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しおりを挟む湊公園の駐車場でタクシーを降りる。火曜の今日、ツリーの電飾は消灯していた。公園の周囲に街灯が立っているものの、夜闇を照らすには不十分だ。ひとけもない。
しかし、真っ黒なツリーの前に立つ影があった。
背を向けているが、間違いなくハルだ。
ひとまず安堵して呼び掛けると、彼はゆっくりと振り返った。
「リツコさん」
「……どうしてこの場所に?」
「自分でも分かりません。ただ、叔父の部屋にいることに違和感を覚えたんです」
「だとしても突然いなくなるなんて。心配するでしょ」
返事はなかった。
暗い中でも表情を確認できる距離まで歩み寄る。
「管理人さんがいなくなったことを知って、ユイカまで倒れちゃったよ? 相当ショックを受けたと思う。まぁ管理人さんがそれを知ったところで、心が麻痺してるなら何とも思わないのかもしれないけど」
「……そのこと、叔父が話したのですか?」
「いや、ユイカから聞いたんだよ。辛い経験が重なって、マイナスの感情を抱かなくなったんだよね?」
ハルは小さな溜め息をつき、色のないツリーを見上げた。
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