魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第2章 血の追求者

2-22:募る想いの先に

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 菫との戦闘を繰り広げてからの翌日、テレビやネットで絵実が言っていた緊急医療特別措置令が発令された。
 メンバーの輪の中に入って話を済ませた後に絵実はやるべきことをやって夕方頃に記者会見に臨んだ。
 メンバーに伝えた内容を含め、より可能な限りわかりやすく簡潔にまとめて説明した。
 全国に向けて説明したという内容はこうだった。

――近日中に予防接種などで注射をされた方で痛みやだるさが酷く感じた場合に医療機関でその症状を抑え込む治療を受診するか、自宅にて薬での療養を行うか、それを選んでいただき、1週間から10日前後外出をしないこと。
 外出せざるを得ない場合、例えば身内で緊急手術に立ち会うことや葬儀に出席しなければならないなどと言った事情が挟むケース、その事情以外で言うなれば身体が芳しくなく医師に直接診察してもらう必要性のある人なら、医療機関あるいは保健所の担当医に問い合わせて指示に従うようにすること。
 海外に住んでいる人で日本に帰還する希望のある人はまず検査を受診していただき、陽性、陰性問わず専用のホテルに2週間、安全が確認出来るまで待機してもらうこと。
 また外国から仕事や観光目的での入国は医療機関が安全と確認出来るまで停止する――

 医療機関での注射を受診する方法と自宅療養はフリップで示し、それぞれのメリット、デメリットを見せて説明した。
 当然だがその場に出席した記者たちの反応に温度差があり絵実はその中で質疑応答して不安や疑念を可能な限り解消、出来るだけの説明をした。
 国や自治体が説明するより説得力があるだけではなく納得させられるだけの力や人々の尊い命を守る頼もしい後ろ盾があり、絵実が1人でやっているわけではないことも添えて言葉にしていた。
 その会見の効果で人の流れが大幅に減ったわけではないが協力する人々が出てきたことも事実である。
 実際に医療機関でホームページを閲覧して自宅待機する人と医療機関で受診する人での問い合わせが殺到することが予想出来たため適切な対応が取れてトラブルが起きても許容範囲にとどめることも出来た。
 それでも人の流れを自分たちが望んでいるところまで抑え切ることが出来ず搬送されて来る人の治療にあたっている。
 発令されて3日が経とうとするところ、日数以上に内容が濃く時光たちもギリギリのところまで踏ん張って捜査に取りかかっている。
「このままの状況が長引くとさすがに厳しいな。東雲さんを引っ張り出さないことには話が進まないか…」
「そうだね。こればかりは本人を追求しないと同じことの繰り返しみたいだからね」
 早朝に時光と舞香がJSIA本部の会議室でそう話をしている。
「おはようお二人さん。相変わらず早いわね」
 真奈が少し疲れ気味で会議室に入ってくる。
「まあもう習慣になって。こうじゃないと落ち着かなくて」
「私もそんな感じかな。家でダラダラするの好きじゃないし」
「それもそうか。私も2人が先に来ていないと不信感があるし」
 思ったことをそれぞれ述べていると、
「おはようございます皆さん」
 少し時間が経った後に恵が会議室に入ってくる。
「おはよう恵さん」
「おはよう恵ちゃん」
「おはよう」
 時光、舞香、真奈がそれぞれ挨拶して恵が思ったことを告げる。
「綾菜さんと歩果さんはしばらく医療機関でしたね。無理されていなければいいのですが…」
「こればかりはね…。絵実先生が凄腕の人だからといって一人で大勢の人の治療は厳しいからね。本人が平気と言っても万が一のことを考えておかないと大変なことになるのは目に見えているから」
「それもそうですね」
 真奈も最悪の事態にならないことを考えて言うと、恵も2人のことを気にかけて短く言葉にすると、
「おはよう皆」
 修助が会議室に入ってくる。
「おはよう修助クン。そういえば志穂と美穂がこの時間になっても来ていないけど2人を見た?」
 舞香がふと何か思い出したかのように修助に尋ねると、
「いいや見ていないけど2人の身に何か?」
 修助にも心当たりがなくメンバーに聞き返す。
「来て早々悪いけど2人の足取りをお願い出来るかな?」
「わかった。可能な限り早く行方を割り出そうか」
 時光の要望に修助は答えてメンバー全員オペレート室に移動する。
 そこで修助は索敵魔法を展開させ2人の足取りを探索すること数十秒、2人と思わしき姿を発見してエリアを確定させる。
 そこは元々、人の流れが多く医療機関に搬送させることが大変な渋谷エリアであった。
「ちょっとあの2人、何を考えているのよ!」
 信じられないと言わんばかりに真っ先に念話で2人に説得しようと準備に取りかかろうとしたが、
「真奈さん、あの2人に任せてみないか?」
 時光が真奈の肩に手を置き言うと、
「今自分が何を言っているのかわかってそうしているの?」
 時光にくってかかり追求しようとするところ、
「真奈、私も時光クンの意見に賛成だよ。悔しいけど東雲さんが仕掛けてくる攻撃に上手く順応出来る速度あるメンバーだと志穂と美穂が適任だから」
 舞香が時光を援護すると恵も続く。
「私もその方が良いかと思います。オペレート室で東雲さんの動きを見ている2人ならきっと捕らえてくれると信じています」
「あのねぇ、2人の身にもしものことがあったとして責任とる覚悟は出来ているの?」
 呆れ気味にダメ元で反論するが、それをたたみかけるようにして修助が諭す。
「そうならないために俺らで出来ることを一つ一つやっていくことが最善じゃないかな?今までそうしてきたでしょ?」
「わかったわよ。ただしやるからには中途半端は許さないわよ。下手すれば大勢の人の命がかかっているんだから最後までやり通すこと。これで文句ないでしょ?」
 溜息を吐き少しずつ腹をくくり時光の提案に真奈が便乗する。
「ありがとう真奈さん。今はそれで充分だよ。それにきっと今回も大丈夫だから」
「何を根拠に言っているのよ?」
 時光の言葉に愚痴をこぼしつつ、どことなく頼った言い方をすると、
「根拠なんてないさ。ここにいる皆といれば自然とそう思える。ただそれだけだよ」
「アハハッ、時光クンらしいや。あれこれ難しく考えるより私はそっちがいいかな」
 ケタケタ笑いながら時光の言葉に共感するとその場が和む。
「本当にこれで何だかんだでやってこられたことに今更ながら不思議に思うわ」
「それでも憎み切れも嫌いになったりしないでしょ?」
「まあね」
 修助の言葉に否定せず真奈は肩を竦めて答える。
 改めて気持ちを切り替えて呼吸を整えて真奈からメンバーに告げる。
「それじゃあ志穂と美穂がいる渋谷エリア以外で今まで捜査していたエリアはもちろん、そのエリア以外で踏み切れていないエリアがあれば自分の匙加減で構わないから、そのエリアでの捜査もお願いするわ」
 そう言い終えて最後に時光からも告げる。
「無理、油断、焦りは禁物。今日でこの事態を終わらせる気持ちで臨んでいこう!」
「「「「もちろん!」」」」
 一丸となり捜査に取り掛かるメンバーである。

 

 
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