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風鈴

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第二章 万不動産の三代目?そんなのは万屋朔には無理です

父親からの呼び出し

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 毎日のように様々な相談や案件が、父親の電話にかかってくる。朔には資格があるだけで、実践を経験していないので、殆どがぶっつけ本番、行き当たりばったりの連続だった。
 朔の客商売経験値はファミレスでのウエイター程度でそれも資格取得の為の勉強が忙しくて週に1、2日だった。
 万不動産でお客様との面談や打合せ、他の不動産会社からの問い合わせはいつもドキドキ応対している。
 余裕などある訳ないが、祖父さんが、『仲介者がオドオドしていたら相手が不安になる、家の売買契約などの場合お客様の不安はMAXでそれでも売る時も買う時も清水の舞台から飛び降りる程の決断をするんだ。仲介者は不安を見せずにドンって構えていないと二度とその客は万不動産には来ない。誠心誠意にやってあたり前だが、クソみたいな同業者もいる。そんな所にお客様が行って損をしないようにするのが、社長と言う仕事だ』と言っていたので、朔なりに虚勢を張って面談をこなしていた。だから面談後はクタクタになってしまう。お客様からの電話や相談を受けると親身になって応対している自分が好きなのでついつい色々と世話を焼く。始め若いと言って話し半分で帰られる人もいるが、朔の提案に興味を持ってくれると成約率が高い。それも朔がクタクタに感じれば感じる程上手くいくのが朔は楽しく思い始めていた。
 毎日、店を閉めてからクタクタでも父親のパソコンを隅々まで開けて情報探して知識を増やす事にしていた。
 事務員のあゆみはいつもニコニコして店に飛び込みで相談来るお客様の応対をする。その中で物件案内と成約交渉案件を朔に仕事として回してくれる。朔が、成約できれば後はあゆみが、事務処理をこなして行く。
 朔も少しずつ万不動産の自分の役割がわかりつつあった。
 万不動産は水曜日定休日、朔が携帯電話を渡されて初めての休日に朔は、父親の電話を切ってゆっくり寝て休息するつもりだった。そこに朔の携帯電話がなる。
「朔、お父さんが呼んでいるから病院に来なさい。305」
「今日は休みだよ。昼から…、切れたかー」
 と話をする前に母親の電話は切れていた。朔は、自分の携帯を見つめる。
 そして、携帯電話に向かって大声で叫ぶ。
「エゴイストめ」
 だが、悪態をついても朔が母親を無視できない。彼女の仕事が忙しいのを十二分に知っているからだ。朔は、とぼとぼと草壁病院に行った。そして3階の個室の305号室の扉を叩く。
 コンコン
「朔です」
「入れ」
 父親の声が聞こえて、心がホッとする。
「おはようございます」
 父親は、元気そうだったが、あまり家でも見ないパジャマ姿を見て少し不安になる。
「身体の調子は、どう?」
 朔は、あたり触りのない質問をする。
「身体は元気だが、頭の方はこれから毎週のように検査して経過観察する。脳梗塞が軽い段階で見つかったから、心配される麻痺や意識障害も特に無し。ただ、一回目の脳梗塞が軽く済むと人は無理をしがちだそうだ。二回目が大きくなって生命の危機もあると母さんが怒鳴るから病院にいる。酒もタバコも一切ダメになった。
只、仕事をほったらかしにもできないので、ここからできる仕事を来週から始める。その状態でも異常が無ければ退院することになる。半年は家での仕事だ」
「そう、俺は3月20日以降から就職先の研修があるってメールが来ているからそれで良い?」
「その事なんだが、お前には教えていないことだが、万不動産は、YOROZUホールディングスの傘下にある」
「YOROZUホールディングスって持株会社の大手だろう、万不動産って株式会社だと言うのは先日ちゃんとした名刺を渡された時に知ったけど、YOROZUホールディングスの傘下なんだ」
「YOROZUホールディングスは、俺が設立した会社で、俺がCEOをしている」
「えっ、父さんの会社?って事は万不動産は?誰が社長なの?」
「俺が兼任していた。お前は万不動産を就職先に考えていなかったから、調べてもいなかったんだろうが、実質はそう言う事になっている」
「だって、俺が宅建取って万不動産でバイトしたいと言ったら、ダメだと言ったじゃん」
「俺は、宅建を取ったぐらいで万不動産のバイトはできないって言ったはずだ。それを聞いてお前は万不動産以外の不動産コンサル会社を就職先に選んだだろう。まぁ、不動産鑑定士の資格がないと万不動産には入れないがなぁ」
「えっ不動産鑑定士の資格がないと万不動産には入れないって何?」
 朔は、さらっと父親が言い放った言葉が信じられなかった。
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