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第2章 血の追求者
2-02:真・捜査方針、その仕組み
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「ようやくここで活動再開出来るな」
「そうね。今まで警視庁上層部の会議室を間借りしていたから少しやりづらかったからね」
時光の言葉に真奈が同意して思ったことを述べる。
若弥が脱退して約1カ月半、自分たちの本部が使えず思い通りに行動出来ず、またメンバーの気持ちに多かれ少なかれ整理がつかず足並みも揃わず、それでも少しずつ立て直して今に至る。
「この短期間で修復もそうだけどここまでの補強を施すとは」
「一体どれだけの資金と人材を確保したのか気になりますね」
舞香と恵がそう口にすると修助が述べる。
「怜司くんのことだからきっと気にするなとでも思っているんじゃないかな」
「私もそう思いました。決して威張ることなく何事もなかったかのような静かな、それでいて鋭い処理をされているものですからね」
修助の言葉に便乗して自分のことのように嬉しく思う歩果である。
「それでも私たちに少しでも言ってくれればいいのに」
「「何かちょっと寂しいな」」
綾菜が複雑な心境で言うと、志穂と美穂が口を揃えて頬を少し膨れさせて言ってみせると、
「まあまあそれが良くも悪くも怜司の性分だから理解しろと言わないまでも見届けてやろうな」
「それが彼に対しての妥当な対応だろうな」
時光が包み込むようにして言うと、それを補足する修助の言葉に返す言葉がなくなったところで、
「皆さん揃っていますね?早速ですが会議を始めます」
ここで良歌が入室してくると時光が目を丸くして、
「村富警視監がここにお一人で珍しいですね。馬堂総監は何方へ?」
「それを含めてこれから重要なことを皆さんにお伝えするので席へお願いします」
そう言われてメンバーが席に着いたところで、その前にある席に良歌が立って話を始める。
「まずは日々の捜査を含め未然に防げる事件の処理をしていただきお疲れ様です。このまま継続していただけると助かります」
まずは頭を軽く下げ労いの言葉をかける。
それから少し間を空けて話を続ける。
「さて皆さんにとって嫌というほど知られていることですが、小堂君が脱退して約1カ月半が経とうとしていますが、今も行方が掴めないままの状況が続いています。警視庁の捜査官を可能な限り回していますがそれでも、あらゆる可能性を考えると皆さんの力も必要になってきます。改めてお願いします」
先ほどよりも深く頭を下げて言うと、
「言われるまでもなく1日でも早く若弥を捕獲して理由を追求するつもりでいますから大丈夫ですよ」
「若弥さんの脱退を含めて私たちの手の回らないところを支援していただいているのでこちらとしても心強く思っていますよ」
時光と恵がそれぞれ述べると良歌は胸を撫で下ろし返答する。
「ありがとうございます。私の方でわかったことがあればお伝えしますが、皆さんの方からもあればその時はお願いします」
一段落着いたところで本題に入る。
「改めて先ほど話に入る前に森園君からの問いに関して馬堂総監は直接、ある人に会ってくると言って本日は席を外しているため私が来ました」
「行先は何方へ?」
「詳しいことは私も。ただ馬堂総監が自ら動いて会う方ですから相当な人物ではないかと推測ではありますがそう考えています」
恵の問いに良歌が少し歯切れが悪くも、考えられる可能性を示して答える。
「リモートでもやろうと思えば出来ることにも関わらずにですか?」
歩果が疑問に思っていたことに良歌は頷く。
分野問わず今この時代となっては遠方の人と会議や面談などをする時はほとんどリモートが主流となっている中でこのように直接会って話をすることは少数となっている。
それがどんな地位の人でも互いの時間を尊重出来るためとして定められたことである。
それを踏まえた上で良歌が話を続ける。
「それから今回のように馬堂総監が会議に出られない場合は代わりに私が皆さんの意見を取りまとめます。また今後は岩方警視長と神城警視正が加入して氷山君の任務の負担を軽減するため補佐をやってもらうことを今朝、馬堂総監から話がありました」
良歌は怜司の任務の軽減、若弥の捜査や日常の犯罪を減らす目的を説明した。
「仮にもし総監と警視監が不在もしくは別の事件で会議に出られない場合はどうされるのですか?」
綾菜がそう質問すると良歌は少し息を整えて答える。
「そうなった場合には岩方警視長にやってもらいます。馬堂総監、私、岩方警視長がここに来られない場合は神城警視正に、このように支援させていただきます」
「「4人とも来られない時はどう考えていますか?」」
志穂と美穂が口を揃えて問うと、
