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第二章『幼なじみと剣士の男』
24.新たな旅の始まり
――早朝、王都サフィーア『西門』
夜の名残をわずかに引きずった空の下、冷たい風が通り抜ける。吐く息は白くほどけ、指先のぬくもりを奪っていった。
王都の外れ、まだ陽が地平をかすめたばかりの西門で、ハルトとダグラスが荷を積み込んでいる。木箱の軋む音、革紐を締める音が、静まり返った石畳の街に淡く響いた。
カーラは両手を擦り合わせ、小さく肩を震わせた。冷気が頬を刺し、わずかに涙が滲む。
その様子に気づいたクレアが、外套の裾を揺らして近づく。
「カーラ様、先にご自身の馬車に乗られては?」
「い、いえ!皆さんが働いているのに、私だけ暖かい場所にはいけません」
「そう……ですか。では、ブランケットをお持ちしますので、もう少しお待ちください」
「あ、ありがとうございます」
クレアが柔らかく微笑み、馬車の影へと歩いていく。
その背を見送りながら、朝の光がゆっくりと王都の石壁を金色に染めはじめた。
やがて、荷を積み終えたハルトが額の汗を拭った。
「……よし、これで全部ですね」
「あぁ。助かった」
差し出された大きな手を握り、引っ張られるように荷台から降りる。
その一瞬の温もりに、仲間という存在の確かさを感じる。――きっと僕は、少しずつ変わり始めているのだろう。
「……うん、出発しよう!」
「あぁ、荷馬車は俺が引こう」
「おーけー!」
「うんっ!」
朝焼けがそれぞれの瞳を照らし、蹄と車輪が動き出す。
こうして迎えた新たな旅立ち。
二台の馬車は、金色に染まる道を――未来へと駆けていった。
――
舗装された道が土道に変わり、ひと月ほど前に見た景色が流れていく。
ほんの少し前のはずなのに、もう懐かしさを覚えてしまう。
荷馬車の後ろで腰を下ろし、揺れに身を任せる。外の景色に齧りつくアンと、隅で丸くなって眠るグラ。
ダグラスの操る手綱は安定していて、その心地よさに自分まで眠気を誘われそうだった。
クレアはカーラの使用人が操る高価な馬車に乗り、少し離れて後ろをついてきている。
今ごろは、女性同士の穏やかな会話に花を咲かせていることだろう。
冷たい朝を淡い光で照らしていた太陽は、いつの間にか高く昇り、昼前の強い陽射しで大地を包んでいた。
すでにランスホーンの縄張りは過ぎ、以前よりずっと速いペースで進んでいるのがわかる。
だが、旅路はまだ長い。
十日をかけて、芸能の街――『ウォパール』を目指すことになる。
見慣れた土道も、広がる平原も――この旅では、まだ『始まりの道』にすぎない
ふと、ダグラスの背中を見て、ある違和感に気づいた。
「あれ?ダグラス、剣新しくしたの?すごい綺麗な色だね」
「ん?あぁ、いや。これは昔親から貰ったのだ。あまり好きじゃないんだが、これが一番上等でな。何があるか分からない遠征だ。鈍らじゃ心許ないだろ?」
彼の背にある大剣は、むき出しになった白銀の刀身が革製のベルトで固定されていた。真っ青な玉が飾られた鍔から雷かひびのような模様が走っている。
以前使っていた両刃の鋼剣ではない。白銀の大きな片刃剣。
「もしかして……帝国の――わっ!」
「うワっ!」
その瞬間、車輪が段差に乗り上げ、一度だけ高く跳ねた。拍子に体制を崩したハルトとアンが、驚きの声を上げて身体を強ばらせる。
「悪い!大丈夫か?」
「いってて、だ、大丈夫」
「うぅ、舌噛んラ」
「す、すまん。もうすぐ昼休憩だ。その時クレアに見てもらおう」
焦ったように声を荒らげたダグラス。彼が再び進路に目線を向けると、広い肩が深く息を吐いた。
その姿に敏感に反応した胸を撫でる。軽く首を振ってモヤを晴らそうとしたが、今は口を噤んだ。
視線を落とした先で、傍らに寝かせた長剣の柄が包んだ布からはみ出ている。
