49 / 74
12 夏だ、山だ、波乱のバーベキューだ(1)
婚活オフ会の会場で、カナコは固まっていた。
なるべく人数が多いオフ会を探して申し込みをした通り、当日の会場は広く、五十人近くの男女で賑わっているのだが……。
(どうしよう。気持ちが全っ然、入らない……)
目の前で楽しげに話す人たちと一緒に、笑顔で相づちを打ってみたりするが、カナコは心ここにあらずの状態だ。
お盆休みに入ったカナコは、昨日まで実家に帰っていた。
そこで、同棲していた彼と別れたことを両親に話す。
同棲を知っていた両親はカナコを労りつつも、結構なショックを受けていた。
(三十路になったとたん恋人と別れたんだから、衝撃よね。私と同じように、娘の結婚を期待していたんだろうから……)
プレッシャーを感じつつも、のんびり過ごさせてもらったのはありがたく、両親の優しさが身に染みる帰省だった。
だから彼らを安心させてあげたいと、気合いを入れてオフ会に臨んだのだが……。
オフ会に集まっているのは、二十五歳から三十五歳の男女だ。
簡単な挨拶と自己紹介をしてから、フリーのドリンクや好きな食べ物を手に取り、おしゃべりが始まった。
ドリンクを取りに行った時や、席に着いた時に、何人かと会話をしたのだが……。
(大倉さん、今もロングトレイル中だって、昨日メッセージもらったけど、今日はお天気どうなんだろう? 向こうは雨じゃないといいけど……)
トレイル中の大倉から、電波が繋がった時だけ写真やメッセージが送られているのだが、彼のことが気になってオフ会に集中できない。
そしてもうひとつ、集中できない理由があった。
年齢や職業、年収など、どれも結婚相手としては魅力的な人ばかりなのだが、大倉の容姿がチラついて、彼らがどうしても……どうしても見劣りしてしまうのだった。
結婚するのに見た目は関係ないと思っていたのに、現実を前にすると、心と体が拒否をしているのがわかり、カナコは愕然としていた。
(というか、あんなイケメンと何度も会って、お出かけもして、しかも隣に住んでいるんだから、私の目が肥えていても仕方がないのよね。これは当然のことよ。だけど……)
ピンク色のアセロラドリンクをぐいっと飲み、左手で拳を握る。
「現実を見なくちゃ。そう、しっかりするのよ、カナコ」
「あの、さっき趣味の説明を聞いて、気になったんですが……よろしいですか?」
ひとりごとで気合いを入れていたカナコに、男性が話しかけてきた。
「えっ、あ、はい!」
気持ちを切り替えれば向こうから良縁がやってくる……という今朝の占いが、まさに今そうなるかもしれないと期待し、振り向いた。
「ピクニックが趣味の方ですよね?」
男性が優しそうな笑みをこちらに向けた。高そうなスーツを着た、ガタイの良い年上と思われる男性だ。
「はい。趣味で初めてから数ヶ月が経ちました」
(キタキタキター! 数ヶ月前に趣味を作ろうと決めた私、あなたの思いは間違いではなかったよおお!)
などと心の中で叫んでいる自分を抑えつつ、カナコはニッコリと笑って答える。
「やっぱりアレですか、女子会みたいな感じて、作ったごはんをみんなで持ち寄って……みたいな?」
「いえ、ひとりでやってます。ソロピクニックです」
「えっ」
「ソロキャンプのピクニック版という感じを想像していただければ、と思います」
「へ、へぇ~……そうですか……」
男性は自分のドリンクを飲み、うんうん、と何度もうなずいているので、カナコも質問してみる。
「何かアウトドアのご趣味とか、おありなんですか?」
「いえ、私は特に……」
ないんかーい、とカナコは心の中でツッコみながら、愛想笑いをした。
なるべく人数が多いオフ会を探して申し込みをした通り、当日の会場は広く、五十人近くの男女で賑わっているのだが……。
(どうしよう。気持ちが全っ然、入らない……)
目の前で楽しげに話す人たちと一緒に、笑顔で相づちを打ってみたりするが、カナコは心ここにあらずの状態だ。
お盆休みに入ったカナコは、昨日まで実家に帰っていた。
そこで、同棲していた彼と別れたことを両親に話す。
同棲を知っていた両親はカナコを労りつつも、結構なショックを受けていた。
(三十路になったとたん恋人と別れたんだから、衝撃よね。私と同じように、娘の結婚を期待していたんだろうから……)
プレッシャーを感じつつも、のんびり過ごさせてもらったのはありがたく、両親の優しさが身に染みる帰省だった。
だから彼らを安心させてあげたいと、気合いを入れてオフ会に臨んだのだが……。
オフ会に集まっているのは、二十五歳から三十五歳の男女だ。
簡単な挨拶と自己紹介をしてから、フリーのドリンクや好きな食べ物を手に取り、おしゃべりが始まった。
ドリンクを取りに行った時や、席に着いた時に、何人かと会話をしたのだが……。
(大倉さん、今もロングトレイル中だって、昨日メッセージもらったけど、今日はお天気どうなんだろう? 向こうは雨じゃないといいけど……)
トレイル中の大倉から、電波が繋がった時だけ写真やメッセージが送られているのだが、彼のことが気になってオフ会に集中できない。
そしてもうひとつ、集中できない理由があった。
年齢や職業、年収など、どれも結婚相手としては魅力的な人ばかりなのだが、大倉の容姿がチラついて、彼らがどうしても……どうしても見劣りしてしまうのだった。
結婚するのに見た目は関係ないと思っていたのに、現実を前にすると、心と体が拒否をしているのがわかり、カナコは愕然としていた。
(というか、あんなイケメンと何度も会って、お出かけもして、しかも隣に住んでいるんだから、私の目が肥えていても仕方がないのよね。これは当然のことよ。だけど……)
ピンク色のアセロラドリンクをぐいっと飲み、左手で拳を握る。
「現実を見なくちゃ。そう、しっかりするのよ、カナコ」
「あの、さっき趣味の説明を聞いて、気になったんですが……よろしいですか?」
ひとりごとで気合いを入れていたカナコに、男性が話しかけてきた。
「えっ、あ、はい!」
気持ちを切り替えれば向こうから良縁がやってくる……という今朝の占いが、まさに今そうなるかもしれないと期待し、振り向いた。
「ピクニックが趣味の方ですよね?」
男性が優しそうな笑みをこちらに向けた。高そうなスーツを着た、ガタイの良い年上と思われる男性だ。
「はい。趣味で初めてから数ヶ月が経ちました」
(キタキタキター! 数ヶ月前に趣味を作ろうと決めた私、あなたの思いは間違いではなかったよおお!)
