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8 もっと教えて(1)
アイスコーヒーを飲み、しばらくゆっくりしたカナコと大倉は、公園を後にした。
「俺、車で来てるんで、一緒に乗って帰りませんか」
「乗せていただいて、いいんですか?」
「ここに来るときもお誘いしようか迷ったんです。でも、さすがに少し話しただけの隣に住んでいる男の車に、いきなり乗るのは怖いだろうと思って……」
クーラーボックスを持ち直しながら、大倉が言った。
「お気を使わせてすみません」
「いえ。今はもう、大丈夫ですよね?」
「ええ、大丈夫です」
心配そうに尋ねてくる大倉に、カナコは笑顔で返事をした。
広い駐車場から車を出し、首都高を走っていく。日は少し傾いてきたが、車窓から見える空はどこまでも青かった。
(助手席自体に乗るのが久しぶりで、なんか緊張しちゃうな)
カナコも元カレも免許は持っていたが、車は所持していなかった。都内は駐車場代が高く、電車やバスやタクシーが頻繁に通っているので、車を持つメリットが感じられなかったからだ。
結婚して子どもができたら車を持てばいい、などと考えたこともあるが……。
「この車、いいですね。コンパクトなのに荷物がたくさん積めて」
また元カレのことを思い出している自分に嫌気が差し、カナコは話題を振った。
「ええ、その通りで、使い勝手がいいのでキャンプに行きまくってます。と言っても、俺が買ったわけじゃないんですけどね。企業からの提供で、半年間お借りしています。気に入ったらそのまま購入してもいいと言われていますが」
「大倉さんってSNSのフォロワーがたくさんいらっしゃいますもんね」
なるほど、やはりインフルエンサーはたいしたものだ、とカナコは小さくうなずいた。
「いや、SNSは全部会社のホームページからつながっているので、俺の力じゃないんですよ。貢献できていればいいんですが……」
「大倉さんが上げている写真はとても綺麗ですし、全体的に雰囲気があって素敵でした。大倉さんのSNSが魅力的だから人が集まってくるんだと思います」
(写真に映っている大倉さんの顔も良すぎるのよね。あれでフォローしている女子も多いと思うんだけど……)
運転席の彼をチラリと見ると、予想外の表情をしている。
「そ、そうですかね、ありがとうございます。直接言われると照れますね……」
大倉は顔を赤くし、口を引き結んだ。
(そ、その顔は反則でしょう~!)
カナコはすぐに前を見て、彼にわからないように小さく深呼吸した。
年下の男性に恋愛感情を持ったことはないし、そもそも結婚相手として年下の選択肢はない。
だから彼を特別な目で見ることはないのだ。……ないのだが。
(これからもピクニックのことを教えてもらいたいって、素直に思う。それは別にやましいことじゃないわよね?)
「あの、大倉さん」
「はい」
「またご連絡してもいいでしょうか? 大倉さんのこと、ピクニックの師匠としていろいろ教えてもらえたらと……」
カナコの言葉に大倉は一瞬黙った後で、こう言った。
「ピクニックの師匠……、それ、めっちゃいいっすね」
「いいんでしょうか?」
「いいです。俺、渋谷さんの師匠になります。いやでも、師匠っておこがましいか……。たぶん俺、渋谷さんより年下っすよね?」
「えっと、そうだと思います。私は三月で三十歳になりました」
カナコは自分の年齢を堂々と口にした。
三十路だからって、気負うことなどない。
「俺は二十五歳です。今年二十六になりますが……、年下の師匠でもいいですか? ムカつく野郎だと思いません? なんか俺、嫌われません?」
「俺、車で来てるんで、一緒に乗って帰りませんか」
「乗せていただいて、いいんですか?」
「ここに来るときもお誘いしようか迷ったんです。でも、さすがに少し話しただけの隣に住んでいる男の車に、いきなり乗るのは怖いだろうと思って……」
クーラーボックスを持ち直しながら、大倉が言った。
「お気を使わせてすみません」
「いえ。今はもう、大丈夫ですよね?」
「ええ、大丈夫です」
心配そうに尋ねてくる大倉に、カナコは笑顔で返事をした。
広い駐車場から車を出し、首都高を走っていく。日は少し傾いてきたが、車窓から見える空はどこまでも青かった。
(助手席自体に乗るのが久しぶりで、なんか緊張しちゃうな)
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結婚して子どもができたら車を持てばいい、などと考えたこともあるが……。
「この車、いいですね。コンパクトなのに荷物がたくさん積めて」
また元カレのことを思い出している自分に嫌気が差し、カナコは話題を振った。
「ええ、その通りで、使い勝手がいいのでキャンプに行きまくってます。と言っても、俺が買ったわけじゃないんですけどね。企業からの提供で、半年間お借りしています。気に入ったらそのまま購入してもいいと言われていますが」
「大倉さんってSNSのフォロワーがたくさんいらっしゃいますもんね」
なるほど、やはりインフルエンサーはたいしたものだ、とカナコは小さくうなずいた。
「いや、SNSは全部会社のホームページからつながっているので、俺の力じゃないんですよ。貢献できていればいいんですが……」
「大倉さんが上げている写真はとても綺麗ですし、全体的に雰囲気があって素敵でした。大倉さんのSNSが魅力的だから人が集まってくるんだと思います」
(写真に映っている大倉さんの顔も良すぎるのよね。あれでフォローしている女子も多いと思うんだけど……)
運転席の彼をチラリと見ると、予想外の表情をしている。
「そ、そうですかね、ありがとうございます。直接言われると照れますね……」
大倉は顔を赤くし、口を引き結んだ。
(そ、その顔は反則でしょう~!)
カナコはすぐに前を見て、彼にわからないように小さく深呼吸した。
年下の男性に恋愛感情を持ったことはないし、そもそも結婚相手として年下の選択肢はない。
だから彼を特別な目で見ることはないのだ。……ないのだが。
(これからもピクニックのことを教えてもらいたいって、素直に思う。それは別にやましいことじゃないわよね?)
「あの、大倉さん」
「はい」
「またご連絡してもいいでしょうか? 大倉さんのこと、ピクニックの師匠としていろいろ教えてもらえたらと……」
カナコの言葉に大倉は一瞬黙った後で、こう言った。
「ピクニックの師匠……、それ、めっちゃいいっすね」
「いいんでしょうか?」
「いいです。俺、渋谷さんの師匠になります。いやでも、師匠っておこがましいか……。たぶん俺、渋谷さんより年下っすよね?」
「えっと、そうだと思います。私は三月で三十歳になりました」
カナコは自分の年齢を堂々と口にした。
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