「最悪の事態を想定してそうなった場合には森園君と下鶴さん、2人で最善策を考えて方針を立てていただきたいと、これも馬堂総監から話がありましたがよろしいですか?」
良歌が2人に視線を送ると、少し迷った様子が見られたものの意思を固めて返答する。
「わかりました。及ばずながらその時が来ても務めさせていただきます」
「同じく。でも私は時光クンにお願いするばかりかもしれませんけどね」
「おい」
舞香が冗談っぽく言うと時光が苦笑いしてツッコミを入れる。
その様子に良歌はクスッと笑い、次に真奈と修助に視線を向けて話す。
「その2人のサポートを夕里さん、池波君お願いします」
「私も厄介なことは修助にお願いするばかりかもしれませんね」
「真奈さん、俺ばかりはちょっと」
「冗談よ」
修助は少し困ったように苦笑いで言うと、舞香と同じノリで真奈が言ってみせる。
「それでは私からは以上ですが皆さんの方から何かありましたら遠慮なくどうぞ」
良歌がそう言うと、恵が何やら言いづらそうに遠慮勝ちに手を挙げて質問する。
「あの、今になってお伺いするのも失礼ですが捜査とは全く違う話になりますが、村富警視監の今日の服装ですが、何方かお出かけする予定ですか?」
なんとなく聞かれるであろう質問に少し気恥ずかしそうに答える。
「ああこれですか?これは馬堂総監から提案されたことですが、試験的に上層部だけ制服ではなくカジュアルな服装で仕事してみないかとお話をいただき、この格好でいます」
今日の良歌の服装は、白いジャケットに淡いピンクのシャツに紺色のタイトスカートである。
性別問わず誰もが振り返りそうなバリバリのキャリアウーマンの雰囲気が出ている。
「いいじゃないですかその服装」
「出勤途中で声をかけられませんでしたか?」
綾菜と歩果からの質問に頬をかき答える。
「ええそうね。モデルをやってみませんかとスカウトさんに声をかけられましたが警視庁のIDカードを見せて丁重にお断りしました。そんな感じで、しばらく上層部だけですが今後は警視庁全体でも取り組む予定です」
そう話終えたところで、
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。任務お疲れ様でした」
水色コートを着た怜司が入室すると良歌が労いの言葉をかける。
「総監が不在というのは連絡をいただいているので、よろしければこれにサインいただけますか?」
「ええもちろん」
任務から戻って来て早々に良歌に渡したものは資金証で犯罪が起きた現場で犯罪者が不正に得たお金や小切手などをJSIA捜査機関の資金にするにあたって正式な手続きをするため、上層部の署名が必要になる。
「上層部でも服装を変えてみることもお話をいただきましたが、お似合いですよ」
「それを先ほど言われていたところですよ」
怜司にも言われて満更でもなさそうにして、署名した資金証を渡す。
「話が変わりますが氷山君の方で最近捜査して気になることはありますか?」
良歌に問われると少しの考え込みスマホを取り出し、宙に20~30代の男性1名と女性2名の画像を反映させ話を始める。
「昨日と一昨日に撮影させていただいた写真ですが街中を歩いていて違和感があり今取り上げている方々に声をかけてみました」
「以前の権藤さんが起こした事例があったとでも?」
推測の域ではあるが確信を突く時光の言葉に怜司は頷き、撮影された人たちの当時の画像にサーモグラフィーに簡易医療測定が搭載された機能を用いて違和感があるところを指摘する。
「この通り極端な高熱や病気は確認されないが、左腕に注射されているところを見ていただければわかるかと」
「注射であれば予防接種という目的で打った可能性が考えられるけど何に行き詰まっているのかな?」
綾菜の疑問に頷き、画像を左腕の部分に拡大して話を続ける。
「それぞれ体格に差はあれ、寸分の狂いもなく的確な注射をしているだけではなく人に痛覚を可能な限り与えない部分に打ち込んでいるあたりが不気味に思って話をさせていただきました」
怜司が話を終えると歩果が思ったことを述べる。
「確かにここまで正確無比に注射出来ることは相当な腕の立つ人でなければ出来ませんし嫌な感じがしますね」
続けて恵が手を挙げて質問する。
「注射が正確に打たれたことはわかりましたが、それに含まれている成分はわかっていますか?」
「そこについては医療機関にいる森園先生に依頼をかけているよ。科捜研だと時間がかかるため早々に調べをつけた方が良いかと」
怜司はメンバーに提案して展開している画像を閉じ良歌に申請する。
「引き続き私の方でも捜査しますが総監から依頼されている任務の中でも片付けておきたい案件もあるのでこれで」
頭を下げて退室しようとするところ良歌が、
