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終焉のあとの、永劫の鎖
しおりを挟む1. 聖域の記憶
最期の記憶は、降り注ぐ光と、自分を抱きしめるジークフリートの温もりだった。
迫りくる呪いの刃から彼を突き飛ばし、身代わりに胸を貫かれたとき、不思議と痛みはなかった。ただ、泣きじゃくる彼の美しい碧眼(へきがん)をなぞり、「生きて」と微笑んだのを覚えている。
愛する人を守って死ぬ。それは、当時の僕にとって、物語の結末としてこれ以上なく完璧なものだった。
2. 再会という名の絶望
二度目の生は、辺境の魔術師の家系に生まれた。
前世の記憶を抱えたまま二十歳を迎えた僕――リトは、王都の式典で「彼」の姿を見つける。
かつての面影を残したまま、しかし、何かが決定的に欠落した男。
現国王の側近にして、大陸最強の禁術魔道士。それが、僕が命を賭して守ったジークフリートの今の姿だった。
視線が交差する。
かつての柔らかな眼差しはどこにもない。そこにあるのは、獲物を捕らえた猛禽のような、鋭く冷酷な光。
「……見つけたよ。ようやく、この手の中に」
冷笑を浮かべた彼の声は、低く、地を這うような重圧を伴っていた。
3. 禁忌の誓約
気づけば、僕は王城の奥深く、結界の張られた私室に監禁されていた。
ジークフリートは抵抗する僕の首筋を冷たい指でなぞり、呪文を紡ぐ。
「ジーク、やめてくれ! 僕は君に生きてほしくて、あの時――」
「生きてほしかった? 独り残される地獄を、君は考えたことがあったか?」
彼の瞳に、昏い炎が揺らめく。
「君の愛は、僕を一生消えない呪いで縛り付けた。……次は、僕が君を縛る番だ」
彼が指を噛み切り、その血で僕の胸元に複雑な紋様を描く。
それは、古の時代に禁じられた**『魂の誓約(アニマ・ウェンクルム)』**。死んでもなお魂を逃さず、来世まで飼い主を縛り付ける最悪の禁術だ。
「……っ、あ、が……!」
魂を直接鎖で繋がれるような、焼けるような激痛。
僕の意識は白濁し、ジークフリートの冷たい腕の中に沈んでいく。
4. 正解のない問い
視界の端で、彼が満足げに僕の髪に口づけるのが見えた。
その瞳は、狂おしいほどの情愛と、決して僕を許さないという憎悪が混ざり合っている。
(ああ、僕は……間違えたんだろうか)
あの時、彼を救わずに二人で死ぬべきだったのか。
あるいは、彼を一人にするくらいなら、見捨てられてもいいから「一緒に生きよう」と縋るべきだったのか。
彼を「救った」はずの僕の自己犠牲は、彼を「化物」に変えてしまった。
魂に刻まれた契約の重みを感じながら、僕は遠のく意識の中で、かつての自分の選択を激しく悔いた。
この冷たい檻の中で、僕たちは永遠に、壊れた愛を繰り返す。
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