などと心の中で叫んでいる自分を抑えつつ、カナコはニッコリと笑って答える。
「やっぱりアレですか、女子会みたいな感じて、作ったごはんをみんなで持ち寄って……みたいな?」
「いえ、ひとりでやってます。ソロピクニックです」
「えっ」
「ソロキャンプのピクニック版という感じを想像していただければ、と思います」
「へ、へぇ~……そうですか……」
男性は自分のドリンクを飲み、うんうん、と何度もうなずいているので、カナコも質問してみる。
「何かアウトドアのご趣味とか、おありなんですか?」
「いえ、私は特に……」
ないんかーい、とカナコは心の中でツッコみながら、愛想笑いをした。
あなたにおすすめの小説
170センチの彼女がヒールを履かない理由 ―20年前のラークと、今の密会―
まさき
恋愛
二十年前、深夜のコンビニ事務所。
俺は、オーナーの娘である「彼女」に恋をしていた。
身長170センチ。いつも底の平らな靴を履き、ラークを吸う一歳上の彼女。
176センチある俺は、その「6センチの差」だけを自負に、彼女の隣に立っていた。
贈ったのは、色気のない「実用品」。
防犯カメラの死角で交わした、一度きりのキス。
「もう会うことはない」――そう思って街を出てから二十年。
再会した彼女の指には、指輪があった。
かつての憧れは、二十年の時を経て、誰にも言えない「不倫」という名の毒に変わる。
176センチの俺が、20年かけて170センチの彼女に溺れていく、背徳の再愛物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
幼なじみは今日も私を抱きしめたまま
由香
恋愛
主人公・美月の幼なじみ、陽斗は距離が近すぎる。
家では当たり前のように後ろから抱きしめてきて、
頬をすり寄せる。
学校では肩に顎を乗せ、退屈そうにほっぺをつつく。
「このほっぺ好き」
「意味わかんないんだけど…」
幼い頃からずっと一緒だったせいで、美月はこの距離に慣れてしまっていた。
けれど文化祭の日。
「美月、他の男に触らせないで」
幼なじみの静かな独占欲が、ついに本気を見せる。
これは――
距離ゼロの幼なじみが、恋人になるまでの甘すぎる物語。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
秘められた薫り
La Mistral
恋愛
エブリスタにて、トレンド#恋愛で最高位
55位を獲得した作品です。
「愛しているよ」という夫の言葉が、今の美咲には虚しい空気にしか聞こえない。
欠けていたのは、理性を焼き尽くすような衝動。
クライアントの慎吾と交わす視線。ビジネスという仮面の下で共有される、剥き出しの欲望。
指先が触れる。名前を呼ばれる。ただそれだけで、美咲の積み上げてきた「良き妻」としての世界は音を立てて崩れ去る。
完璧なアリバイ、塗り固めた嘘。
夫の隣で微笑みながら、心は別の男の指先を求めている。
一度知ってしまった濃厚な「薫り」は、もう彼女を元の場所へは戻してくれない。
守るべき家庭と、抗えない本能。
二つの世界の境界線で、美咲が選ぶ「最後の一線」とは――。
欲望の熱に浮かされた女の、美しくも残酷な堕落の記録。
イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団の異色男子
ジャスティン・レスターの意外なお話
矢代木の実(23歳)
借金地獄の元カレから身をひそめるため
友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ
今はネットカフェを放浪中
「もしかして、君って、家出少女??」
ある日、ビルの駐車場をうろついてたら
金髪のイケメンの外人さんに
声をかけられました
「寝るとこないないなら、俺ん家に来る?
あ、俺は、ここの27階で働いてる
ジャスティンって言うんだ」
「………あ、でも」
「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は…
女の子には興味はないから」
君は恋人、でもまだ家族じゃない
山田森湖
恋愛
あらすじ
同棲して3年。
毎朝コーヒーを淹れて、彼の寝ぼけた声に微笑んで、
一緒に暮らす当たり前の幸せを噛みしめる——そのはずだった。
彼女は彼を愛している。
彼も自分を愛してくれていると信じている。
それでも、胸の奥には消えない不安がある。
「私たちは、このまま“恋人”で止まってしまうの?」
結婚の話になると、彼はいつも曖昧に笑ってごまかす。
最初は理由をつけていたのに、今では何も言わなくなった。
周囲の友人は次々と結婚し、家族を持ち始めている。
幸せそうな写真を見るたび、彼女の心には
“言えない言葉”だけが増えていく。
愛している。
でも、それだけでは前に進めない。
同棲という甘い日常の裏で、
少しずつ、確かにズレ始めているふたりの未来。
このまま時間に流されるだけの恋なのか、
それとも、家族へと歩き出せる恋なのか——。
彼の寝息を聞きながら、
彼女は初めて「涙が出そうな夜」を迎えていた。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」