「あ、ちょっと待って氷山君。最後に一つ、先ほど取り上げた方々がいたエリアを教えていただきたいのですがよろしいですか?」
「ああそうでしたね、失礼しました。男性が吉祥寺で女性がそれぞれ新宿と渋谷エリアで、誰が何処を捜査するのか、お任せしてよろしいですか?」
「ええ。引き留めてしまってごめんなさい。気をつけていってらっしゃい」
改めて怜司が頭を下げ会議室を後にする。
「さて氷山君から持ち出された話で捜査方針はほぼ決まってしまいましたが、それでも他にありますか?」
メンバーから話を伺おうと見渡すが緊急を要したこともなかった。
少し間が空いたところで捜査方針を伝える。
「では改めて今後皆さんにしていただくことについて話をさせていただきますと、新宿、渋谷、吉祥寺のエリアに分かれて巡回していただきます」
基盤となることをハッキリさせて話を続ける。
「池波君の索敵魔法と夕里さんの精神念話で巡回するメンバーのサポートをしていただき、先ほど氷山君の話にあった人たちがいれば医療機関に搬送させて検査を受けていただくように説得してください」
大まかな流れの説明を受けて恵が手を挙げて質問する。
「やろうとすることは大体わかりましたが的確にその人だけを見つけて説得するにも時間がかかりますが、そこについてどう考えていますか?」
良歌はその質問に頷き、右手を翳して修助の座るテーブルの前に小さい魔法陣を展開させリストバンドに模した物を出す。
「村富警視監これは…」
修助の言葉に答える。
「危険度観測支援具で氷山君が使っていた簡易医療測定とはまた使い勝手が異なるものの具体的な数値を測定することが出来ます」
説明を受けて両腕にバンドを装着して確認すると、
「こ、これは…」
「そう、池波君視点からだと周りにいる皆さんの体温はもちろん、色でパーセンテージが表示されていませんか?」
「ええ」
周囲にいるメンバーの頭上に具体的な体温と水色でそれぞれ4~6%前後の数値が記されてある。
右下に天気予報の降水量を示しているように、水色で10%以下がほぼ安全、黄色で11~30%が注意、オレンジ色で31~50%が警戒、赤色で51~69%が厳重警戒、紫色で70%が危険と具体的な数値と色でわかりやすくなっている。
それだけではなく自分を纏うように翡翠色のオーラが展開されていることにも気づき、
「修助ちゃんそれは…」
綾菜の言葉に修助が良歌に尋ねるよりも早く説明を続ける。
「展開されているオーラの名称は自動安全魔導障壁で私はこれを自安壁と呼んでいます」
まずはオーラの名前をハッキリとさせた後に使用方法を説明する。
「術者である本人はもちろん、自分以外の周囲にいる人に自安壁を展開させることが出来ます。術者本人の魔力や技術にもよりますが自分を含めた最大3人を目安に展開出来るように調整してあります。魔力を必要以上に消費させないため、また枯渇しないため一定の数値を越えたら自動的に自安壁が解除する仕組みにもなっているため使用配分にも気をつけて展開するといいでしょう」
「わかりました」
説明を受けて早速、近くの席に座っている真奈に自安壁を展開させる。
「不快感や倦怠感の方はどうかな?」
「問題ないわ。それにしても結構不思議な感覚ね」
真奈が実際に自安壁の感触を確かめてみると、ブンッと磁石がくっつかず反発する原理に近いことが確かめられた。
その様子が確認出来たところで良歌は自安壁の補足について伝える。
「更にこの自安壁の使用について術者の魔力を注ぎ込む分だけ壁の強度を高めることが出来て外部からの襲撃を防ぐことも出来ます。術にかけられている夕里さんも有効ですが一度展開を解除してしまい、もう一度同じ効力を得たい場合にバンドを装着している池波君から魔力を供給しなければ効力は得られないので気をつけてください。色々説明しましたが、これに関しては私の口から説明するより、やってみせた方が早いので森園君、今から池波君に殴りかかっていただけますか?」
「わかりました。本気でやって大丈夫ですね?」
「もちろん」
その確認がとれて2人は立ち上がって向かい合い時光が態勢を整える。
「それじゃあ修助君、準備はいいかな?」
「いつでもいいよ」
時光が勢いをつけて殴りかかろうとするも、壁に注ぎ込まれている魔力が協力ということもあり、思った以上に弾き飛ばされる結果になった。
当人たちはもちろん、その様子を見ていたメンバーも呆気に取られていた。
「時光くん大丈夫?怪我はない?」
「ああ大丈夫だよ。想像していた以上に頑丈だねそれ」
実際に殴りかかって感想を述べる時光の後に、念を押すように良歌は説明を加える。
「可能な限り対策を皆さんに提供しましたが、それでも付け入る隙があるかもしれないので池波君と夕里さん、それに加えて医療という面から見ていただきたく松法さん、貴女にも2人の立場と同じ位置に回っていただけますか?