彼もまた――何かを隠して生きているんだろうか。
外していたフードを深く被り直し、木箱に背をもたれて座りなおす。硬い床の質感が貧民街にいた頃の自分を思い出させ、感傷に浸るようにゆっくりと目を瞑った。
――同日の昼過ぎ、アメントリ郊外『糸の森』深部
蝶の羽ばたきほどのそよ風が、木々の隙間を縫って冷たい空気を動かす。枝先の葉すら揺れない静寂の中、乾いた土を踏む音と荒い息遣いがそこにあった。
「はぁ……はぁ……、んぐっ」
上等なローブに蜘蛛の巣を纏い、泥で汚れた腰の辺りから、留まりつづけていた枯葉がひらりと落ちる。
目尻から頬を伝う冷たい汗。喉の乾きに唾を飲み込みながらも、休まず歩き続ける。
冒険者でもないあたしが、まさか一人で森を歩くなんて、思ってもいなかった。魔物の脅威は身に染みて分かっているくせに、復讐の為にこんなことをするなんて――。
鋭く尖った目を一層つりあげ、眉間に深い皺を作る女――ダリア。
マントの下に着ていたのはいつもの制服ではなく、黒い長ズボンに白いオフショルダー。そして血のような赤の胸丈の上着に袖を通し、一歩進む度に裾が顔を覗かせる。
木の虚や洞窟、時には地面に転がり夜を過ごし、ひたすらにまっすぐ西を目指してきた。
アメントリから先を道なりに進むと、かなりの遠回りを強いられる。アイツが商会の連中と馬車で来るのなら、この森を突っ切らなければあの町に先にたどり着くことはできない。
「はぁ、はぁ……ギリッ」
顔を思い出しただけで苛立ちが沸き上がり、吐き出す息を噛み切って軋ませた。それと共に、あの夜の惨状が脳裏に映される――。
『ケハン!ダリア!――逃げてぇぇぇぇ!!』
『ママ!!パパ!!』
『ダリア!!来るな!逃げろ!!!』
『父さん!!母さぁぁぁぁぁん!!』
『――お前たちが……お前たちのせいで!!くそがぁぁぁぁぁぁぁ!』
グシャッ――。
なにか柔らかいものを踏み抜き、思わず肩を跳ねさせ固まった。足元にあったのは――頭を潰され痙攣した、小さなグリーンワーム。この季節にこの大きさ。もう死を待つだけだった、成虫になれない個体だ。
「……魔物を嫌う私があんたに詳しくなるなんて、どんな皮肉かしらね」
持ち上げた足に着いた青い体液に虫酸が走る。まだ小さく動き続ける身体に吐き気がする。
やがて、再び進み始めた彼女の背後には――原型を留めぬ白い挽肉が、青い水溜まりの中心に落ちていた。
「兄さん、パパ、ママ……。絶対に許さない……『モンスターテイマー』」
――夜、織り手の街『アメントリ』
テラコッタの街並みに、街灯の灯りが溶けるように落ちた。糸のように細い三日月のそばで、星々が静かに瞬き、夜空を銀の粉で飾ってる。
まだ微かに残る甘い染料の香りと、明るく輝く建物から広がる香辛料の匂いが混ざり合う。
店先で酒を片手に騒ぐ人々の奥。そこには、カウンターに並び座るダグラスとクレアの姿はあった。
「んーっ!生き返るー!!」
「高級上等な馬車に座っといてよく言う。俺はずっと木の板の上だぞ」
「あら?これくらいで音をあげちゃって、鍛えたりないんじゃないの?」
「バカ言うな、お前よりよっぽど鍛えてるぞ。オマケに散々歩き回って、腰も背中もバキバキだ」
上機嫌に酒を煽るクレアの隣で、ため息をこぼし頬杖をつくダグラス。そのまま小さく口を開き、傍に置かれた煮豆の山から一粒を摘んで放り込んだ。
その後も一行は順調に馬を走らせ、何の苦難もなく夕刻にはアメントリへたどり着いた。早々に宿の確保を済ませた後、彼らは各々で自由行動にうつっていった。
クレアと共に取引先へ挨拶に向かったダグラスは、渡したお土産以上にもらってしまった品を運ぶ羽目になってしまった。
何度も馬車との往復をさせられ、気がついた時には空気が冷え切り、空には満点の星。いいように使われた、とボヤきたくもなる。
