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しおりを挟む「僕が妹に愛情を感じるのはAIチップのせいで、自分の意志ではない――最初はそう思い込もうとしたのですが、彼女の姿を見ていたい、声を聞いていたいという衝動を抑えられなくなるんです。依存のような感覚に陥ったのではないかと」
「嫌な気分にならなかったの――って、なれないのか。心の麻痺があるんだもんね」
「そう、僕は誰かに嫌悪を抱くことがない……もちろん自分に嫌気がさすなんてこともありません。しかし、仮に心の麻痺がなかったとしても、僕が叔父を責めることはなかったと思います」
「どうして?」
「母の死を体験する前から、妹は自身の異彩で苦しんできた。それを助けてあげたかったというのもまた事実ですし、叔父だけを悪者扱いすることはできません。妹に心を捧げる自分を疑問に思うことも、いつの間にかなくなっていたのですが……リツコさんの左目を見てから、思考の制御が乱れ始めたようなんです」
「……あたしの眼?」
「これは僕なりの推測ですが、あなたの瞳はただの変色ではない。人間の本音――〝潜在意識を引き出す力〟を秘めているのではないでしょうか。紅い眼を見ることで、心の奥底に眠っている本音・その者の本性などが呼び起こされるのではないかと」
そういえば――あたしが左目を見せたあとで、シュンスケとアンズは思い切った行動を取っていた。
長年想い続けた人への告白、派手なイメージチェンジ。「本当にやりたいことをしたい」という気持ちが二人を動かしたのかもしれない。
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