アラサー☆ピクニック ~婚活とソトメシと年下男子と~

葉嶋ナノハ

文字の大きさ
46 / 74

11 師匠にお礼を(5)

「今年の盆休みはロングトレイルをするつもりです。前に話した、高校時代からの友人と一緒に。場所は……まぁまぁ涼しいところですかね」

「大倉さんのSNSを見たときにも思ったんですけど、トレイルってなんですか?」

 以前、チェックした時にわからなかった単語のひとつである。

「簡単に言うと、自然の中を歩く道、ですね。長距離をロングトレイルと言います。その道を歩いて行くことをトレイルする、とも言います」

「自然の中を歩いて行く……。登山とは違うんですか?」

「登山は頂上を目指しますが、トレイルは自然の中を歩いて行くことが目的なんです。だから道中に街があったり、神社や温泉があったり、もちろん登山道を行くこともあったりします」

「楽しそうですね。私も挑戦できるものでしょうか?」

 ゆっくり行くのなら、カナコにもできそうだ。

「もちろんできますよ。日帰りなら気軽に楽しめますし、一泊二日でも街が近ければ、疲れたら公共交通機関を使って帰れますしね」

「一泊二日程度ということは、もっと長いのも……?」

 ただ歩くだけなのに何日もかけるのだろうか?
 大倉の説明に不安がよぎり、恐る恐る聞いてみる。

「そうですね。今度俺が行くのは、四泊五日のロングトレイルです」

「よ、四泊五日って、その間ずっと歩くんですか?」

「はい。学生の頃は一週間とか十日とか行ってたんですけど、さすがに今はそこまで長い休暇が取れないので……」

「す、すごいですね」

「そこまで長いのは安易にオススメできないです。よっぽど好きじゃないと、女性には厳しいかもしれないので」

「やっぱり体力的に難しい……とか?」

「歩くのは一日15㎞~20㎞くらいの距離ですから、それは大丈夫かもしれません。ですが、俺がしているようなロングトレイルは、テント泊をしながら進むので何日も風呂に入れないですし、服も最低限しか持ち歩けないので臭います。あと、街に降りれる場所に来るまで、ろくなメシが食えないですね」

「な、なるほど……、過酷ですね……」

 さすがにこれは想像すらできず、カナコは顔を引きつらせた。そんなカナコに気づいたのか、大倉が笑顔を見せる。

「大変ですけど、最高にいい景色がたくさん見られるんですよ。達成感もすごいですしね。まぁ……途中で必ず、何やってんだ俺? って気持ちにはなりますけど」

 ハハハと苦笑した大倉はドリンクを口にしてから、カナコに質問を返した。

「渋谷さんのお盆は、どのように?」

「私は実家に二泊して、あとは滞っていた婚活もそろそろ復活してみようと思っています。と言っても、まだ本格的なものじゃなくて、オフ会あたりがいいのかなって」

 大倉に気持ちを吐き出した後、カナコはだいぶ落ち着きを取り戻せた。
 そして無理矢理前に進むのをやめて、気持ちが落ち着いた頃に復活するつもりでいたのだ。

 来月の帰省後であれば、今よりもさらにいい感じに、心は落ち着いているだろう。

「……あ、ああ、なるほど」

 一拍置いて返事をした大倉は、カナコから視線を外してドリンクを手にした。
 無言でドリンクを飲み、カナコに視線を戻さない。

(引かれたのかな? でも、婚活のためにピクニックを始めたのは、大倉さんも知ってるんだし……)

 気のせいだろうと思うことにした。
感想 0

あなたにおすすめの小説

170センチの彼女がヒールを履かない理由 ―20年前のラークと、今の密会―

まさき
恋愛
二十年前、深夜のコンビニ事務所。 俺は、オーナーの娘である「彼女」に恋をしていた。 ​身長170センチ。いつも底の平らな靴を履き、ラークを吸う一歳上の彼女。 176センチある俺は、その「6センチの差」だけを自負に、彼女の隣に立っていた。 贈ったのは、色気のない「実用品」。 防犯カメラの死角で交わした、一度きりのキス。 ​「もう会うことはない」――そう思って街を出てから二十年。 ​再会した彼女の指には、指輪があった。 かつての憧れは、二十年の時を経て、誰にも言えない「不倫」という名の毒に変わる。 ​176センチの俺が、20年かけて170センチの彼女に溺れていく、背徳の再愛物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

幼なじみは今日も私を抱きしめたまま

由香
恋愛
主人公・美月の幼なじみ、陽斗は距離が近すぎる。 家では当たり前のように後ろから抱きしめてきて、 頬をすり寄せる。 学校では肩に顎を乗せ、退屈そうにほっぺをつつく。 「このほっぺ好き」 「意味わかんないんだけど…」 幼い頃からずっと一緒だったせいで、美月はこの距離に慣れてしまっていた。 けれど文化祭の日。 「美月、他の男に触らせないで」 幼なじみの静かな独占欲が、ついに本気を見せる。 これは―― 距離ゼロの幼なじみが、恋人になるまでの甘すぎる物語。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

【完結】見えてますよ!

ユユ
恋愛
“何故” 私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。 美少女でもなければ醜くもなく。 優秀でもなければ出来損ないでもなく。 高貴でも無ければ下位貴族でもない。 富豪でなければ貧乏でもない。 中の中。 自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。 唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。 そしてあの言葉が聞こえてくる。 見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。 私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。 ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。 ★注意★ ・閑話にはR18要素を含みます。  読まなくても大丈夫です。 ・作り話です。 ・合わない方はご退出願います。 ・完結しています。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

元カノと復縁する方法

なとみ
恋愛
「別れよっか」 同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。 会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。 自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。 表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!