「……そういえば」
刹那、クレアがおもむろに口を開き、喧騒のに飲まれそうなほど小さく呟く。
「ハルトくんと何かあった?」
そう言いながら、彼女はまた酒を口元に運ぶ。
言葉の意味を理解すると、泡の消えた酒の水面を見つめ、情けない顔をそこに写す。
胸の奥に隠した感情と記憶を呼び起こし、一度強く握った拳を柔らかく解いた。
「……ハルトは何でもよく知ってる、勘も鋭い。剣一本で俺の過去に気づたみたいだ」
隠していたかった秘密――帝国との関係、これまでの人生。それらが脳裏に流れ込み、心臓を優しく、静かに締め付ける。
「そっかぁ……。ハルトくんがフードに隠れちゃってたのはそういうことね。……ついにバレちゃうかぁ」
彼女の言葉はどこか他人事。視線は天井の隅に向かい、手には常に酒が握られている。
「……それで、あなたはどうしたいの?」
「……」
答えも言葉も見つからない。
『どうするべきか』と問われれば、正直に伝えるべきだと答えられる。だが、『どうしたいか』と言われると、また喉が締め付けられ、悩む心境すら言葉にできない。
「ハルトくんは優しいから、きっと隠し続けても仲間でいてくれる。オリバーの時だって、ずっとそうしてたから」
きっとそうなのだろう。
彼にとって誰かの秘密とは、胸の奥にある悲しい闇の一部にすぎない。例えそれが敵である事実だとしても、信頼を揺るがすほどの影響は与えない。だが――
「でもね、きっと待ってるんだと思うわ。自ら明かしてくれるのを」
「……あぁ。ハルトにはいつか話さないといけない。あいつはモンスターテイマーだと教えてくれたのに、俺だけ隠し続けるようなこと……」
口から出た言葉と裏腹に、覚悟を決められない心。見つめていたグラスから、冷たい結露が指に伝う。
「…………。もう少し考えてみて。あなたはこれから『どうしたいか』を」
直後、残っていた酒を一気に流し入れ、立ち上がるクレア。ダグラスの傍に数枚の紙幣を置くと「飲みすぎないでね」と愛らしいウインクを残し、先に店を出ていった。
「……どうしたいか」
ぬるくなった酒を一口飲み、喉を無理やりこじ開ける。それでも――小さな息しか出なかった。
――同刻、アメントリ中央の宿『ハルトの部屋』
窓の外には淡い灯りが滲み、冷たい空気に溶けている。飲んだくれる大人たちの笑い声が遠くで響く。その明るさに、胸の奥が少しだけ疼いた。
ハルトは椅子に深く腰を下ろし、手に持つコーヒーの香りを嗅ぐ。
足元にはグラが座り、白い身体に部屋の明かりを揺らめかせていた。
淡く輝く青い瞳の先、そこには、アンへ震える指先を伸ばすカーラの姿があった。
「っ――うっ……」
残り僅かな距離で腕は引かれ、指先の震えは肩に伝わる。人に近い見た目をしたアンなら慣れやすいかと思ったが、まだ先は長そうだ。
「無理はしないでいいよ。まだまだ時間はあるから」
「う……うん、ごめんなさい」
額に汗を滲ませながら、震える身体を自分で抱きしめるカーラ。アンを呼んでグラの隣に座らせると、彼女はようやく肩を落としてその場に崩れるように座り込んだ。
今目の前にある光景が、この世界で当たり前に生きる人間の感性なのだろう。魔物が怖い――当然だと思う。
だが、旅に同行するのが僕じゃなければ、彼女をこんな気持ちにさせることはなかった――。そう考えると、胸が僅かに締め付けられ、曇っていく表情を隠せず俯く。
「……カーラ、やっぱり僕……この旅から抜け――」
「それはダメ!!」
溢れかけた感情に、強い言葉が蓋をした。驚き顔を上げると、目尻に涙を溜めた茶色い瞳が睨みつけている。
「やっと……やっと会えたの!!私は!ずっとハルくんを探してた!!見つけたら私が味方でいるんだって……ずっと思ってた!!」
真っ直ぐに放たれた叫びが心に深く刺さる。彼女の頬に零れたものを見つめ、胸がいっそう強く締め付けられる。
