異分子マンション

カナデ

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「あたしが思うに、〝生きる〟って行為自体が試練みたいなものなんじゃない? みんなそれぞれスタートレベルは違うけど、楽な人生なんて誰も保証されない。だから〝生きる〟っていう苦行を継続してるだけで、あたしたちは充分すごいんじゃないかって……自分を褒めてやってもいいんじゃないかなって。そんなふうに思うようになってきたんですよね」

「……ぼくみたいに卑屈な奴でも?」

「テツジさん、出会ったときに比べてお喋りになりましたよね。ちゃんと努力して、人見知りっていうコンプレックスと向き合ってきたわけでしょ? すごいことだと思いますけど」

「……そう、かな。友達を作っていろんな会話をするの、ずっと夢で……」

「じゃあもう夢叶えてるじゃないですか。管理人さんとシュンスケと〝仲良し同盟〟とかいうやつを結んだんでしょ?」

 テツジは「〝三人親友同盟〟だね」と訂正し、目尻に皺を寄せた。実際に見ることはできないが、晴れやかな笑顔が浮かんでいるのではないかと思う。

 三人で図書室を出ると、ハルに呼び止められた。テツジは一足先にエレベーターで上階へ向かい、エントランスで二人きりとなる。

 用件を訊ねると、ハルは言い淀むような仕草を見せた。周囲には誰もいないが、人に聞かれるとまずい内容なのだろうか。

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