オーデンスのΩの物語《I》

風鈴

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《第二部》一途なΩの新しい旅立ち

クラーブ(1)

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 リュウールの入城が近づき城下にも領内外からの人の流れが多くなりつつあった。キャサリン夫人は、忙しく城内の見回りと入城式の準備に気を配っていた。
 キャサリン夫人が、一通りの見回りを終えて部屋に戻ると突然声をかけられた。
「キャサリン大伯母にはお元気そうですね」
「びっくりするでしょう!クラーブ」
キャサリン夫人は驚きの声をあげてクラーブを見た。そして続けて
「お前のお陰で魚が網に入って来たよ。ありがとう」
「あいつの手下達は?」
「今まであいつの思い通りにされて来たから、あいつが一人で街を出たのを喜んでいたわ、誰も追って来てはいない」
「だろうなぁ、あいつ偉そうで、慕われているって言う感じがなかったな」
「まぁあいつを捕まえて、吐かせるは。証人はいるから。優しく捕まえている」
「おまえの計画は上手く行きそう?」
「まぁね、これが一番安全だと思うけど」
「関係各所には連絡してあるの?」
「国王陛下には王都を出る前には連絡しておいた」
「船に関してはカルマに頼んである。マイヤー兄弟に取りに行かせている。帝国には連絡済み」
「後の事は私が囮になるけど、そっちの方が面白そうなのよね。そっちの方に行きたい。ダメ?」
「ダメ」
クラーブが、無碍に断る。
「まぁ良いわ!慰霊祭まで後1週間忙しくなるわ」
「ところで、囮のリュウールの身代わりは?」
「いないけど、アリスを借りたいけど、あの子には超過保護な兄ちゃん達が付いているし、恋人になったジャックにも口出す権利できたし」
「アリスとジャックを一緒に連れて行けば良いじゃん」
「トーマスに話しを通しておけば大丈夫でしょ。俺、今日トーマスに会うよ」
「トーマスには私も会う。詰めてから決める」
「わかった」
話は終わったと言うようにクラーブは立ち上がる。
「あなたどうやって城に入った?」
「まぁいろいろ経験しているんでね。これでも。それじゃ又ね大伯母様」
 クラーブは、窓を開けて外に出た。その後、何にもなかったように自分のホテルに戻って来た。
「お帰りになりましたか?」
カルマが、声をかける。
「教会の仕掛けは大丈夫?」
「万事筋書き通り」
「オルガンの中身って本物だった?」
「結構ありました。フォンテン男爵は私財を領民に使うなら自分達はどうでも良かったと思える程でした。全て偽物にすり替えました。金は無理でしたが、残りも僅かだったので、それは手をつけてません。今は慰霊祭の準備で誰かいるので、奴は慰霊祭の終わりを待っている様です。オルガンをオークの教会に持っていきたいといってました」
カルマの報告を聞いて独り言を言うように自答する。
「了解、リュウールは知るんだよな、リュウールにとって、フォンテン男爵夫妻は理想の家族だったみたいだったから、ショッキングだろう」
クラーブは、窓から青空を仰ぎ見ながら、大切な番の事を考えていた。
 カルマが、トーマスの来訪を告げる。
 久しぶりにトーマスを見てクラーブは
「焼けたね、久しぶりだけど、痩せたし、何そのヒゲ?」
「久しぶりだな、体重は変わってないと思う、外での仕事ばかりだから焼けた。ヒゲか、あのゴーガンの親子がヒゲを剃らしてくれない。男にはヒゲがいるって、この2週間でこんなになったんだ」
トーマスはどうだい?と言うように答えた。
「へぇ、俺は昨日まで無精者だったからヒゲ伸び放題でしたが、そのヒゲは手入れしないと無理でしょう」
「まぁ、郷にいればなお前の計画は進んでいる?」
「ほぼ手配は終わってます。今仕掛ける船はこっちに向かって登っているところです。カルマ後何日?」
「後3日程で到着する筈です」
「わかった、積み下ろしのパフォーマンスはしないと怪しまれるから、だけど慣れないそのヒゲ」
クラーブは笑いだす
「まぁ、帝国に入る前には剃るつもりだが、当分はこれだ。人数配分は?」
「リュウールの代わりがいるってキャサリンが言っててアリス?って案があるけどどう?」
「格好の男がいる。ゴーガン家の三男でΩ、番はいて結婚はしていないが子供はいると言う豪快な人間だ。付け加えるとケイトの学園からの親友だ」
「ゴーガン家にしては本当豪快だね。いろいろと裏は複雑な方みたいだけど大丈夫なの暗部の襲撃してくるのに」
「ゴーガン家の男だから武道は仕込まれている。ケイトほどじゃないけどそこそこの腕だ。グランデールの隣にワインを飲みに行きたいらしいけど、帝国に入っても良いなぁって言ってるゴーガン家の唯一の自由人だ。伯父が言うには『オーデンスのΩ』の気ままなところを集めて濃縮したらアレになるって言っていて、子供もいるんだが子育ては苦手らしい。だけど子供はゴーガン伯爵夫人が育てていていたって健康。アレが自由過ぎて怖いからって子供にそれが移ったら生きていけないから自分が育てると言う夫人の理由笑えるだろ。だって、彼を育てたのは夫人なのにそれを踏むなと伯父は言っていた。
 リュウールは『オーデンスのΩ』だが、アレ程自由人じゃないから助かるよ。父親と来たのに、親父は堅苦しいからって、今は城の外で乳母の侍女夫婦と一緒にケイトが来るを城外のホテルで待って過ごすと聞いている」
 トーマスは呆れ声で言った。
「それじゃその方で、後はキャサリンとルーカスさんとトーマスさん?ロンさん、護衛官3人で良いですか?」
 クラーブは、確認する様に尋ねる。
「いいや、俺は川下り組、そろそろ書類が溜まってきているからヘインズの雷が落ちそうだ」
「リュウール、俺、アリス、ジャック、トーマスが、川下り組、カルマはここの片付けをしてもらう」
「それと、ケイトとルークはそっちの方がいい、王都の港には寄らないんだろ」
「寄らない、オーデンスから外洋までノンストップで行くつもり外洋の手前でもう少し大きな船には乗り換えが出来れば良いんだけど、それは親父に依頼中」
「了解、ヘインズをハーデンに連れて行く」
 トーマスは、思いついたように言った。
「ヘインズさんをハーデンにですか?わかりました頭に入れておきます」
 クラーブは、少しびっくりしたが、トーマスの考えを読んだ。
「ロームの件は聞いたか?」
 トーマスは、こともなげに言う。
「聞いた、この後船で下る」
 クラーブも、冷静に返す。
「俺は行かない、アーツ伯爵夫人が絡んでいるから」
「アーツ伯爵夫人?あの夫人がオーデンスに来る予定なかったじゃない」
「急にぶっ込んで来たから、ルーカスが警戒していた。仕掛けるならロームだろうと読んでいたが、王都で証拠が上がった」
「証拠?暗部にしては雑な仕事だな」
「その雑さが証人を助けて、情報をもたらした」
「成程」
「今回、カーツとフェズが初陣だ。あいつらにどこまで追えば良いかをグランデール家として、クラーブお前が指示しろ、アーツ伯爵は蚊帳の外にして知らなかったと言う体でいくから」
「それじゃ、暗部には渡すちょい手前でいいかなぁ」
「そうしてくれ、今はまだ、キリアスに入れなくなっても困る」
「了解」
 トーマスが帰るのと同時にクラーブは、川を下ってロームの街へ出て行った。
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