「でも……私分かってなかった。ハルくんの味方になるって意気込んで、覚悟したつもりになって。いざ再会したら魔物が――ハルくんの大切な仲間を怖いだなんて……」
「カーラ……」
一粒一粒と落ちていた雫が、いつの間にか大粒の雨となり、止めどなく床に降り注ぐ。
その涙を止めようと出しかけた手は、罪悪感に負けて強く握りこまれた。彼女を慰める言葉も見つけられず、戸惑う口元は開いたり閉じたりを繰り返した。
刹那――その様子を見つめていたアンが何かを思いついたように声を上げた。
「あっ、ねぇカーラ、ここは触れル?」
少女はおもむろに右翼を胸布に滑り込ませ、わずかにずらして左胸の一部を見せる。
顔を逸らしたハルトに対し、涙を拭うことも忘れ、遠くからそれを見つめるカーラ。
そこには絆の証である赤い印がはっきりと刻み込まれていた。
「これ、ハルトにもらっタ」
「……契約印」
力強く頷くアン。少女の優しさに突き動かされ、カーラは床を這うように――ゆっくりと距離を縮める。
再び伸ばされた指先が震え始める。再び吹き出した汗が額から鼻筋に伝い、涙と混じる。
顔を逸らしてハルトと目があったアンは、母親譲りの穏やかな笑みを浮かべ、静かに目を閉じた。
緊張と安らぎが惹かれ合うように、少しずつ近づいていく。
鼻先からポタリ――床で雫が跳ねた時――。
「……一歩、進めたネ」
アンの胸を指先で撫でる彼女の瞳には、淡い橙色の光を揺らす涙が溢れていた。安心か、喜びか、鼻を啜りながら、満面の笑みを浮かべて。
テイマーと魔物を繋げる絆の証――その印は今、人と魔物を繋げる証となった。
胸の奥から込み上げる熱が頬を緩ませる。目頭に伝わる前に、その景色をまた、瞳の奥に焼き付けた。
そしてカーラもまた、この手に触れる温もりを忘れることはないだろう。
「アン、ありがとう」
「うン。ハルトの魔力が、ここにあるかラ」
頭を撫でると少女は頬を赤らめ、恥ずかしそうに口角を上げた。アンもまた、勇気を出してくれたのだろう。
それからしばらく、カーラはアンの印に触れ続けていた。アンも落ち着いた表情でそれを見つめ、彼女が飽きるまでそこにいた。
夜も深け、寒さが指先が凍せ始めた頃。帰宅したクレアに急かされるようにそれぞれの部屋に戻り、眠りについた。
――翌日の早朝、アメントリ『馬車の停留地』
二日目の朝。空には薄らと雲がかかり、太陽は身を隠してしまっている。冷えきった強風が吹き付け、フードを被っていられない。
「……雨はまだ降らないだろうが、向かい風だな」
ダグラスが短い髪を靡かせ、白金の瞳で空を睨みつける。その姿がザバールの地下室で見た顔と重なり、根拠のない不安が脳裏にちらつく。
ふと、昨日は一番に来て馬車の準備をしていた人物がいないことに気がついた。
「カーラ、使用人さんは?」
「キオは今、水の補充に行っています」
「キオさんという方なのですね。そういえば、挨拶がまだでした」
クレアの言葉を聞き、意識するでもなく「確かに」と声が漏れた。
カーラの使用人『キオ』……トワイライト家に仕えているにしては、礼儀がやや疎かに感じた。
僅かな沈黙に懐疑を感じ取ったカーラは、それを釈明するように言葉を続けていく。
「キオは言葉が話せません。馬車の操縦に長けた人材として最近雇ったんです。本人が人との関わりを避けていて……ご無礼がありましたら、申し訳ございません」
「そうなのか……分かった。昼にコーヒーでも持って行くか」
「ダグラス、あんまり困らせちゃだめよ?」
「お心遣い、ありがとうございます」
顔をわずかに傾げ、笑顔を振りまいたカーラ。
しかし、この暴れる風の中でハルトは――彼の存在だけは信じることができずにいた。いや、旅が始まった時からずっと――。
――
「――はい。本日の夜、モアサナに到着します。――はい。問題はありません。必ず汚名を返してまいります……ノーランド様」
