120 / 220
120
しおりを挟む「あたしが思うに、〝生きる〟って行為自体が試練みたいなものなんじゃない? みんなそれぞれスタートレベルは違うけど、楽な人生なんて誰も保証されない。だから〝生きる〟っていう苦行を継続してるだけで、あたしたちは充分すごいんじゃないかって……自分を褒めてやってもいいんじゃないかなって。そんなふうに思うようになってきたんですよね」
「……ぼくみたいに卑屈な奴でも?」
「テツジさん、出会ったときに比べてお喋りになりましたよね。ちゃんと努力して、人見知りっていうコンプレックスと向き合ってきたわけでしょ? すごいことだと思いますけど」
「……そう、かな。友達を作っていろんな会話をするの、ずっと夢で……」
「じゃあもう夢叶えてるじゃないですか。管理人さんとシュンスケと〝仲良し同盟〟とかいうやつを結んだんでしょ?」
テツジは「〝三人親友同盟〟だね」と訂正し、目尻に皺を寄せた。実際に見ることはできないが、晴れやかな笑顔が浮かんでいるのではないかと思う。
三人で図書室を出ると、ハルに呼び止められた。テツジは一足先にエレベーターで上階へ向かい、エントランスで二人きりとなる。
用件を訊ねると、ハルは言い淀むような仕草を見せた。周囲には誰もいないが、人に聞かれるとまずい内容なのだろうか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる