようにドアの開く音がした。事務所に入ってきたのは白衣姿のノブユキ。彼はあたしを見て溜め息をついた。
「またリツコちゃんか」
「また、って何ですか?」
「最近ハルと食事に行っているようだね」
「……そうですけど」
「既に八回も夕食を共にしているようだが、他の住人ともそのくらい頻繁に交流しているのかい? それともハルが特別な存在なのかな?」
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