夜の名残をわずかに引きずった空の下、冷たい風が通り抜ける。吐く息は白くほどけ、指先のぬくもりを奪っていった。
王都の外れ、まだ陽が地平をかすめたばかりの西門で、ハルトとダグラスが荷を積み込んでいる。木箱の軋む音、革紐を締める音が、静まり返った石畳の街に淡く響いた。
カーラは両手を擦り合わせ、小さく肩を震わせた。冷気が頬を刺し、わずかに涙が滲む。
その様子に気づいたクレアが、外套の裾を揺らして近づく。
「カーラ様、先にご自身の馬車に乗られては?」
「い、いえ!皆さんが働いているのに、私だけ暖かい場所にはいけません」
「そう……ですか。では、ブランケットをお持ちしますので、もう少しお待ちください」
「あ、ありがとうございます」
クレアが柔らかく微笑み、馬車の影へと歩いていく。
その背を見送りながら、朝の光がゆっくりと王都の石壁を金色に染めはじめた。
やがて、荷を積み終えたハルトが額の汗を拭った。
「……よし、これで全部ですね」
「あぁ。助かった」
差し出された大きな手を握り、引っ張られるように荷台から降りる。
その一瞬の温もりに、仲間という存在の確かさを感じる。――きっと僕は、少しずつ変わり始めているのだろう。
「……うん、出発しよう!」
「あぁ、荷馬車は俺が引こう」
「おーけー!」
「うんっ!」
朝焼けがそれぞれの瞳を照らし、蹄と車輪が動き出す。
こうして迎えた新たな旅立ち。
二台の馬車は、金色に染まる道を――未来へと駆けていった。
――
舗装された道が土道に変わり、ひと月ほど前に見た景色が流れていく。
ほんの少し前のはずなのに、もう懐かしさを覚えてしまう。
荷馬車の後ろで腰を下ろし、揺れに身を任せる。外の景色に齧りつくアンと、隅で丸くなって眠るグラ。
ダグラスの操る手綱は安定していて、その心地よさに自分まで眠気を誘われそうだった。
クレアはカーラの使用人が操る高価な馬車に乗り、少し離れて後ろをついてきている。
今ごろは、女性同士の穏やかな会話に花を咲かせていることだろう。
冷たい朝を淡い光で照らしていた太陽は、いつの間にか高く昇り、昼前の強い陽射しで大地を包んでいた。
すでにランスホーンの縄張りは過ぎ、以前よりずっと速いペースで進んでいるのがわかる。
だが、旅路はまだ長い。
十日をかけて、芸能の街――『ウォパール』を目指すことになる。
見慣れた土道も、広がる平原も――この旅では、まだ『始まりの道』にすぎない
ふと、ダグラスの背中を見て、ある違和感に気づいた。
「あれ?ダグラス、剣新しくしたの?すごい綺麗な色だね」
「ん?あぁ、いや。これは昔親から貰ったのだ。あまり好きじゃないんだが、これが一番上等でな。何があるか分からない遠征だ。鈍らじゃ心許ないだろ?」
彼の背にある大剣は、むき出しになった白銀の刀身が革製のベルトで固定されていた。真っ青な玉が飾られた鍔から雷かひびのような模様が走っている。
以前使っていた両刃の鋼剣ではない。白銀の大きな片刃剣。
「もしかして……帝国の――わっ!」
「うワっ!」
その瞬間、車輪が段差に乗り上げ、一度だけ高く跳ねた。拍子に体制を崩したハルトとアンが、驚きの声を上げて身体を強ばらせる。
「悪い!大丈夫か?」
「いってて、だ、大丈夫」
「うぅ、舌噛んラ」
「す、すまん。もうすぐ昼休憩だ。その時クレアに見てもらおう」
焦ったように声を荒らげたダグラス。彼が再び進路に目線を向けると、広い肩が深く息を吐いた。
その姿に敏感に反応した胸を撫でる。軽く首を振ってモヤを晴らそうとしたが、今は口を噤んだ。
視線を落とした先で、傍らに寝かせた長剣の柄が包んだ布からはみ出ている。
彼もまた――何かを隠して生きているんだろうか。
外していたフードを深く被り直し、木箱に背をもたれて座りなおす。硬い床の質感が貧民街にいた頃の自分を思い出させ、感傷に浸るようにゆっくりと目を瞑った。
――同日の昼過ぎ、アメントリ郊外『糸の森』深部
蝶の羽ばたきほどのそよ風が、木々の隙間を縫って冷たい空気を動かす。枝先の葉すら揺れない静寂の中、乾いた土を踏む音と荒い息遣いがそこにあった。
「はぁ……はぁ……、んぐっ」
上等なローブに蜘蛛の巣を纏い、泥で汚れた腰の辺りから、留まりつづけていた枯葉がひらりと落ちる。
目尻から頬を伝う冷たい汗。喉の乾きに唾を飲み込みながらも、休まず歩き続ける。
冒険者でもないあたしが、まさか一人で森を歩くなんて、思ってもいなかった。魔物の脅威は身に染みて分かっているくせに、復讐の為にこんなことをするなんて――。
鋭く尖った目を一層つりあげ、眉間に深い皺を作る女――ダリア。
マントの下に着ていたのはいつもの制服ではなく、黒い長ズボンに白いオフショルダー。そして血のような赤の胸丈の上着に袖を通し、一歩進む度に裾が顔を覗かせる。
木の虚や洞窟、時には地面に転がり夜を過ごし、ひたすらにまっすぐ西を目指してきた。
アメントリから先を道なりに進むと、かなりの遠回りを強いられる。アイツが商会の連中と馬車で来るのなら、この森を突っ切らなければあの町に先にたどり着くことはできない。
「はぁ、はぁ……ギリッ」
顔を思い出しただけで苛立ちが沸き上がり、吐き出す息を噛み切って軋ませた。それと共に、あの夜の惨状が脳裏に映される――。
『ケハン!ダリア!――逃げてぇぇぇぇ!!』
『ママ!!パパ!!』
『ダリア!!来るな!逃げろ!!!』
『父さん!!母さぁぁぁぁぁん!!』
『――お前たちが……お前たちのせいで!!くそがぁぁぁぁぁぁぁ!』
グシャッ――。
なにか柔らかいものを踏み抜き、思わず肩を跳ねさせ固まった。足元にあったのは――頭を潰され痙攣した、小さなグリーンワーム。この季節にこの大きさ。もう死を待つだけだった、成虫になれない個体だ。
「……魔物を嫌う私があんたに詳しくなるなんて、どんな皮肉かしらね」
持ち上げた足に着いた青い体液に虫酸が走る。まだ小さく動き続ける身体に吐き気がする。
やがて、再び進み始めた彼女の背後には――原型を留めぬ白い挽肉が、青い水溜まりの中心に落ちていた。
「兄さん、パパ、ママ……。絶対に許さない……『モンスターテイマー』」
――夜、織り手の街『アメントリ』
テラコッタの街並みに、街灯の灯りが溶けるように落ちた。糸のように細い三日月のそばで、星々が静かに瞬き、夜空を銀の粉で飾ってる。
まだ微かに残る甘い染料の香りと、明るく輝く建物から広がる香辛料の匂いが混ざり合う。
店先で酒を片手に騒ぐ人々の奥。そこには、カウンターに並び座るダグラスとクレアの姿はあった。
「んーっ!生き返るー!!」
「高級上等な馬車に座っといてよく言う。俺はずっと木の板の上だぞ」
「あら?これくらいで音をあげちゃって、鍛えたりないんじゃないの?」
「バカ言うな、お前よりよっぽど鍛えてるぞ。オマケに散々歩き回って、腰も背中もバキバキだ」
上機嫌に酒を煽るクレアの隣で、ため息をこぼし頬杖をつくダグラス。そのまま小さく口を開き、傍に置かれた煮豆の山から一粒を摘んで放り込んだ。
その後も一行は順調に馬を走らせ、何の苦難もなく夕刻にはアメントリへたどり着いた。早々に宿の確保を済ませた後、彼らは各々で自由行動にうつっていった。
クレアと共に取引先へ挨拶に向かったダグラスは、渡したお土産以上にもらってしまった品を運ぶ羽目になってしまった。
何度も馬車との往復をさせられ、気がついた時には空気が冷え切り、空には満点の星。いいように使われた、とボヤきたくもなる。
「……そういえば」
刹那、クレアがおもむろに口を開き、喧騒のに飲まれそうなほど小さく呟く。
「ハルトくんと何かあった?」
