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しおりを挟む「リツコちゃん、フィクションの世界に影響されすぎだよ。恋に落ちるのに特別なきっかけがあるとは限らない。〝いつの間にか自然に好きになってた〟ってこともある。些細な出来事を機に意識しちゃうってこともね」
「……シュンスケはそういう経験あるの?」
「うん。オレの初恋は小学校三年生のときだったんだけど、相手を意識し始めたきっかけはホントに些細なことだった。隣の席になったとき、忘れた教科書を見せてもらったんだよね」
「そんなくだらないことで?」
シュンスケは「失礼な子だね」と眉を寄せた。咄嗟に謝ったが、くだらないという感想自体は変わらない。その程度の出来事で恋に落ちていたら、そこらじゅうで人を好きになってしまいそうだが……。
「オレはそんな感じだったし、きっかけなんていくらでも転がってるよ」
「小学校三年生の経験をベースに語られても、子供すぎてアテにならないんだけど」
「子供も大人も大差ないって。案外単純な恋愛もあるってことさ」
「そういうもんなのかね……」
「そうそう。ハルと一緒に発注画面を覗いてるだけで恋に落ちちゃった、なんてこともあるかもしれない」
「あーもう、うるさいね。さっさと帰りな」
はーい、と残念そうに返事をしたシュンスケがコンビニを出ていく。
しかしすぐに「ユイカちゃん!」と呼ぶ彼の声が聞こえた。レジカウンターからは見えないが、エントランスで鉢合わせたらしい。「今日も可愛いね」とか「ユイカちゃんの手作りお菓子が食べたい」とか話している。
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