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7 食後の、のんびりタイム(2)
椅子から降りた彼はシートの上にしゃがんだ。
今度は何やらいろいろな物が入っていそうな袋を持ち上げ、カナコを上目遣いで見つめる。
「食後のコーヒー、いかがですか?」
カナコの胸がキュンと甘酸っぱく鳴った。
何年ぶりだろうというくらい、久しぶりの感覚だ。
「カフェインレスのコーヒーもありますし、紅茶のパックも用意してきたんですけど、いらなかったら遠慮せずに言ってください」
返事をしないカナコを見て、大倉が言葉を添える。
「いえっ、いります! 普通のコーヒーで大丈夫です!」
食い気味に言ってしまったので引かれるかと思ったが、彼はホッとしたように笑んで手元に視線を戻した。
「アイスコーヒーを作ろうと思うんですが、ホットが良かったら言ってください」
「アイスコーヒーをここで作るんですか? 買ってきたものじゃなく?」
「ええ、それも見てもらおうと思って用意しました」
「私、アイスコーヒーが飲みたいです。ぜひ見せてください」
カナコも椅子から降りて、シートの上に座る。
「たいしたもんじゃないですけど、外でも楽しめるということを知ってほしくて」
言いながら、大倉は次々と道具を並べていった。
小さな折りたたみテーブルの上に、コーヒー豆が入った袋、小さいコーヒーミル、ペーパーフィルター、そして透明なボトルをふたつ置く。
「それは何ですか?」
カナコは透明のボトルを指さした。
「ポータブルコーヒーメーカーです。うちの商品じゃないんですけど、便利すぎてこればっかり使ってますね」
へぇ~と感心するカナコの前で、大倉はコーヒー豆をコーヒーミルに入れ、セッとしたハンドルを回してガリガリと豆を挽き始めた。
青空の下、芝生の上でコーヒー豆を挽いているのが、なんとも不思議で新鮮で贅沢な気持ちがした。
しばらくして大倉は先ほどのボトルに手をかけ、ふたを取った。そして本体をクルクル回して、半分くらいのところからパカッと外す。外した部分を逆さまにし、ペーパーフィルターをセットする。もうひとつの透明ボトルも同じようにした。
「もしかして、上半分がドリッパーになるんですか?」
「そうなんです。しかもまだ仕掛けがありまして」
大倉はクーラーボックスから氷を出して、ボトルの下半分に入れる。大きな氷なので二、三個ですぐいっぱいになった。ちょうど真上にいる太陽の光が氷に当たって、キラリと輝いた。
大倉が挽いたコーヒーの粉をペーパーフィルターに入れる。
「あ、いい香り」
挽き立てのコーヒーの香りがカナコの鼻まで届いた。
ふたつのボトルにお湯を注いでコーヒーの粉をしばらく蒸らした後、またお湯を注いでいく。さらにコーヒーの香りが漂い始めた。
「お湯が入った水筒は大倉さんの会社の商品ですよね?」
「ええ、そうです。今日はふたり分持ってきたかったので750mlサイズにしました」
大倉は大きな水筒を手に持って掲げた。ずっしりと重さがありそうな水筒だ。
「コーヒーは熱湯を少し冷ましてから淹れるので、ある程度、温度が保たれる水筒なら問題ありませんね。こだわりがある人にはダメかもしれませんが、俺はそこまでじゃないので」
大倉はコーヒーを抽出した後のペーパーフィルターを持ち上げ、持参していた袋に捨てた。そしてボトルにもう一個ずつ、氷を入れる。
「ひとくち飲んでみてください」
「はい、いただきます」
今度は何やらいろいろな物が入っていそうな袋を持ち上げ、カナコを上目遣いで見つめる。
「食後のコーヒー、いかがですか?」
カナコの胸がキュンと甘酸っぱく鳴った。
何年ぶりだろうというくらい、久しぶりの感覚だ。
「カフェインレスのコーヒーもありますし、紅茶のパックも用意してきたんですけど、いらなかったら遠慮せずに言ってください」
返事をしないカナコを見て、大倉が言葉を添える。
「いえっ、いります! 普通のコーヒーで大丈夫です!」
食い気味に言ってしまったので引かれるかと思ったが、彼はホッとしたように笑んで手元に視線を戻した。
「アイスコーヒーを作ろうと思うんですが、ホットが良かったら言ってください」
「アイスコーヒーをここで作るんですか? 買ってきたものじゃなく?」
「ええ、それも見てもらおうと思って用意しました」
「私、アイスコーヒーが飲みたいです。ぜひ見せてください」
カナコも椅子から降りて、シートの上に座る。
「たいしたもんじゃないですけど、外でも楽しめるということを知ってほしくて」
言いながら、大倉は次々と道具を並べていった。
小さな折りたたみテーブルの上に、コーヒー豆が入った袋、小さいコーヒーミル、ペーパーフィルター、そして透明なボトルをふたつ置く。
「それは何ですか?」
カナコは透明のボトルを指さした。
「ポータブルコーヒーメーカーです。うちの商品じゃないんですけど、便利すぎてこればっかり使ってますね」
へぇ~と感心するカナコの前で、大倉はコーヒー豆をコーヒーミルに入れ、セッとしたハンドルを回してガリガリと豆を挽き始めた。
青空の下、芝生の上でコーヒー豆を挽いているのが、なんとも不思議で新鮮で贅沢な気持ちがした。
しばらくして大倉は先ほどのボトルに手をかけ、ふたを取った。そして本体をクルクル回して、半分くらいのところからパカッと外す。外した部分を逆さまにし、ペーパーフィルターをセットする。もうひとつの透明ボトルも同じようにした。
「もしかして、上半分がドリッパーになるんですか?」
「そうなんです。しかもまだ仕掛けがありまして」
大倉はクーラーボックスから氷を出して、ボトルの下半分に入れる。大きな氷なので二、三個ですぐいっぱいになった。ちょうど真上にいる太陽の光が氷に当たって、キラリと輝いた。
大倉が挽いたコーヒーの粉をペーパーフィルターに入れる。
「あ、いい香り」
挽き立てのコーヒーの香りがカナコの鼻まで届いた。
ふたつのボトルにお湯を注いでコーヒーの粉をしばらく蒸らした後、またお湯を注いでいく。さらにコーヒーの香りが漂い始めた。
「お湯が入った水筒は大倉さんの会社の商品ですよね?」
「ええ、そうです。今日はふたり分持ってきたかったので750mlサイズにしました」
大倉は大きな水筒を手に持って掲げた。ずっしりと重さがありそうな水筒だ。
「コーヒーは熱湯を少し冷ましてから淹れるので、ある程度、温度が保たれる水筒なら問題ありませんね。こだわりがある人にはダメかもしれませんが、俺はそこまでじゃないので」
大倉はコーヒーを抽出した後のペーパーフィルターを持ち上げ、持参していた袋に捨てた。そしてボトルにもう一個ずつ、氷を入れる。
「ひとくち飲んでみてください」
「はい、いただきます」
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