そう言いながら、彼女はまた酒を口元に運ぶ。
言葉の意味を理解すると、泡の消えた酒の水面を見つめ、情けない顔をそこに写す。
胸の奥に隠した感情と記憶を呼び起こし、一度強く握った拳を柔らかく解いた。
「……ハルトは何でもよく知ってる、勘も鋭い。剣一本で俺の過去に気づたみたいだ」
隠していたかった秘密――帝国との関係、これまでの人生。それらが脳裏に流れ込み、心臓を優しく、静かに締め付ける。
「そっかぁ……。ハルトくんがフードに隠れちゃってたのはそういうことね。……ついにバレちゃうかぁ」
彼女の言葉はどこか他人事。視線は天井の隅に向かい、手には常に酒が握られている。
「……それで、あなたはどうしたいの?」
「……」
答えも言葉も見つからない。
『どうするべきか』と問われれば、正直に伝えるべきだと答えられる。だが、『どうしたいか』と言われると、また喉が締め付けられ、悩む心境すら言葉にできない。
「ハルトくんは優しいから、きっと隠し続けても仲間でいてくれる。オリバーの時だって、ずっとそうしてたから」
きっとそうなのだろう。
彼にとって誰かの秘密とは、胸の奥にある悲しい闇の一部にすぎない。例えそれが敵である事実だとしても、信頼を揺るがすほどの影響は与えない。だが――
「でもね、きっと待ってるんだと思うわ。自ら明かしてくれるのを」
「……あぁ。ハルトにはいつか話さないといけない。あいつはモンスターテイマーだと教えてくれたのに、俺だけ隠し続けるようなこと……」
口から出た言葉と裏腹に、覚悟を決められない心。見つめていたグラスから、冷たい結露が指に伝う。
「…………。もう少し考えてみて。あなたはこれから『どうしたいか』を」
直後、残っていた酒を一気に流し入れ、立ち上がるクレア。ダグラスの傍に数枚の紙幣を置くと「飲みすぎないでね」と愛らしいウインクを残し、先に店を出ていった。
「……どうしたいか」
ぬるくなった酒を一口飲み、喉を無理やりこじ開ける。それでも――小さな息しか出なかった。
――同刻、アメントリ中央の宿『ハルトの部屋』
窓の外には淡い灯りが滲み、冷たい空気に溶けている。飲んだくれる大人たちの笑い声が遠くで響く。その明るさに、胸の奥が少しだけ疼いた。
ハルトは椅子に深く腰を下ろし、手に持つコーヒーの香りを嗅ぐ。
足元にはグラが座り、白い身体に部屋の明かりを揺らめかせていた。
淡く輝く青い瞳の先、そこには、アンへ震える指先を伸ばすカーラの姿があった。
「っ――うっ……」
残り僅かな距離で腕は引かれ、指先の震えは肩に伝わる。人に近い見た目をしたアンなら慣れやすいかと思ったが、まだ先は長そうだ。
「無理はしないでいいよ。まだまだ時間はあるから」
「う……うん、ごめんなさい」
額に汗を滲ませながら、震える身体を自分で抱きしめるカーラ。アンを呼んでグラの隣に座らせると、彼女はようやく肩を落としてその場に崩れるように座り込んだ。
今目の前にある光景が、この世界で当たり前に生きる人間の感性なのだろう。魔物が怖い――当然だと思う。
だが、旅に同行するのが僕じゃなければ、彼女をこんな気持ちにさせることはなかった――。そう考えると、胸が僅かに締め付けられ、曇っていく表情を隠せず俯く。
「……カーラ、やっぱり僕……この旅から抜け――」
「それはダメ!!」
溢れかけた感情に、強い言葉が蓋をした。驚き顔を上げると、目尻に涙を溜めた茶色い瞳が睨みつけている。
「やっと……やっと会えたの!!私は!ずっとハルくんを探してた!!見つけたら私が味方でいるんだって……ずっと思ってた!!」
真っ直ぐに放たれた叫びが心に深く刺さる。彼女の頬に零れたものを見つめ、胸がいっそう強く締め付けられる。
「でも……私分かってなかった。ハルくんの味方になるって意気込んで、覚悟したつもりになって。いざ再会したら魔物が――ハルくんの大切な仲間を怖いだなんて……」
