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しおりを挟むファミリアに到着しエントランスに入ると、エレベーターの上ボタンを押した。ハルとともに上階からエレベーターが下りてくるのを待つ。
「――リツコさん」
「何?」
「これまで訊ねる機会を逃していたのですが。あなたの異彩、僕に見せていただくことはできますか?」
住人の異彩に踏み込むのは不躾だと思っていたのだろうか。
しかし彼は出会った当初からあたしの異彩を知っている。見せることに抵抗もない。
「コンタクトケースは部屋に置いてあるから。寄ってく?」
「こんな時間にお邪魔してもいいのですか?」
「どうせお風呂の前にコンタクトを外すし。大体シュンスケなんか、引っ越し当日に堂々と訪ねてきたからね」
そういうことなら、と答えたハルとともに自分の部屋へ。
ローテーブルの前に彼を促すと、コンタクトケースを用意し、レンズを外した。正面に座るハルは何を言うでもなく、無表情であたしの左目を凝視している。
これまで数々の異彩を見てきたであろう彼なら、あたしのことも平然と受け入れてくれると思い込んでいたが……沈黙している様子を見て不安に駆られた。ハルに〝気味が悪い〟という印象を植え付けてしまうのは嫌だ。
「ごめん、すぐに隠すよ」
「何故ですか?」
「だって気持ち悪いでしょ、こんなの」
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