」
その言葉に綾菜は真っ直ぐ見据え答える。
「わかりました。状況にもよりますが医療の方が切羽詰まりそうな時はそちらの対応に回る形でよろしいですか?」
「ええ、その流れでお願いします」
動きの確認が取れたところで次に、
「三重月さんには森園先生がいる医療機関で支援をお願いします。事態の遅れをとられないため準備を整えていただけると助かります」
「承りました。もとからそのつもりでいたので大丈夫ですよ」
「頼もしいですね」
歩果の心構えに良歌は微笑んで言ってみせる。
最後に現場を巡回するメンバーを発表する。
「ではこれから現場を巡回するエリアと名前を申し上げます。渋谷エリアを倉ノ葉志穂さん、美穂さん。新宿エリアを下鶴さん、中野院さん。吉祥寺エリアを一人で申し訳ありませんが森園君。くれぐれも無理のないように慎重にお願いします」
「「「「「はい!」」」」」
「ではこれにて会議を終了します」
メンバーは任務遂行のためそれぞれ行動に移すのである。
「そうね。今まで警視庁上層部の会議室を間借りしていたから少しやりづらかったからね」
時光の言葉に真奈が同意して思ったことを述べる。
若弥が脱退して約1カ月半、自分たちの本部が使えず思い通りに行動出来ず、またメンバーの気持ちに多かれ少なかれ整理がつかず足並みも揃わず、それでも少しずつ立て直して今に至る。
「この短期間で修復もそうだけどここまでの補強を施すとは」
「一体どれだけの資金と人材を確保したのか気になりますね」
舞香と恵がそう口にすると修助が述べる。
「怜司くんのことだからきっと気にするなとでも思っているんじゃないかな」
「私もそう思いました。決して威張ることなく何事もなかったかのような静かな、それでいて鋭い処理をされているものですからね」
修助の言葉に便乗して自分のことのように嬉しく思う歩果である。
「それでも私たちに少しでも言ってくれればいいのに」
「「何かちょっと寂しいな」」
綾菜が複雑な心境で言うと、志穂と美穂が口を揃えて頬を少し膨れさせて言ってみせると、
「まあまあそれが良くも悪くも怜司の性分だから理解しろと言わないまでも見届けてやろうな」
「それが彼に対しての妥当な対応だろうな」
時光が包み込むようにして言うと、それを補足する修助の言葉に返す言葉がなくなったところで、
「皆さん揃っていますね?早速ですが会議を始めます」
ここで良歌が入室してくると時光が目を丸くして、
「村富警視監がここにお一人で珍しいですね。馬堂総監は何方へ?」
「それを含めてこれから重要なことを皆さんにお伝えするので席へお願いします」
そう言われてメンバーが席に着いたところで、その前にある席に良歌が立って話を始める。
「まずは日々の捜査を含め未然に防げる事件の処理をしていただきお疲れ様です。このまま継続していただけると助かります」
まずは頭を軽く下げ労いの言葉をかける。
それから少し間を空けて話を続ける。
「さて皆さんにとって嫌というほど知られていることですが、小堂君が脱退して約1カ月半が経とうとしていますが、今も行方が掴めないままの状況が続いています。警視庁の捜査官を可能な限り回していますがそれでも、あらゆる可能性を考えると皆さんの力も必要になってきます。改めてお願いします」
先ほどよりも深く頭を下げて言うと、
「言われるまでもなく1日でも早く若弥を捕獲して理由を追求するつもりでいますから大丈夫ですよ」
「若弥さんの脱退を含めて私たちの手の回らないところを支援していただいているのでこちらとしても心強く思っていますよ」
時光と恵がそれぞれ述べると良歌は胸を撫で下ろし返答する。
「ありがとうございます。私の方でわかったことがあればお伝えしますが、皆さんの方からもあればその時はお願いします」
一段落着いたところで本題に入る。
「改めて先ほど話に入る前に森園君からの問いに関して馬堂総監は直接、ある人に会ってくると言って本日は席を外しているため私が来ました」
「行先は何方へ?」
「詳しいことは私も。ただ馬堂総監が自ら動いて会う方ですから相当な人物ではないかと推測ではありますがそう考えています」
