アラサー☆ピクニック ~婚活とソトメシと年下男子と~

葉嶋ナノハ

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8 もっと教えて(3)

「――ねえ今度、こういうの行ってみない?」

 カナコは結婚雑誌を広げ、ブライダルフェアのページを見せた。模擬挙式や式の食事の試食などができるフェアである。

 さらにその雑誌の電子版をタブレットに表示させて並べてみる。

「……気が早いだろ」

「早いかもしれないけど、楽しそうじゃない? ほら、試食会もあるんだって」

「へぇ~……。でも俺はいいや。そのうちな」

「そのうちね? 必ずだよ?」

「んー……」

 気のない返事を聞いても、カナコは結婚雑誌やSNSを見て、ブライダルに関するチェックをやめなかった。

「結婚するよ、俺」

 急にそう言われて、カナコは満面の笑みを彼に見せる。

「嬉しい……! じゃあ、いろいろ決めなくちゃね。食事会の日取りは――」

「誰がカナコと結婚するって言ったんだよ」

「え……」

「お前より若くて可愛くて、俺が守ってあげないとダメだっていう彼女と結婚することにしたんだよ。じゃあな」

「な、なんでそんなひどいこと言うの、なんで、なんで――――」

 必死になったところで目が覚めた。

「っはぁ、はぁ……、……はぁ……ゆ、夢……?」

 動悸が激しく、息が荒くなっている。
 部屋はうっすら明るく、枕元のスマホを手に取ると、起きる時間より三十分も早かった。

 カナコは大きく深呼吸して、天井を見つめる。

「最低な夢……」

 元カレと同棲していた頃の夢だった。

「いやだな。最近はフラバもしなくなったのに、なんで……」

 現実では元カレのことを忘れられる日が増え、ピクニックを通して大倉という師匠までできた。やっと立ち上がれると確信できそうだったのに。

「ああ、憂鬱……」

 横になっていると憂鬱さが増していきそうなので、仕方なく起き上がり、早めに出社することにした。



「渋谷さん、これ調べておいてほしいんだけど、いいかな? 営業からなんだけど」

 主任が書類を見せてくる。

「いつまでですか?」

「今日中で大丈夫」

「わかりました。出来上がり次第ご連絡しますね」

「ありがとう! お願いします」

 もっと持ってこーい、という気持ちでカナコは仕事に取り組んだ。
 こういう時は何も考えずに仕事に没頭するのがいい。やることが多ければ多いほどいい。フラバなんてクソ食らえだ。

 コンビニで買ってきたおにぎりで済ませるランチを終えた時、幸江からスマホにメッセージが入った。

『今夜ご飯どう? 飲みに行かない?』

 素晴らしい提案に心が躍る。心を許せる同期にモヤモヤを話して、飲んで、食べて忘れたい。

『うん、行きたい! 私がお店探しておくよ。何が食べたい?』

 やり取りを終えて、カナコは和食のお店に決めた。
 以前から行きたいと思っていた、魚料理が美味しそうな和食の店である。


 仕事を終えたカナコと幸江は店で合流した。

「ちょっと、この鰹のわら焼き美味しすぎない!?」

「美味しすぎてお酒が止まらないよ……。さっきのアジのお刺身も最高だったし……」

 ふたりで舌鼓を打ちながら、お酒を飲み、お刺身を頬張る。料理を堪能する話から、仕事の話に移っていた。

「総務に営業事務の人が来てたけど、相当忙しそうだね」

「あっ、カナコに仕事が回ったでしょう? 営業事務の人がすごく助かったって言ってたよ。ありがとう」

「いえいえ、忙しい時はお互い様だよ。幸江も忙しいでしょ? 大丈夫?」 

「うん、絶好調! 今日も契約決めてきた」

 幸江はニヤリと笑って、親指を立てる。

「すごいね幸江。営業が天職なんじゃない?」

「まぁ、合ってることは確かだね。私はいいんだけどさ、うちの係長の話……そっちまでいってる?」

「え、何かあったの?」

「明日には社内中に回ってると思うから話すね」

 幸江は地ビールをグッと飲んでから、声を落として言った。

「社内不倫してたんだよ。それもW不倫。よくやるよね、このご時世にさぁ」

「W不倫って……、まさか相手は社内の人?」

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