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第二章 万不動産の三代目?そんなのは万屋朔には無理です
物件②初めての売買契約
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父親と話をした次の日に香川夫婦から電話が来た。自宅の売買の査定依頼だった。それが、朔の運命を変えることになるとは彼は思ってもいなかった。
香川夫婦は、電話をくれた次の日午前中に万不動産を訪れた。
「三代目、不動産の売却をご希望の方がお越しです。香川様です。よろしくお願いします」
あゆみの元気な声が響く。応接室に通された香川夫婦と初めて会う朔出会ったが、既視感があったので知っている人かもと思ったが、記憶は無い。彼らの事はパソコンのフォルダにあって祖父さんが売買していたことは確認済みだった。
「こんにちは、万屋朔です」
真新しい万不動産の正式な名刺を差し出す。
「先日は、電話で失礼しました」
「いいえ、大丈夫ですよ。ところでお電話ではご自宅を売りたいとおっしゃっていましたが」
「はい、子供もひとり立ちして1人は九州に嫁ぎ、もうひとりは都内のTホテルにホテルマンとして就職したので、田舎に1人で暮らしている妻の母親と一緒に住む事になりました。たまたま新しいホテルが田舎でオープンすると聞いてアルバイトでもと思い応募したら社員として採用が決まりました。
私は元々ホテルマンでフロントで働いていました。不況の煽りでそのホテルは倒産してしまいました。当時、家のローンも残っていて、その上少し水回りを改装した時のローンもあって、倒産で家を手放すかもと困っている時に万不動産さんに相談してローンの借り換えや再就職の相談にも乗ってもらいました。それで3年前に全て支払い終えたんです。
本当なら、半年後に義母の家に引越しするつもりだったですが、新しいホテル側は私の経歴を見て新人の教育係も兼ねての採用で、研修が始まる前に私の研修が始まることになり急遽引越しすることになりました。家は遺す予定でしたが、子供も都内のTホテルから関西に転勤することになって、しばらくはこっちに帰れないようです。家を放置すると価値も下がると言うので一層のこと売却しようと思いました」
「わかりました。田舎にはいつ戻られるのですか?」
「新しいホテル側は今月中に仕事に入って欲しいらしいので、私だけでも先にと考えています」
「結構急ですね」
「はい、義母も1日でも早く一緒に住みたいと言うので妻も少なくとも来月中旬には引越しする予定です」
「わかりました。これが香川様の家の古さや場所などをコンピューターに入力してコンピューターが弾き出した標準査定額です。これから一緒に確認して正式な査定をさせていただきます。お急ぎでしたら、今から査定に行きましょうか?」
「よろしくお願いします」
朔は、香川さん夫婦と一緒に彼らの家に行った時に外観に既視感があった。その家は、草壁町の中でも隣の街に近い住宅地だった。朔が、住む家からは殆ど行く事がない場所なのに知っていると言う確信があった。
外から査定を始めた時からずっと考えていたが、玄関に入って直ぐに府に落ちた。玄関に入って祖父さんが、ここで色々説明して、平さん夫婦と香川さん夫婦とお子さんたちも一緒に部屋を見て回った時の事を思い出した。
「あの、ここを香川様が見学された時、私も一代目と一緒に来ていたと思うですが」
「はい、一代目が、万不動産の三代目ですって小学生のあなたを紹介してくれたんです。今回、売却しようと思って何件か不動産会社に査定してもらいましたが、万不動産が三代目に代替わりすると聞いて、万不動産にお願いしようと思いました」
「そうなんですね、ありがとうございます。未熟ですが、しっかりと査定させてもらいます。今日は一度会社に戻って明日の午前中に連絡します。できる限り頑張りますのでよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
次の日に、査定額を父親に相談して了承を得て香川さん夫婦に連絡した。香川さんからは
「今まで査定額の中で一番高い金額でした。ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます。書類作成後今日の夕方か遅くとも明日の午前中には前回渡した書類を揃えて頂きたいです。よろしいですか?契約の詳しいことは事務所にいます事務員が対応します」
「はい、わかりました。万不動産に行く前に又連絡します」
香川さん夫婦と売却契約が成立したあと、しばらくして若い夫婦が、家を探していると万不動産を訪れた。彼らは、いつか家を持ちたいと考えて、安アパートで暮らしてお金を貯めたいと言っていた。若い夫婦はどちらも学校の先生だったので、香川さん夫婦の家を紹介した。香川さんの家は中古だが、土台や木の骨組みはしっかりとしていたので、外壁と内装を変えるだけで十分に使えると朔は思っていた。今の新築建売よりもしっかりとした造りだった。
彼らは、一度は無理だと断った。だが、その次の日に親にも見せたいと電話があった。若夫婦と2人の両親が見に来た時に『ローンが降りれば良い買い物だ』と、彼らの親御さんも言って銀行に行くことが決まった。
彼らにとっては、一生で一度くらいの大きな買い物だったが、静かで小学校や中学校も遠くない場所にあるのを気に入っていたのでローンが降りるまで朔もドキドキしていた。
