『悪役令息(僕)の断罪物語が現代で小説化されてる件。~しかも周囲は前世のメンバー(溺愛過多)で構成されてます~』

AzureHaru

文字の大きさ
1 / 1

逆転生に気づいた日

しおりを挟む
「えっ、待って。この本……僕のことじゃん」

書店の一角、流行の『異世界転生』コーナーで僕は硬直した。
手に取った文庫本のタイトルは、『悪役令息は隣国の王太子に執愛される』。
表紙には、僕と瓜二つの銀髪の青年が、見覚えのある黄金の瞳を持つ男に抱き寄せられているイラスト。

……いや、これ僕だ。前世の僕だ。

僕には前世の記憶がある。
魔法の存在する異世界で公爵家の三男として生まれ、傲慢さゆえに婚約破棄され、国外追放――いわゆる「断罪」を食らった。
けれど、ボロボロの僕を拾ってくれたのが隣国の王太子、アルフレートだった。
彼に溺愛され、とろけるような日々を過ごして一生を終えたはずなのに……。

「……なんで現世の小説になってるわけ?」

しかも、最後は『二人は来世でも結ばれることを誓い、静かに息を引き取った』で締めくくられている。
恥ずかしすぎて燃え尽きそうだ。
動揺しながら帰宅すると、玄関で「おかえり、蓮(れん)」と声がした。
仕事から早く帰ってきた僕の兄 零士だ。

「遅かったね。どこに行ってたの? 悪い虫がつかないか心配で、GPSを確認しようと思ってたところだよ」
「お兄ちゃん、笑顔で怖いこと言わないで」

この過保護な兄。前世で僕を勘当したはずが、最後は泣きながら謝ってきた長兄にそっくりだ。
それだけじゃない。
優雅に紅茶を飲む母は前世の母、お節介な親友は前世の従者。
配役が完璧すぎる。
問題は、彼らには前世の記憶が一切ないこと。
それなのに、なぜか全員が「今世こそは僕を離さない」とでも言うような、狂気的なまでの愛情を注いでくるのだ。
そして、最大の問題は僕の恋人、一ノ瀬 湊(いちのせ みなと)。
彼は前世で僕を愛し抜いた王太子、アルフレートの生まれ変わりだ。

「蓮、遅かったね。あと5分帰宅が遅れたら、大学を辞めさせて部屋に閉じ込める準備を始めるところだった」

帰宅するなり、湊に背後から抱きしめられる。
心臓が跳ねる。首筋に落とされる熱いキス。
前世のアルフレートも独占欲は強かったが、現代の湊はさらに拗らせている気がする。

「湊……これ、読んで。僕たちのことが書いてあるんだ」

僕は震える手で、さっきの小説を差し出した。
彼は一瞥もしないで、僕の指先に執拗に口づけを繰り返す。

「……知ってるよ。その作者、僕の変装用のペンネームだ」
「えっ?」
「夢で見る君そっくりの子(前世の君)が可愛すぎて、忘れられないように書き留めておいただけだよ。それより蓮、今日は誰と話した? 何回目が合った? 全部教えてくれるよね?」

湊の瞳が、小説の挿絵以上に昏く、深く光る。
記憶がないはずなのに、魂が僕を閉じ込めようとしている。

「ちょっと待って、監禁は冗談だよね……?」
「冗談に見える?」

逃げ場、なし。
異世界から逆転生してきた僕は、今世でも(物理的に)逃げられない溺愛ルートに強制突入してしまったらしい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...