学校の怪談

ちちまる

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暗闇の囁き

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大月中学校の旧校舎は、廃校となってから数十年が経過していた。誰も寄り付かないその場所には、「七不思議」と呼ばれる怪談が伝わっていた。生徒たちの間では、その噂が語り継がれ、夏の夜に度胸試しをするのが恒例となっていた。

その夜、五人の生徒たちが旧校舎の探索を決意した。勇敢でリーダーシップのある田中涼太、冷静で知的な山本恵美、好奇心旺盛な佐藤誠、少し臆病な渡辺花子、そして謎めいた転校生の高橋蓮。彼らは夜の帳が降りる中、旧校舎へと向かった。

「まずは音楽室だ。夜中にピアノが一人でに鳴るって話があるんだ。」涼太が言うと、皆は無言で頷いた。古びた扉を開けると、ほこりっぽい空気が彼らを迎えた。ピアノの前に立ち、涼太が鍵盤に触れると、突然、無人のピアノが悲しげなメロディを奏で始めた。

「まさか、本当に鳴るなんて…」花子が震える声で言った。

「多分、風か何かだろう。」誠が言いながらも、その目には明らかな恐怖が宿っていた。

次に彼らは理科室に向かった。そこには「実験器具が勝手に動く」という噂があった。薄暗い理科室に入ると、涼太がライトを当てると、ビーカーやフラスコが机の上でカタカタと音を立て始めた。

「見て、あれ!」恵美が指差すと、試験管がひとりでに転がり落ちた。

「これ以上は無理だ…」花子が泣き出しそうになった。

「もう少しだけ。我慢してくれ。」涼太が言った。

次に彼らは体育館へ向かった。体育館には「夜中に無人のバスケットボールが動き出す」という話があった。体育館に入ると、中央にぽつんと置かれたバスケットボールが見えた。突然、そのボールが床を転がり始めた。

「誰かいるのか?」蓮が声を上げると、返事はなかったが、ボールは彼の足元で止まった。

「これは本物だ…」涼太が呟いた。

「もう帰ろう、これ以上は無理だよ。」花子が再び言ったが、涼太はまだ諦めていなかった。

「最後に、屋上に行こう。そこには『飛び降りた幽霊』が出るって話だ。」涼太が提案すると、皆は無言で同意した。

屋上に向かう途中、廊下の鏡が目に入った。そこには「鏡に映る少女の幽霊」の噂があった。恵美が鏡に近づき、じっと見つめると、鏡の中の自分の顔が歪み、悲鳴を上げた。

「もうやだ!」恵美が叫び、皆は急いで階段を駆け上がった。

屋上に到着すると、冷たい風が彼らを包み込んだ。遠くの街灯りがぼんやりと見える中、誰もいないはずの屋上に少女の姿が見えた。彼女は白いワンピースを着て、虚ろな目でこちらを見つめていた。

「ここから飛び降りたの?」涼太が声を震わせながら尋ねると、少女はゆっくりと頷いた。

「どうして…?」蓮が続けた。

「助けて…」少女の声はかすかに聞こえた。その瞬間、彼女の姿は霧のように消え去った。

「もう帰ろう。」誠が言ったが、涼太は何かに取り憑かれたように動かなかった。

「まだ何かがある。感じるんだ。」涼太が言った。

皆は仕方なく涼太に従い、再び校舎内を探索することにした。彼らは地下室に向かい、古びた扉を開けた。そこには薄暗い部屋が広がっていた。部屋の中央には古い祭壇があり、その上には鍵が置かれていた。

「これが…解放の鍵?」涼太が鍵を手に取ると、突然、部屋全体が揺れ始めた。

「早く出よう!」蓮が叫び、皆は急いで扉を開け、階段を駆け上がった。

再び屋上に戻ると、少女の霊が再び現れた。彼女は鍵を見つめ、涙を流していた。

「ありがとう。これで私は解放される。」彼女は静かに言った。

「どうしてこんなことに…?」涼太が尋ねると、少女は微笑んで消え去った。

その後、彼らは校舎を出て、自宅に戻った。翌日から、校舎の不思議な現象は消え去り、学校は平穏を取り戻した。しかし、彼らの心にはあの夜の出来事が深く刻まれていた。

数年後、彼らは再び集まり、旧校舎を訪れた。廃墟と化した校舎は、あの夜の記憶を静かに見守っているようだった。彼らは互いに語り合い、あの少女の霊を解放できたことを誇りに思った。

「またここに来ることがあるかもな。」涼太が笑いながら言った。

「もう幽霊の話はこりごりだよ。」直人が冗談混じりに答えた。

彼らは笑いながら、旧校舎を後にした。その後、旧校舎は取り壊され、新しい校舎が建てられた。しかし、彼らの心の中には、あの夜の冒険が永遠に残り続けることだろう。

闇に囚われた校舎の中で、彼らは恐怖と向き合い、友情を深めた。その思い出は、彼らにとって忘れられない宝物となったのだった。
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