「カーラ……」
一粒一粒と落ちていた雫が、いつの間にか大粒の雨となり、止めどなく床に降り注ぐ。
その涙を止めようと出しかけた手は、罪悪感に負けて強く握りこまれた。彼女を慰める言葉も見つけられず、戸惑う口元は開いたり閉じたりを繰り返した。
刹那――その様子を見つめていたアンが何かを思いついたように声を上げた。
「あっ、ねぇカーラ、ここは触れル?」
少女はおもむろに右翼を胸布に滑り込ませ、わずかにずらして左胸の一部を見せる。
顔を逸らしたハルトに対し、涙を拭うことも忘れ、遠くからそれを見つめるカーラ。
そこには絆の証である赤い印がはっきりと刻み込まれていた。
「これ、ハルトにもらっタ」
「……契約印」
力強く頷くアン。少女の優しさに突き動かされ、カーラは床を這うように――ゆっくりと距離を縮める。
再び伸ばされた指先が震え始める。再び吹き出した汗が額から鼻筋に伝い、涙と混じる。
顔を逸らしてハルトと目があったアンは、母親譲りの穏やかな笑みを浮かべ、静かに目を閉じた。
緊張と安らぎが惹かれ合うように、少しずつ近づいていく。
鼻先からポタリ――床で雫が跳ねた時――。
「……一歩、進めたネ」
アンの胸を指先で撫でる彼女の瞳には、淡い橙色の光を揺らす涙が溢れていた。安心か、喜びか、鼻を啜りながら、満面の笑みを浮かべて。
テイマーと魔物を繋げる絆の証――その印は今、人と魔物を繋げる証となった。
胸の奥から込み上げる熱が頬を緩ませる。目頭に伝わる前に、その景色をまた、瞳の奥に焼き付けた。
そしてカーラもまた、この手に触れる温もりを忘れることはないだろう。
「アン、ありがとう」
「うン。ハルトの魔力が、ここにあるかラ」
頭を撫でると少女は頬を赤らめ、恥ずかしそうに口角を上げた。アンもまた、勇気を出してくれたのだろう。
それからしばらく、カーラはアンの印に触れ続けていた。アンも落ち着いた表情でそれを見つめ、彼女が飽きるまでそこにいた。
夜も深け、寒さが指先が凍せ始めた頃。帰宅したクレアに急かされるようにそれぞれの部屋に戻り、眠りについた。
――翌日の早朝、アメントリ『馬車の停留地』
二日目の朝。空には薄らと雲がかかり、太陽は身を隠してしまっている。冷えきった強風が吹き付け、フードを被っていられない。
「……雨はまだ降らないだろうが、向かい風だな」
ダグラスが短い髪を靡かせ、白金の瞳で空を睨みつける。その姿がザバールの地下室で見た顔と重なり、根拠のない不安が脳裏にちらつく。
ふと、昨日は一番に来て馬車の準備をしていた人物がいないことに気がついた。
「カーラ、使用人さんは?」
「キオは今、水の補充に行っています」
「キオさんという方なのですね。そういえば、挨拶がまだでした」
クレアの言葉を聞き、意識するでもなく「確かに」と声が漏れた。
カーラの使用人『キオ』……トワイライト家に仕えているにしては、礼儀がやや疎かに感じた。
僅かな沈黙に懐疑を感じ取ったカーラは、それを釈明するように言葉を続けていく。
「キオは言葉が話せません。馬車の操縦に長けた人材として最近雇ったんです。本人が人との関わりを避けていて……ご無礼がありましたら、申し訳ございません」
「そうなのか……分かった。昼にコーヒーでも持って行くか」
「ダグラス、あんまり困らせちゃだめよ?」
「お心遣い、ありがとうございます」
顔をわずかに傾げ、笑顔を振りまいたカーラ。
しかし、この暴れる風の中でハルトは――彼の存在だけは信じることができずにいた。いや、旅が始まった時からずっと――。
――
「――はい。本日の夜、モアサナに到着します。――はい。問題はありません。必ず汚名を返してまいります……ノーランド様」
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