魔法犯罪の真実

水山 蓮司

文字の大きさ
38 / 56
第2章 血の追求者

2-04:背後から迫る魔の手

しおりを挟む
 とある薄暗い部屋の中、本部のメンバーから脱退してその本部に潰しにかかろうとする若弥と一人の女性がいる。
「さていよいよ動き出して来る頃ですかね」
「みたいですわね。まあ焦らずゆっくり見させていただくとしますわ」
 若弥が頃合いを確かめると、女性の方は焦る様子がなくゆっくりしている。
「その様子から察するに余裕がありそうですが策でもおありで?」
 すると女性はクスッと笑い返答する。
「そこのところは私が説明するよりご自身の目で確かめた方が早いですわ。何より…」
「何より?」
「あまりその先を話してしまうと楽しみがなくなってしまうのでこのへんで」
「お伺いしたかったのに少し残念ですね」
 女性はもったいぶって若弥を焦らす。
「話を変えさせていただきますが小堂さん、お答えづらいかもしれませんが今一度改めて、何故メンバーを脱退されたのかお聞かせ願えますか?」
 今の若弥からすれば嫌な質問のように思えることかもしれないワードを女性はハッキリさせたいため確信を突くように問うと、若弥は微塵みじんもなく答える。
「以前お会いした時にチラッと言っただけで、ちゃんと話せていませんでしたね」
「無理に話せとは申し上げませんわ。可能な範囲で構いません。よろしくて?」
「わかりました」
 深呼吸して目を閉じて頃合いを見計らって話を始める。
「少し前置きが長くなりますが、まずメンバーに選抜されるためひたすら頑張れたキッカケが当時、権藤さんを含めたあなた方の代の活躍によるものでした。犯罪も僕が知る限る目に見えて減少傾向にあった時だと記憶しています。しかしそんな時に何らかの事件なのか事故なのか内部による穏やかではない出来事なのか、いずれにしてもそのことによって本部が解散されてしまいメンバーがバラバラになった時は言葉が出ませんでした。それから月日が経って僕を含めたメンバーが選抜され本部が新たに設立されました。そこで僕は思いました。先代で成し得なかったことを僕らの代でやっていこうと、しかしメンバーとの足並みが合わず、それどころか少しずつ外れているのか、外されているのか被害妄想だと思われるかもしれませんが、そんな感覚が生じた時からメンバーから外れようと考えていました」
 若弥が話をしている時、口を挟まず聞いていた女性が尋ねる。
「ひとつ、先ほど私たちの活躍と仰いましたが何時それをご存じで?私が当時現役でいた時は小堂さん、貴方は高校生だったのでは?」
 その疑問に対して若弥は真っ直ぐ見据えて答える。 
「それは僕がメンバーに選抜されて総監に無理を言って先代の記録を見させていただいた時に知ることが出来ました。数多くあるうちのほんの一部分ですが、それを映像として見せていただきあなた方の存在をそこで知りました」
 その答えに口元を抑え上品にフフッと笑う。
「そうでしたの。本来であればどんなに無理を言っても閲覧出来ない記録なのによくもまあ見ることが出来るとは総監も緩くなってしまわれたのですね」
「と仰いますと?」
 より具体的な鉄茂の変化について若弥は尋ねる。
「自分にはもちろん相手にもかなり厳しく冗談が通じない、笑わない方でしたよ。典型的に文字通り鬼のような性格をされていたので当時の記録を見せていただいたことを聞いて耳を疑いましたわ」
「そうだったんですか…。一体何をキッカケにしてそこまで性格が変化したのか心当たりはありますか?」
「いいえ全く。むしろこちらが伺いたいくらいですわ」
 女性は肩を竦めて答える。
「今の総監の状況についてわかりました。ふたつ、本部を潰しにかかることも承知しております。ただ何故私たちの代なのか、他にも優秀な方がいらっしゃる中で私たちを選抜した理由について教えていただけますか?」