恵の問いに良歌が少し歯切れが悪くも、考えられる可能性を示して答える。
「リモートでもやろうと思えば出来ることにも関わらずにですか?」
歩果が疑問に思っていたことに良歌は頷く。
分野問わず今この時代となっては遠方の人と会議や面談などをする時はほとんどリモートが主流となっている中でこのように直接会って話をすることは少数となっている。
それがどんな地位の人でも互いの時間を尊重出来るためとして定められたことである。
それを踏まえた上で良歌が話を続ける。
「それから今回のように馬堂総監が会議に出られない場合は代わりに私が皆さんの意見を取りまとめます。また今後は岩方警視長と神城警視正が加入して氷山君の任務の負担を軽減するため補佐をやってもらうことを今朝、馬堂総監から話がありました」
良歌は怜司の任務の軽減、若弥の捜査や日常の犯罪を減らす目的を説明した。
「仮にもし総監と警視監が不在もしくは別の事件で会議に出られない場合はどうされるのですか?」
綾菜がそう質問すると良歌は少し息を整えて答える。
「そうなった場合には岩方警視長にやってもらいます。馬堂総監、私、岩方警視長がここに来られない場合は神城警視正に、このように支援させていただきます」
「「4人とも来られない時はどう考えていますか?」」
志穂と美穂が口を揃えて問うと、
「最悪の事態を想定してそうなった場合には森園君と下鶴さん、2人で最善策を考えて方針を立てていただきたいと、これも馬堂総監から話がありましたがよろしいですか?」
良歌が2人に視線を送ると、少し迷った様子が見られたものの意思を固めて返答する。
「わかりました。及ばずながらその時が来ても務めさせていただきます」
「同じく。でも私は時光クンにお願いするばかりかもしれませんけどね」
「おい」
舞香が冗談っぽく言うと時光が苦笑いしてツッコミを入れる。
その様子に良歌はクスッと笑い、次に真奈と修助に視線を向けて話す。
「その2人のサポートを夕里さん、池波君お願いします」
「私も厄介なことは修助にお願いするばかりかもしれませんね」
「真奈さん、俺ばかりはちょっと」
「冗談よ」
修助は少し困ったように苦笑いで言うと、舞香と同じノリで真奈が言ってみせる。
「それでは私からは以上ですが皆さんの方から何かありましたら遠慮なくどうぞ」
良歌がそう言うと、恵が何やら言いづらそうに遠慮勝ちに手を挙げて質問する。
「あの、今になってお伺いするのも失礼ですが捜査とは全く違う話になりますが、村富警視監の今日の服装ですが、何方かお出かけする予定ですか?」
なんとなく聞かれるであろう質問に少し気恥ずかしそうに答える。
「ああこれですか?これは馬堂総監から提案されたことですが、試験的に上層部だけ制服ではなくカジュアルな服装で仕事してみないかとお話をいただき、この格好でいます」
今日の良歌の服装は、白いジャケットに淡いピンクのシャツに紺色のタイトスカートである。
性別問わず誰もが振り返りそうなバリバリのキャリアウーマンの雰囲気が出ている。
「いいじゃないですかその服装」
「出勤途中で声をかけられませんでしたか?」
綾菜と歩果からの質問に頬をかき答える。
「ええそうね。モデルをやってみませんかとスカウトさんに声をかけられましたが警視庁のIDカードを見せて丁重にお断りしました。そんな感じで、しばらく上層部だけですが今後は警視庁全体でも取り組む予定です」
そう話終えたところで、
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。任務お疲れ様でした」
水色コートを着た怜司が入室すると良歌が労いの言葉をかける。
「総監が不在というのは連絡をいただいているので、よろしければこれにサインいただけますか?」
「ええもちろん」
任務から戻って来て早々に良歌に渡したものは資金証で犯罪が起きた現場で犯罪者が不正に得たお金や小切手などをJSIA捜査機関の資金にするにあたって正式な手続きをするため、上層部の署名が必要になる。
「上層部でも服装を変えてみることもお話をいただきましたが、お似合いですよ」
