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第一章

兎23羽(第一章最終羽) 斬り開いた未来

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「ちゃく……」

「着装!月兎!!!」

 キョ、キョウカさん……!?。
 地面に項垂うなだれているキョウカさんの体が光輝き神装鎧月兎しんそうよろいげっとが着装した。

 覚束無いおぼつかない足取りでゆっくりと起き上がる。
 プラチナゴールドの長い髪が風になびく。金髪?
 天色あまいろの鮮やかブルーカラーのレオタードに身を包み、透き通る青い瞳が輝く天使…………。

…………綺麗だ…………。

 腐れPK野郎も呆然と見つめている……。

「ありがとう……。ありがとうございますソウマ君……。でも私が戦う……。私が過去に決着を付けないといけないから……」

 キョウカさんの頬を涙が伝う……。でもその透き通るコバルトブルーの美しい瞳には強い意志が秘めている。うん!

「うん!頑張れキョウカさん!!!」

「ヒャッハ~~~!エロいぜ四ノ宮ァーーー!」

 腐れPK野郎がキョウカさんを絡め取るように幾本の触手を伸ばす。

 キョウカさんは腕を払うと次元連動システムによって顕現された黄金に輝く聖剣グラムアルキュルスを一閃。全ての触手を斬り払った。

「な…………」

 一瞬で触手が斬られ呆然とする腐れPK野郎。

「未来視ィィィ!」

 未来視を使ってキョウカさんの次の行動を知る。

「ヒャッハハ!どんなにスゲくたってなぁ~、お前の動きは筒抜けなんだよ~~~!オラ~右から攻げガフーッ!」

 キョウカさんの聖剣が腐れPK野郎の右頬を叩く。速い!

 腐れPK野郎が盛大に吹っ飛ばされるが、膝をガクガクさせながらも立ち上がる。グフー、グフーと鼻息が荒い。

「ヤレよ触手ぅぅぅーーーーーーッ!」

 未来視で見たであろうキョウカさんの行動先を狙って両手から数十本の触手が伸びるが、その全てを高速の縮地で交わし斬り刻む。

 僕の目にはキラキラと黄金に輝く美しい長い髪の残存しか映らない。未来視の見る世界より速く動く光速の女神……。

「なんだよ~~~!何で当たらないんだよ~~~!」

 無闇矢鱈に触手を振り回す腐れPK野郎に高速ジグザグステップで一瞬で間合いを詰める。

「殺しちゃダメだ!」

 聖剣グラムアルキュルスを振り被り神速で横凪に払う。

 決して渾身の一撃では無いが、彼女の過去を斬り払う聖光の一撃は、この世界で待つ僕達の明るい未来を斬り開いた。





 腐れPK野郎には、PVP勝利者報酬としての奴隷化を行った。そして命令として街の兵士治安部隊所に行かせた。異世界者を二名殺害した罪をこの世界の法で裁いて貰うためだ。腐れPK野郎が街の方へと森の中から姿を消す。

「ありがとうございます」

 神装鎧を脱装したキョウカさんが僕にペコリと頭を下げた。

「どうしたの?」

「私を信じてくれた事が嬉しくて……。私の為に怒ってくれて……。それに……その……あの時言ってくれた言葉……。凄く凄く嬉しかったです!」

 モジモジと前組みした手を動かしながら、頬を赤く染めて、瞳には少し涙を浮かべたキョウカさんがとても嬉しそうに微笑んだ。

「あの時言った言葉って……何言ったっけ?」

「えーーーっ!覚えて無いんですかぁ!?」

「だいぶ頭に血が昇っていたから、何を言ったか全く覚えて無いんだけど……?」

「…………………………(プ~)」

 あれ?頬を膨らませてなんか怒ってる?

「ふふふ、でもいいです。今回は許します。ちゃんとソウマ君に言って欲しいから……」

 更に頬を赤く染めて、僕から逃げるようにタタタと前にキョウカさんは走りだした。

「えっ!僕に何を言って欲しいの!」

 キョウカさんはクルッと体ごと振り向き

「ナイショですよ~」

 とバックステップしながら舌をペロっと小さく出した。

 か、可愛い~~~~~~~~~!!!


 森を抜けた広い草原に、爽やかな風が吹いている。足下には見たことがない背の低い草々と可愛い花々が気持ちよさげに揺れていた。
 青い空に白い雲が悠々と流れ、不気味な黒い月が浮かぶ異世界で僕達の物語が始まった。





《第一章 Fin》
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