 その問いに若弥は迷いなく答える。
「先ほど申し上げた僕があなた方の代の活躍を見ていたことが深く印象に残っていたこともそうですが、決定打になる理由として実践経験です」
「実践経験?」
 イマイチ容量が得られず言葉をそっくり返すと若弥は具体的なところを指し示す。
「僕らの代でも犯罪者を捕らえる時に状況にもよりますが、一対一になることも珍しくないですが、安全性を配慮して確実に捕らえるため複数でかかる形をとっています。たとえ1人でも大丈夫そうな状況でも万が一を考えて取り計らってのことです。また複数人の犯罪者がいた時も然りです」
 まずは今まで自分が経験してきたことを述べ比較するように今度は先代の方針がどういうものなのかを述べる。
「しかし現役だったあなた方は一対一はもちろん、複数人相手がいたとしても自分一人で片付けられるのであればそうしていた。もちろん安全性の配慮はありましたが最小限で済んでいるように見えました」
 双方の方針を踏まえた上でこう語る。
「つまり複数人を相手にしてきた場数だけではなく最悪の事態、最善の方法どちらになっても動けるだけの機動力が圧倒的にあなた方の方が上だということを思い知らされました」
 一通り若弥の話を聞いた女性は何を言おうかフウッと一息ついて話す。
「確かに小堂さん、貴方の仰っていたことに心当たりがあるので否定はしませんが、それはあくまで私たちの持つそれぞれの力がメンバーの持つ力と喧嘩してしまうため連携が取れず一人で対処していただけですわ。それに当然ですが私は万能ではありませんので過信されないようにお願いしますわ」
 釘を刺すように強めに言うと、若弥はその勢いに少し怯み答える。
「もちろんそのつもりです。無理強いさせません。必要とあらば支援させていただきますが、その際、どうされますか?」
 確認のため尋ねると考え込むようにして少し黙り、やがて答える。
「そうですわね…。メンバーの動きもゆっくり見ておきたいのと、確実に成功させるため準備が必要になるので考案が固まり次第お伝えするので」
「わかりました。僕の方でもメンバーの動きを確認しておきます」
「そうしてくだされ」
 互いの動きを確認して最後に、
「そして、みっつ目はメンバー複数でかかってくる可能性が高いのでそれを前提として殺傷能力の高い攻撃を仕掛けてきた場合に私の方もそれに応じた高い攻撃、もしくは最悪殺されそうな状況に陥った場合、よろしくて?」
 含みのある物騒な物言いに背筋がゾッとするが若弥は苦笑いして答える。
「可能性は充分に考えられますので構いませんよ。ただし過剰殺戮かじょうさつりくはただの犯罪になるのでお忘れなく。僕がやろうとしているのは本部を崩壊させることです。そこにメンバーの妨害が入ってくることはわかりますが、そのメンバーに目にものを見せてやりたいのでそこも念頭に。如何に自分たちが非力だということを思い知ってもうらうためにもね」
 口元をニイッと綻ばせる若弥の本日で最も狂気に満ちた表情である。
 その様子を見た女性が冗談っぽく笑って言ってみせる
「小堂さん、貴方も大概殺戮ですよ。人に言っておいて自分がそんな感じでは説得力に欠けますわ」
「これは失礼しました。思っていたことが現実になった瞬間が最も楽しくてなりません」
「まるで新しい玩具を買ってもらって喜ぶ子どもみたいですわね。浮かれ過ぎて足を掬われないように気をつけてくださいな」
 その忠告に若弥は自分の胸に手をあて気持ちを落ち着ける。
「言われずとも考えていますよ。そのためにメンバーを集めたのですから」
「私はもう一段落準備をしますので本日はここで失礼しますわ」
 そう言って部屋を後にした。
「さて皆はどんな顔をして苦しむのか楽しみだね」
 笑いを堪えて、そう口にする若弥であった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...