「それを先ほど言われていたところですよ」
怜司にも言われて満更でもなさそうにして、署名した資金証を渡す。
「話が変わりますが氷山君の方で最近捜査して気になることはありますか?」
良歌に問われると少しの考え込みスマホを取り出し、宙に20~30代の男性1名と女性2名の画像を反映させ話を始める。
「昨日と一昨日に撮影させていただいた写真ですが街中を歩いていて違和感があり今取り上げている方々に声をかけてみました」
「以前の権藤さんが起こした事例があったとでも?」
推測の域ではあるが確信を突く時光の言葉に怜司は頷き、撮影された人たちの当時の画像にサーモグラフィーに簡易医療測定が搭載された機能を用いて違和感があるところを指摘する。
「この通り極端な高熱や病気は確認されないが、左腕に注射されているところを見ていただければわかるかと」
「注射であれば予防接種という目的で打った可能性が考えられるけど何に行き詰まっているのかな?」
綾菜の疑問に頷き、画像を左腕の部分に拡大して話を続ける。
「それぞれ体格に差はあれ、寸分の狂いもなく的確な注射をしているだけではなく人に痛覚を可能な限り与えない部分に打ち込んでいるあたりが不気味に思って話をさせていただきました」
怜司が話を終えると歩果が思ったことを述べる。
「確かにここまで正確無比に注射出来ることは相当な腕の立つ人でなければ出来ませんし嫌な感じがしますね」
続けて恵が手を挙げて質問する。
「注射が正確に打たれたことはわかりましたが、それに含まれている成分はわかっていますか?」
「そこについては医療機関にいる森園先生に依頼をかけているよ。科捜研だと時間がかかるため早々に調べをつけた方が良いかと」
怜司はメンバーに提案して展開している画像を閉じ良歌に申請する。
「引き続き私の方でも捜査しますが総監から依頼されている任務の中でも片付けておきたい案件もあるのでこれで」
頭を下げて退室しようとするところ良歌が、
「あ、ちょっと待って氷山君。最後に一つ、先ほど取り上げた方々がいたエリアを教えていただきたいのですがよろしいですか?」
「ああそうでしたね、失礼しました。男性が吉祥寺で女性がそれぞれ新宿と渋谷エリアで、誰が何処を捜査するのか、お任せしてよろしいですか?」
「ええ。引き留めてしまってごめんなさい。気をつけていってらっしゃい」
改めて怜司が頭を下げ会議室を後にする。
「さて氷山君から持ち出された話で捜査方針はほぼ決まってしまいましたが、それでも他にありますか?」
メンバーから話を伺おうと見渡すが緊急を要したこともなかった。
少し間が空いたところで捜査方針を伝える。
「では改めて今後皆さんにしていただくことについて話をさせていただきますと、新宿、渋谷、吉祥寺のエリアに分かれて巡回していただきます」
基盤となることをハッキリさせて話を続ける。
「池波君の索敵魔法と夕里さんの精神念話で巡回するメンバーのサポートをしていただき、先ほど氷山君の話にあった人たちがいれば医療機関に搬送させて検査を受けていただくように説得してください」
大まかな流れの説明を受けて恵が手を挙げて質問する。
「やろうとすることは大体わかりましたが的確にその人だけを見つけて説得するにも時間がかかりますが、そこについてどう考えていますか?」
良歌はその質問に頷き、右手を翳して修助の座るテーブルの前に小さい魔法陣を展開させリストバンドに模した物を出す。
「村富警視監これは…」
修助の言葉に答える。
「危険度観測支援具で氷山君が使っていた簡易医療測定とはまた使い勝手が異なるものの具体的な数値を測定することが出来ます」
説明を受けて両腕にバンドを装着して確認すると、
「こ、これは…」
「そう、池波君視点からだと周りにいる皆さんの体温はもちろん、色でパーセンテージが表示されていませんか?」
「ええ」
周囲にいるメンバーの頭上に具体的な体温と水色でそれぞれ4~6%前後の数値が記されてある。
右下に天気予報の降水量を示しているように、水色で10%以下がほぼ安全、黄色で11~30%が注意、オレンジ色で31~50%が警戒、赤色で51~69%が厳重警戒、紫色で70%が危険と具体的な数値と色でわかりやすくなっている。