2週間後にローン会社の契約が完了して、購入契約が正式に万不動産で結ばれた。少し手入れをする予定だが、2か月後に、ここで新しい生活が始まると言ってニコニコしている若い夫婦を見て、朔は初めての売買が上手く行ったことが嬉しくてたまらなかった。
香川夫婦は、電話をくれた次の日午前中に万不動産を訪れた。
「三代目、不動産の売却をご希望の方がお越しです。香川様です。よろしくお願いします」
あゆみの元気な声が響く。応接室に通された香川夫婦と初めて会う朔出会ったが、既視感があったので知っている人かもと思ったが、記憶は無い。彼らの事はパソコンのフォルダにあって祖父さんが売買していたことは確認済みだった。
「こんにちは、万屋朔です」
真新しい万不動産の正式な名刺を差し出す。
「先日は、電話で失礼しました」
「いいえ、大丈夫ですよ。ところでお電話ではご自宅を売りたいとおっしゃっていましたが」
「はい、子供もひとり立ちして1人は九州に嫁ぎ、もうひとりは都内のTホテルにホテルマンとして就職したので、田舎に1人で暮らしている妻の母親と一緒に住む事になりました。たまたま新しいホテルが田舎でオープンすると聞いてアルバイトでもと思い応募したら社員として採用が決まりました。
私は元々ホテルマンでフロントで働いていました。不況の煽りでそのホテルは倒産してしまいました。当時、家のローンも残っていて、その上少し水回りを改装した時のローンもあって、倒産で家を手放すかもと困っている時に万不動産さんに相談してローンの借り換えや再就職の相談にも乗ってもらいました。それで3年前に全て支払い終えたんです。
本当なら、半年後に義母の家に引越しするつもりだったですが、新しいホテル側は私の経歴を見て新人の教育係も兼ねての採用で、研修が始まる前に私の研修が始まることになり急遽引越しすることになりました。家は遺す予定でしたが、子供も都内のTホテルから関西に転勤することになって、しばらくはこっちに帰れないようです。家を放置すると価値も下がると言うので一層のこと売却しようと思いました」
「わかりました。田舎にはいつ戻られるのですか?」
「新しいホテル側は今月中に仕事に入って欲しいらしいので、私だけでも先にと考えています」
「結構急ですね」
「はい、義母も1日でも早く一緒に住みたいと言うので妻も少なくとも来月中旬には引越しする予定です」
「わかりました。これが香川様の家の古さや場所などをコンピューターに入力してコンピューターが弾き出した標準査定額です。これから一緒に確認して正式な査定をさせていただきます。お急ぎでしたら、今から査定に行きましょうか?」
「よろしくお願いします」
朔は、香川さん夫婦と一緒に彼らの家に行った時に外観に既視感があった。その家は、草壁町の中でも隣の街に近い住宅地だった。朔が、住む家からは殆ど行く事がない場所なのに知っていると言う確信があった。
外から査定を始めた時からずっと考えていたが、玄関に入って直ぐに府に落ちた。玄関に入って祖父さんが、ここで色々説明して、平さん夫婦と香川さん夫婦とお子さんたちも一緒に部屋を見て回った時の事を思い出した。
「あの、ここを香川様が見学された時、私も一代目と一緒に来ていたと思うですが」
「はい、一代目が、万不動産の三代目ですって小学生のあなたを紹介してくれたんです。今回、売却しようと思って何件か不動産会社に査定してもらいましたが、万不動産が三代目に代替わりすると聞いて、万不動産にお願いしようと思いました」
「そうなんですね、ありがとうございます。未熟ですが、しっかりと査定させてもらいます。今日は一度会社に戻って明日の午前中に連絡します。できる限り頑張りますのでよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
次の日に、査定額を父親に相談して了承を得て香川さん夫婦に連絡した。香川さんからは
「今まで査定額の中で一番高い金額でした。ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます。書類作成後今日の夕方か遅くとも明日の午前中には前回渡した書類を揃えて頂きたいです。よろしいですか?契約の詳しいことは事務所にいます事務員が対応します」
「はい、わかりました。万不動産に行く前に又連絡します」
香川さん夫婦と売却契約が成立したあと、しばらくして若い夫婦が、家を探していると万不動産を訪れた。彼らは、いつか家を持ちたいと考えて、安アパートで暮らしてお金を貯めたいと言っていた。若い夫婦はどちらも学校の先生だったので、香川さん夫婦の家を紹介した。香川さんの家は中古だが、土台や木の骨組みはしっかりとしていたので、外壁と内装を変えるだけで十分に使えると朔は思っていた。今の新築建売よりもしっかりとした造りだった。
彼らは、一度は無理だと断った。だが、その次の日に親にも見せたいと電話があった。若夫婦と2人の両親が見に来た時に『ローンが降りれば良い買い物だ』と、彼らの親御さんも言って銀行に行くことが決まった。
彼らにとっては、一生で一度くらいの大きな買い物だったが、静かで小学校や中学校も遠くない場所にあるのを気に入っていたのでローンが降りるまで朔もドキドキしていた。
2週間後にローン会社の契約が完了して、購入契約が正式に万不動産で結ばれた。少し手入れをする予定だが、2か月後に、ここで新しい生活が始まると言ってニコニコしている若い夫婦を見て、朔は初めての売買が上手く行ったことが嬉しくてたまらなかった。
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