それだけではなく自分を纏うように翡翠色のオーラが展開されていることにも気づき、
「修助ちゃんそれは…」
綾菜の言葉に修助が良歌に尋ねるよりも早く説明を続ける。
「展開されているオーラの名称は自動安全魔導障壁で私はこれを自安壁と呼んでいます」
まずはオーラの名前をハッキリとさせた後に使用方法を説明する。
「術者である本人はもちろん、自分以外の周囲にいる人に自安壁を展開させることが出来ます。術者本人の魔力や技術にもよりますが自分を含めた最大3人を目安に展開出来るように調整してあります。魔力を必要以上に消費させないため、また枯渇しないため一定の数値を越えたら自動的に自安壁が解除する仕組みにもなっているため使用配分にも気をつけて展開するといいでしょう」
「わかりました」
説明を受けて早速、近くの席に座っている真奈に自安壁を展開させる。
「不快感や倦怠感の方はどうかな?」
「問題ないわ。それにしても結構不思議な感覚ね」
真奈が実際に自安壁の感触を確かめてみると、ブンッと磁石がくっつかず反発する原理に近いことが確かめられた。
その様子が確認出来たところで良歌は自安壁の補足について伝える。
「更にこの自安壁の使用について術者の魔力を注ぎ込む分だけ壁の強度を高めることが出来て外部からの襲撃を防ぐことも出来ます。術にかけられている夕里さんも有効ですが一度展開を解除してしまい、もう一度同じ効力を得たい場合にバンドを装着している池波君から魔力を供給しなければ効力は得られないので気をつけてください。色々説明しましたが、これに関しては私の口から説明するより、やってみせた方が早いので森園君、今から池波君に殴りかかっていただけますか?」
「わかりました。本気でやって大丈夫ですね?」
「もちろん」
その確認がとれて2人は立ち上がって向かい合い時光が態勢を整える。
「それじゃあ修助君、準備はいいかな?」
「いつでもいいよ」
時光が勢いをつけて殴りかかろうとするも、壁に注ぎ込まれている魔力が協力ということもあり、思った以上に弾き飛ばされる結果になった。
当人たちはもちろん、その様子を見ていたメンバーも呆気に取られていた。
「時光くん大丈夫?怪我はない?」
「ああ大丈夫だよ。想像していた以上に頑丈だねそれ」
実際に殴りかかって感想を述べる時光の後に、念を押すように良歌は説明を加える。
「可能な限り対策を皆さんに提供しましたが、それでも付け入る隙があるかもしれないので池波君と夕里さん、それに加えて医療という面から見ていただきたく松法さん、貴女にも2人の立場と同じ位置に回っていただけますか?
」
その言葉に綾菜は真っ直ぐ見据え答える。
「わかりました。状況にもよりますが医療の方が切羽詰まりそうな時はそちらの対応に回る形でよろしいですか?」
「ええ、その流れでお願いします」
動きの確認が取れたところで次に、
「三重月さんには森園先生がいる医療機関で支援をお願いします。事態の遅れをとられないため準備を整えていただけると助かります」
「承りました。もとからそのつもりでいたので大丈夫ですよ」
「頼もしいですね」
歩果の心構えに良歌は微笑んで言ってみせる。
最後に現場を巡回するメンバーを発表する。
「ではこれから現場を巡回するエリアと名前を申し上げます。渋谷エリアを倉ノ葉志穂さん、美穂さん。新宿エリアを下鶴さん、中野院さん。吉祥寺エリアを一人で申し訳ありませんが森園君。くれぐれも無理のないように慎重にお願いします」
「「「「「はい!」」」」」
「ではこれにて会議を終了します」
メンバーは任務遂行のためそれぞれ行動に移すのである。
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拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
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